第42話 ネタバレ
【司祭side】
「主に主は切に求める祈りに答え道を示してくださり、その教えが私をより強くした。救うことも悟りを得ることもできずにいる。
この地のさ迷える全ての者に主の全能をあがめたまえ」
枢機卿が1人で唱えていると
ドンドンとドアを叩かれ司祭のウォルフに呼ばれた。
「枢機卿様!!あっ、聖誕祭も中断となったのに構うこともなく『苦行の部屋』へ・・・」
「用件は?」
「! あっ・・・そうだ申し訳ございません!」
「ジェレミー・フォン・ノイヴァンシュタインの処罰に対する皇命が下されました・・・!」
「しかし・・・どういったわけか陛下は相変わらず引き下がったままで・・・激怒された皇妃陛下が全権を握られて
皇太子殿下に害を加えた罪人の右手を切り落としてしまうように命じられました!
貴族側はあまりにも重すぎる仕打ちであると主張しており、我々 教会側も裁判前に論議すべきことが山積みであちこちで枢機卿様を探しています」
「・・・すぐ行く」
枢機卿は苦行の部屋へ戻りシュリーの言葉を思い出す。
『——どのような制圧も受けません』
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【ノイヴァンシュタインside】
「方法がないですって!?そのような答えを聞くために帝国一の法曹人である皆様をお呼びしたのではありません!
この騒ぎをなかったことにしたいだなんて無理は言いません。裁判で今の『処罰』以外に、他の結果を出させることはできないのかと言っているんです!」
とシュリーは言う。
「・・・・・・家門の脈を守るため『名誉の決闘を申請することもできたかと思いますが・・・令息は・・・」
「・・・当主ではない・・・ですね?全ての手段を動員してください」
「ジェレミーに当主権を渡します」
「あの子の手が切り落とされることを食い止められるのであれば!」
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双子はシュリーたちのいる部屋を盗み聞きしていた。
「レイチェル様?レオン様・・・?」
「グウェン・・・」
「奥様は今お忙しいため遊んでいただくことはできませんよ。私と一緒に他のお部屋でお人形ごっこでもなさいますか?」
「・・・・・・僕たちだって分かってる・・・」
「兄様、牢屋に連れていかれちゃったんでしょう・・・?
・・・手が切り落とされてしまうかもしれないって・・・」
グウェンは双子たちを抱きしめて言う。
「・・・奥様が何とかしてくださるはずですわ。私たちは静かに祈りながら待っていましょう」
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(困ったわ・・・方法が見つからない)
【シュリーの回想】
「当主権の譲歩は皇室の承認が必要ですが・・・」
「今すぐに要請をしてもこの状況で聞き入れてもらうことは絶望的でしょう」
「・・・それであれば婚姻無効はいかがですか?」と法曹人が尋ねた。
「無効ということは・・・すなわち離婚ですね。教理で禁じられているのでは?」とシュリーが言う。
「左様でございます。しかしそれを守るのは主に市民層であり、貴族の結婚とは互いの利益を目的とする一種の取引です。
婚約の結果が期待通りのものでなかった場合、相互間の『私的な過失』さえ証明できれば複雑な手続きなしにその結婚を無効にする便法が黙認されています。」
「『私的な過失』と仰いますと?」
「『家庭を成すための努力を行わなかった』というような・・・」
「オッホン!」
「どちらにせよ!夫人が利用できる手段ではありません!」
「女の身で裁判台に立ち私生活を隅から隅まで暴露しなければならない上に!何よりも!
ヨハネス前侯爵が生き返らない限りは不可能なことなのです!」
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コンコン
「——・・・」
「・・・ニュルンベル公爵様」
シュリーが悩んでいるとニュルンベル公爵が訪ねてきた。
「皇后陛下が全ての謁見を拒否されて容赦をお願いすることも叶いません」とシュリーが言う。
公爵は「・・・私も皇后陛下に会っていただけるようにとお願いし続けています。ひとまず議会では反対声明を出すことになりました。
処罰の内容を決定されたのは皇后陛下ですので裁判の雰囲気と多数決によって結果が変わる可能性はあり得ます。あまりご心配なさらぬように」と気遣う。
「・・・だからこそ問題なのです。誰もが認める優れた剣士であり正当な後継者であるジェレミーが女性当主を守るためにその光を失うなんて」
「この騒ぎが他人にとってはどれだけ面白い醜聞なのでしょうか」
「姉上のことですので何か他の意図があるのかもしれません。まだ時間はありますから使える手は全て利用しましょう」
「——ありがとうございます。公爵様、身勝手なお願いですがどうかお力をお貸しください」
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【シュリーside】
シュリーは屋敷の外にいた。
(葉を揺らす風の音さえもう諦めてしまえと囁いているよう。何もかもが辛くて泣き明かした夜にむしろすべてを捨てて逃げてしまっていたら)と考える。
(あなたをこんな目に遭わせることもなかったのだろうか)
(私のものではないこの富も地位も名誉も私は全て捨ててしまう準備ができているのに。それだけが分からない。)
「!」
「ノラ・・・?」
「あれ?久しぶりですね。こちらにいらっしゃるとは知らず玄関に向かっていました。元気だったかと聞くような・・・状況ではないですよね」
「どうしてここに?公爵様と一緒に来たのだったら応接室を用意させたのに・・・」
「父ですか?まあ話せば一緒に馬車に乗せてくださったでしょうが、そうしたくはなかったんです。きっと俺がここにいることも知らないはずです。俺の話よりも」
「!」
「大丈夫ですか?心配になって来たんです」
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「——それで・・・今は特にこれといった方法がない状況なの」
「うーん何も知らない俺が聞いても頭が痛い状況ですね。でもやっぱり裏がある事件だとしか思えません。シュリーさんも疑わしいと思っているんでしょう?」
「ええ・・・でも異議を提起する時間も証拠もない。どうにかしてジェレミーを守ることだけで精一杯・・・」
「・・・・・・心配しないでください。方法は見つかるはずです」
「シュリーさんは逃げないから。俺とは違う。俺はいつも諦めてしまうんです。今日もそうでした」
「でもシュリーさんは堂々と勝ち抜くじゃないですか。逃げ出してしまいたいような時でも」
(どうして何も言葉が出てこないんだろう)
(こんなことになってから多くの人から寄せられた慰めの言葉の中で本当の気持ちを伝えたのはただ——)
「!!!」
シュリーはヨハンの手紙を思い出した。
「ノラ!少しだけついて来てくれる?手伝いが必要なの!」
いきなりシュリーに手を握られ驚くノラ。
「——!?その手首・・・怪我をしたんですか!?」
シュリーの手首に巻き付いた包帯を見て尋ねる。
「思いついたことがあるの!ジェレミーを助けられるかもしれないわ!」
第42話 感想
ジェレミーは大丈夫なのかな?皇后様や皇太子、司祭たちが何か企てているのかな?でも、シュリーが対策を見つけた様子でした。