第32話 ネタバレ
「絶対空耳だよね?」
エレニカは歌を歌って気を紛らわせることにした。
『こんにちは』
「キャアアアアッ!!」
(やっぱり空耳じゃなかった!!)怖くなったエレニカは走り出す。
『いい子だからこっちにおいで』
(赤は司祭向けで金が一般向け!お父様!ディエリゴ!マリアンヌ!テゼビアお姉ちゃん!誰でもいいから助けてぇぇ!!)
(あっ祈祷室の扉だ!ディエリゴォォ変なお化けが神聖な神殿に・・・!!)
扉を開けるが祈祷室には誰もいなかった。
「あれ・・・?何で誰もいないんだろう」
(お祈りの時間もう終わったのかな?まさか・・・こっちじゃない!?)
ハッと気が付いたエレニカ。しかし、入ってきた扉が勝手に閉まってしまった。
「へ・・・?」
『どこに行く気だ?』
(ドアが勝手に閉まった!?)
「いやまさか!」
(・・・本当に閉まってるなんでわたしがこんな目に・・・)
『可愛い顔して往生際が悪いなもっと近くに来てみなさい【許されない子】よ。最近の人間はみんな君のように怖がりなのか?うちの子はかなり生意気なんだが・・・』
「ど・・・どちら様?」
『聞きたいことがあるだけだから怖がらずにこっちに来なさい』
(頭の中に響く得体の知れない声と話してるなんて信じらんない・・・)
「お・・・お化けならさっさと—―—」
『まったく失礼な子だな。君が来ないなら私が行く素直に言うことを聞いた方が身のためだと思うが・・・』
「そんなこと言われても全然怖くない・・・です!・・・行きます。行けばいいんでしょ!?」
(お父様の香りと似た澄んだ空気・・・そうだ!ここは神殿なんだからわたしに危害を加えられるようなものは侵入できないはず
だから怖気づいちゃダメ!!)
『やっとまともに顔を見せてくれたな』
「・・・どなたか存じ上げませんがこれ・・・犯罪ですよ?同意も得ずに勝手に監禁してしかも正体も明かさないなんて卑怯だと思いませんか?」
エレニカは警戒する。
『怖がりかと思いきやそうでもないようだな。君のように身体と魂が一致しない子は初めてだ君は一体どこから来たんだ?』
(身体と魂が一致しない・・・?
それって完全にわたしのことじゃん!)
「あなたは一体何者ですか?」
『それを聞いたら君がまた怖がるかも知れないぞ?』
(わたしが怖がる・・・?まさかソルレアの亡霊たち!?)
「そ・・・ソルレアの手下が・・・よ・・・よくも神聖な神殿に・・・!」
『ソルレア?一体誰のことだ?』
「じゃなかったら呪われたゾンビ!?」
『呪われた・・・何?』
「何でもいいから今すぐ出て行け!」
『何だその口の利き方は?』
エレニカは何かに頭を叩かれ叱られた。
「痛っ!ヒドーイ!!」
(ど・・・どこかに隠れてたの!?)
『【許されない子】よ、そんなの生意気なことを言ってると後で後悔するかも知れないぞ』
(暴力に脅迫まで・・・きっと恨みを抱いた亡霊に取り憑かれたんだ!一体どこにいるんだろう?)
エレニカが祈祷室にあった狼の像の前足にギュッと抱きつきキョロキョロ見回す。
『そんなに抱きつかれるとさすがの私も恥ずかしいじゃないか』
「キャアアッ!」と叫びエレニカがオオカミ像から手を離す。その時、エレニカは足を滑らせてしまったが突然ふわんと浮き上がる。
『まったく不注意な子だ』
「あれ?」
(空中に浮かんだ・・・?)
『おっと・・・そろそろ時間だな』
「え?」
『お祈りを聞きに行かなければならないこう見えても親切で寛大だからな。じゃあ私は失礼する頑張って生き延びてみなさい』
「ちょ・・・あっ!」浮かんでいたエレニカはドサッと落ちた。
「一体何なのよ・・・お祈りを聞きに行く?神様じゃあるまいしお祈りを聞きに—―—」
(・・・・・・!)
「・・・いやまさか」
(話し方も軽々しかったし神様だなんてあり得ないでしょ?原作にも神様なんて登場しなかったし。今日は色々あり過ぎて一日が長いなぁ・・・)
「とりあえず外に出て・・・」
エレニカが扉を開けようとしたが開かなかった。
「・・・?まさか・・・おい!ドアは開けてけぇぇ!!」
******
「!」
「ひ・・・姫様?」
救出されたエレニカを見てディエリゴは驚く。
「なぜそちらから出て来られるのですか?そちらは司祭たちの祈祷室です。ラウルス様の御声を聞く場所なので神聖力の濃度が高いはずですが・・・大丈夫ですか?」
「わたしは大丈夫です。それより・・・あの祈祷室がなんて・・・?」
(誰の何を聞くところですって?)
「司祭たちの祈祷室のことですか?時々ではありますがラウルス様の御声が聞ける場所です」
「う・・・嘘じゃあさっきのは本当に・・・」
(神様だったの??ライガーを祝福した・・・ユーデタの向こうにいる神様・・・?)
「姫様?」
「そうとも知らずに・・・あんないきなり話かけられても分かるわけないじゃないですか!!」
「姫様どこに行かれるおつもりですか?」
「ディエリゴ・・・ラウルス様の御声が音声で聞こえることってよくあるんですか?」
「地上の者に直接御声を聞かせてくださるのは数年に一度あるかどうかですがなぜそれを・・・?・・・姫様何か問題でも・・・?」
(ええ!ありましたよ!!)
(この世の絶対者に助けてもらうチャンスを・・・みすみす逃してしまうなんて・・・)
「ただでさえお先真っ暗なのに・・・」
「姫様一体何があったのですか?私に詳しく話してください」
「ディエリゴ実は———あれ?」
(神殿に溢れている神聖力と似ているけど、どこか違う香り・・・)
「姫様?」
不思議そうにディエリゴが尋ねる。エレニカは腕を組んで無表情で佇むエウレディアンを見つけ泣きそうな嬉しそうな顔で呼びかけた。
「陛下!!」
第32話 感想
エレニカに話しかけていたのは神さまだったようですね。エウレディアンが帰ってきましたが、どこか影があるように感じました。気のせいかな・・・?