第20話 ネタバレ
【ユリアside】
(わぁ・・・まるで絵画のよう・・・確かにイケメンかも・・・)と馬の世話をするユーストを覗き見る。
その時、小説の内容が頭に浮かぶ。
幼いユーストが初めてユリアに忠誠を誓った時、彼女はちゃんとした剣の代わりに身につけていた短剣を渡した。実践では使えなかったけど彼はお守り代わりに常に持ち歩いていた。
(なんだろう・・・急に小説の内容が頭に浮かんで・・・)
ユリアはユーストの腰にかけられた短剣を目にする。
(・・・・・・あ・・・ユーストはユリアのことが好きだったっけ。)
皇帝の近衛兵隊長ユースト・マルカス公爵はユリアのためならなんでもやる人物だった。
壊れた皇帝が自ら築いた帝国に汚名を着せられる姿を見て苦しみながらも反逆を決心できなかったのは長い間心の底に抱いていた想いが大きかったからだ。
(・・・・・・だけど彼が想いを寄せているユリアはもういないわ。なんだか嬉しいような嬉しくないような不思議な気持ち・・・この感情をなんて言うべきかしら。)
ユリアになった時からユーストは色々と気になる人物だった。1ヶ月間一緒に過ごしたら恋愛感情はさておき仲良くなった気がする。
自分はそう思っていたけど相手はそうじゃないとわかった時の寂しい感情に似ているような・・・
(私はユリアになったことをある程度受け入れたしうまくやるつもりよ。だけどいくらユーストのせいじゃないとしてもユーストは今もユリアのことを想ってるわ。)
(・・・・・・もう行こう)
隠れていたユリアが顔を出すとユーストは気づき目が合う。
(落ち着くのよ。悪いことをしたわけじゃないんだから!)
「帝国の主皇帝陛下にご挨拶申し上げます」
(ユリアだけに見せるあの優しい笑顔!ああ・・・なんだか心が痛い・・・)
「休日なのに何をしていたんだ?」
「最近こいつを世話できてない気がして・・・」
話しているとユーストが短剣を腰から落としてしまい拾っていた。
(あ・・・やっぱりね・・・あの短剣だわ)
「こういうのは普通見習い騎士がすることではないのか?」
「ですが休みの日でもこいつを世話したほうがより私に懐くでしょう」
「それもそうだな」
「陛下もよくされていたではありませんか」
「・・・・・・」
(本来の彼女ならね・・・)
「それにしてもどうされましたか?なぜそのような格好で・・・」
「せっかくの休みだからね城の外を見回ろうと思って」
「イースターの祭りをご覧になるのですか?」
「ああ、戦争が終わって初めて迎えるイースターだからな。自分の目で見てみたいんだ」
「では私が付き添いましょう」
「・・・ん?その必要はない。私と一緒にいると疲れるだけだろう」
「いいえ、ぜひお供させてください」
「本当に大丈夫だ。部下の休みを奪う皇帝にはなりたくない。それに私に危害を加える者はいないだろう」
「陛下の強さは重々承知しております。ですが心配です。本当のことを申し上げると今後は護衛をつけていただきたいのです」
「ユースト・・・」
「そもそも2年前のことも・・・私が無理を言ってついて行っていたら・・・いいえ・・・せめて他の者を行かせていれば・・・」
(2年前?ユーストがこんな後悔するようなことが2年前にあったかしら・・・)
(そういえば薬を盛られたと知ってから過保護になった感じだったよね。フェリックスにも何かあれば自分を呼ぶように何度も念を押されたし。いったいなぜ?
(2年前・・・何も心当たりがないわ・・・前世ではこの小説は3回も読み返した。それに好きなページは何度も読み返していたし・・・なのにかすかにも思い出せないなんて・・・何かおかしい・・・)
『眠りなさい・・・あなたの・・・記憶・・・』
思い出そうとした。しかし、ズキッと頭が痛みユリアは立ち眩みがする。
「陛下!!」
第20話 感想
2年前に何かあったようですね。ユーストたちは何か知っているのかな?