第28話 ネタバレ
「ハメル・ブレイ・・・私が一番気になるのは『幽閉された王子と侯爵令嬢』の著者があなたなのかってこと」
「単刀直入に申し上げますと私です。あの本を書いたのも、あの本をジンジャー様が読むように仕向けたのも」
「どうして・・・?」
「その前に私についてお話いたします。本にも書きましたが私はレラジエ様のおじい様ゲシュト様の弟子でして、この世に数えるほどしかいない魔法使いです。前に馬車で近い未来をお見せしたのを覚えていらっしゃいますか?」
「も・・・もちろんです!予言だって言ってましたよね?」
「魔法使いは魔法次第で私のように未来と過去を見ることができるのです。かといって一部始終を見ることができるわけではありません。場面場面が部分的に浮かんできます」
「ひょっとして・・・レラジエの未来を見たんですか?だからあんな本を書いて私に読ませたんですね・・・私が陛下の心を先に掴めばレラジエが死ぬことはないから」
「・・・その通りですがジンジャー様を死なせようとしたわけではありません。レラジエ様の未来を見たのはゲシュト様の御葬式ででした。あれほどまで先の未来を見たのははじめてでした。
舞踏会で陛下と踊るレラジエ様それを嫉妬混じりの眼差しで見ていたジンジャー様。力に悩まされ理性を失う陛下。愛する人に殺されるレラジエ様。叶わない恋に苦しむジンジャー様まで・・・何もせずにはいられませんでした。軌道を修正しようと思ったのです。お三方が不幸になるのを防ぐために」
「う~ん・・・一人足りないじゃないですか」
「はい?」
「ハメル・ブレイ!あなたが欠けてます!小説の中でレラジエに想いを寄せてたあなたが!」
「・・・あっ自分のことを忘れてましたハハッ・・・」
(やっぱりこの人どこか抜けてる・・・)
「何はともあれ・・・ジンジャー様が予期せぬ行動をとられたため計画よりも早くジンジャー様に正体を明かすことになったのです。まさか小説を書き直してしまわれるとは・・・」
「そのことは忘れてください!どういうことかはわかりました。だけど信じられません」
(過去と未来を見ることができるなんて!)
「ではためしにジンジャー様の過去を見てみましょう」
「えっ?」
「う~ん・・・昨日のジンジャー様は真っ暗な室内・・・陛下とお二人でいらっしゃいます。それから・・・陛下の太ももに・・・」
「ちょっと!!」
「躊躇うことなく手を乗せて・・・」
「ストップ!!ストーップ!!」
「昨日・・・お二人の間に何かあったのですか?」
「変なこと言わないで!!」
(どうせならもっとまともな過去を見てよ!!)
「これで信じていただけますか?」
「はいはい信じます!」
「ジンジャー様お顔が赤いです」
「そんなこと言われなくてもわかってます!」
「他に気になることはありますか?」
「あっあります。陛下には正体を隠してるって言ってましたがどうやって陛下に心を読まれないようにしてるんですか?」
「その答えは・・・このメガネにあります。陛下の力を防ぐ魔法をかけてあるのです。」
このメガネは陛下にまったく別の心を見せてくれます。
『あぁ・・・イザナ陛下はまさにカリスマ・・・』『お仕えできて幸せだ』
一種の仮面のようなものです。
(・・・ゴマすり野郎じゃん。だからハメルを雇ったの?)
「腕輪と同じような役割をするんですね」
「はい」
「あっ大事なことを聞くのを忘れてた。今少しずつ未来を変えてはいますけどひょっとして・・・運命に逆らえず結局ハメルが見た未来のようになっちゃったりする確立は・・・ありますか?」
(そんなの絶対に嫌・・・)
「ないとは言えません。ジンジャー様のご活躍により二人の未来が少しずつ変わってきてますがたしかな未来などないのです。私が今日こうしてジンジャー様にお会いしたことでまた何か変化が起きるかもしれませんし」
(・・・ってことはまだあの二人が恋に落ちる可能性があるってことよね?)
(たしかな未来なんてない・・・たしかにハメルが見た未来も予言に過ぎないんだし何が起きるかでいくらでも変わってしまうはず。レラジエではなく私がイザナと踊ったように・・・
う~ん・・・もっと確実に未来を変える方法ってないのかな?このままじゃレラジエがイザナのことを諦めると思えない・・・)
「!!ハメル!」
「?」
「あなたの未来私が変えてみせます!」
第28話 感想
ハメルが本当に敵じゃないのか疑問ですがジンジャーがまた何か思いついたようですね。