第46話 ネタバレ
「・・・どちら様ですか?」
「事前に伝達を送っているノイヴァンシュタイン侯爵夫人だ。伯爵様にお会いしに来たと伝えてくれ」とアルベルンが伯爵家の使用人に言う。
「・・・・・・それはできません。そこからの訪問者は全員帰らせるようにと言われております」
「それが侯爵家に対する伯爵家の態度か!?」
「僕にそんなことを言われても命じられた通りにしているだけです。勝手にお通しするわけにはいきませんので」
「アルベルンやめて」
「しかし・・・!」
「喧嘩をしに来たわけではないでしょう」とシュリーが止めた。
「そこ!何を騒いでいる!そこの新人!また何かミスでもしでかしたんじゃ」
伯爵家の使用人が2人現れた。
「!?アルベルン?」
「あらまあ、アルベルンじゃない!5年・・・いや6年ぶりかしら!?どうしたのあんたがここに来るなんて!?」
「ひ・・・久しぶりです、べス。急ぎの用があり奥様をお連れしたのですがあいかわらず中には入れてもらえなくて・・・」
「「!」」
「まあ・・・」
「アルベルンこちらの方たちは?」とシュリーが尋ねる。
「ご紹介いたします奥様。ライヒ家の騎士団長、侍女長でございます。伯爵家に長いこと仕えてきた私の昔からの知り合いです」
「・・・つまりライヒ家の中で大きな役割を任されている方たちですね。大邸宅は主1人の力では立ち行きませんから。一刻の猶予もない状況で・・・必ず伯爵様にお会いしたいのです。私の要請を伝えていただくことはできますでしょうか?」
シュリーの話を聞き2人は悩む。しかし、知り合いのアルベルンが困っていたので「分かりました我々も伯爵様であれば無情に追い返されることはないと思いますので・・・中庭で少々お待ちください」と通してくれた。
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騎士団長と侍女長を伯爵は窓から見ていた。
「伯爵様」と声をかける執事に
「・・・私は・・・もうこのようないざこざは終わりにしたいと思っているんだ。母上には内緒にすればいいさ」とこたえ部屋を出て行く。
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シュリー「冬なのに庭園が整然としているわね。春や夏はさぞかし美しいことでしょうね」
「はじめからこのように美しかったわけではありませんよ。伯爵様が当主になられてから本格的に管理に力を入れられて今のような姿になったのです・・・季節が変わればきっと奥様も・・・」
「ノイヴァンシュタイン侯爵夫人でいらっしゃいますね・・・?・・・寒いところでお待たせしてしまい申し訳ございません。無礼を働いた使用人についてもどうかお許しを・・・」
ヘルマン・フォン・ライヒ(ジェレミーの母方の伯父)が来てくれた。
(!?)
(エ・・・エリアス・・・!?まさか・・・!似ているようで違うようなこの妙な感じは何!?)
(この姿はまるで・・・!エリアスの中年予想図・・・!!)
(ただ年を取るだけではこの感じは出せないわ!落ち着きと弱々しさが足されたエリアス・・・)
「落ち着いてお話しできる場所へご案内いたします。こちらへどうぞ」
「はい」
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シュリー「園芸に興味をお持ちでいらっしゃるのですね」
ヘルマン「!!ど・・・どうしてご存知で・・・!?」
(恥ずかしがってる)
「皇室の行事に使われる花のほとんどが伯爵様のものであると聞きまして」
「ええ・・・その通りです。サファヴィーやチュートン皇室にも納品しています。これが・・・私の唯一の誇りといいますでしょうか。
ご存知の通りライヒ家は代々前途有望な軍人を輩出してきており、家門の騎士団も非常に高水準なのですが私は武器の扱いにはまったく才能がなかった上に花などの世話にばかりかまけていたので・・・
周囲から向けられる視線はそれは冷たいものでした。妹であるアリーチェさえも馬に乗って戦場を駆け回っていましたからね。そのように自らを家門の汚点だと考え塞ぎこんでいた時ヨハネスだけが私を支持してくれたのです」
(あ・・・薄紫の薔薇?)
「控えめでありながらも目立つでしょう?」
「ええ、思わず目が引き寄せられてしまいました。花はたくさん見てきたと思っていたのですがこのような色の花は初めてですわ」
「そうでしょう。10年ほど前この品種は発見されてすぐに皇室で独占された花なのです。担当栽培師である私だけがこの場所で育てることができたのですがある日突然全て廃棄するようにと通告を受けました。
でも・・・このまま誰にも知られずに忘れられていくのはあまりにも惜しいと思って・・・このように隅の方に隠したまま育てているのです。いつか自由を取り戻すことを願いながら」
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「ティールームでなく申し訳ありませんが・・・」
「いいえお気になさらず」
(邸宅の本館と離れている温室。使用人を呼ばずに全てを伯爵自ら行う点マダムー・ライヒが現れることを心配している。ルクレツィアの言葉通り当主であるにも関わらず彼の立場は非常に不安定に見える)
(それでも私を迎え入れてくれたということは肯定的なサインだわ)
「ライヒ伯爵この手紙を確認していただけますか?」
「これは・・・ヨハネスの筆跡ですね。そういえば夫人と結婚してすぐの頃・・・心配になって手紙を書いたことがありました。返事が来なかったためきっと忙しいのだろうと思っていたのですが・・・」
【手紙の内容】
親愛なるヘルマン。私そしてシュリーという少女に関することで失墜したライヒ家の名誉とマダムが負われた心の傷はどのような言葉でも謝罪できるものではないと深く痛感しております。
しかし世間で囁かれる汚らわしい艶聞と醜聞、猥褻な疑惑は全て事実ではなくむしろ夫婦間で行うべき義務の数々の前でも私と彼女にはただ一つの恥ずべき点もないことを君に明かします。
世界中の誰もが私を非難したとしても本当の友である君ならば私の平穏を祈ってくれるであろうことを信じています。
「・・・・・・この内容は・・・」
「ジェレミーが起こした騒ぎのことはご存知でしょう。裁判の日子供がいないという私の状況と共にこの手紙を提起してヨハンとの婚姻を無効化させようと思っています」
「・・・!しかしそうなれば」
「そのため、手紙が涅造されたものでなく真実性を持つものだという点と受取人が誇り高きライヒ家の主であることを証明していただく」
「伯爵様の証言が必要なのです」
第46話 感想
やっとヘルマンに会えたわけですが証明してもらえるのかな・・・?