第36話 ネタバレ
「姫?」
「こんなのあり得ない・・・」
「どうした?一体何があり得ないと言うのだ?」
「全部です!」
(わたしがベルゴットに来て一カ月半・・・出産予定日はまだ先のはずなのにブリズニーがもう生まれた!?しかも原作通り予定日より何週間も早く!?お姉ちゃんの健康状態も悪くなかったはずなのに)
「一体どうして?」
(まさかわたしが拉致されたショックで・・・?)
「姫」
(それだけじゃない)
「フェルナンデス・・・」とぼそっとエレニカは声に出した。
(あの役立たずが・・・来月結婚するですって!?しかも婚約者はすでに3ヵ月!?・・・確かに!原作通りブリズニーとアレクシオスが同い年になるためにはこのタイミングで合ってる。でも・・・少なくとも2ヵ月以内には解決できると思っていたグルカマン協定も原作みたいに全然結論が出ないし・・・)
(わたしが代わりに拉致されたことで原作の流れが変わったと思っていたけど主人公たちの誕生・・・つまり基本的な原作の流れは変わらないってこと!?だとしたら3番目の主人公・・・)
「デカルブも・・・」
「デカルブ?誰のことだ?」
(お父様の未来の息子です)
「やはり身体の調子が悪いようだな」
「いやっそんなの全然重要じゃ——」
「重要だ。姫、今姫がどんな表情をしているか分かっているか?」
心配したエウレディアンがエレニカのおでこに手を当てる。
「・・・ちょっと驚いただけです」
「なぜだ?手紙に何と書いてある?」
「・・・姪が生まれたそうです」
「それは喜ばしい知らせではないか」
「確かにそうですが・・・予定日より何週間も早く生まれたので心配で・・・」
(ブリズニー・・・一体どうしてこんなに早く生まれちゃったの?でも幸いお姉ちゃんの健康状態は悪くないみたいだし少なくとも原作みたいに早死にすることはないはず・・・
・・・わたしの判断ミスだった)
「モタモタしてる時間なんてないのにあまりにも遠回りしてしまった・・・」
「?」
「お父様」
「またお父———」
エウレディアンが口出ししようとするが、エレニカの手が口を押さえて遮る。
「わたしと結婚してくださいっ!」
(今すぐ!大至急で!!このままじゃ原作通りソルレアがお父様と結婚してデカルブを産んでしまうかも!!)
エウレディアンは自分の口を押さえていたエレニカの手をはずし「姫、本当に具合が悪いのか?どうやらベルック宮殿をもう一度点検した方が良さそうだな」と話す。
「いや具合が悪いんじゃなくて——」
「宮殿の前まで送ってあげるから戻ってゆっくり休みなさい」
(へ・・・?)
「お父様?」
(まさか具合が悪くて頭がおかしくなったとでも!?)
「皇室の主治医を送るから診てもらいなさい」
「あっ!」
宮殿の前までエスコートしてくれたエウレディアンは足早に去ってしまう。
(行かないでお父様ぁぁ!!)
『思ったより大胆だな』とラウルスが声をかける。
「ちょっと!本気で腹立つから黙っててもらえます!?」
『いや~君があまりにも真剣だからプロポーズのトレンドが変わったのかと思ったよ』
(ちょっとストレート過ぎたかな?いや男は単純だからこっちの方が成功率高いはず!それにちょっとくらい振られたっていいじゃん!原作通りの展開ならソルレアがデカルブを妊娠するまで1年を切ってる)
『許されない子よ、運命を変えたいのかい?』
(運命が原作を意味するなら当然!でも、なんとか頑張れば少しくらいは変えられるかも知れないけど肝心の基本的な流れまで変えられるだろうか?原作と同じ時期にブリズニーとアレクシオスが生まれたようにデカルブが生まれてソルレアから暗黒の魔法を学び・・・ブリズニーに出会わないとしても父であるエウレディアンを結局殺害してしまうんじゃ・・・?)
『残念ながらそれは私にすら変えられない。多くの者の『縁』が作り出す運命だ』
「・・・どんな悲劇が起きても運命だから受け入れろ?あなたそれでも平和と繁栄の神様ですか!?」
『受け入れなかったらどうするつもりだ?神にすら不可能なことを君が変えてみせるとでも?この地に許されていない君が?』
(・・・つまり脇役が原作を変えるなんて無理だから黙って見てろってこと?でもそれはわたしがエレニカじゃなかった時の話じゃない!)
「わたしこう見えても結構色々知ってるので・・・」
『今度はまた何をするつもりだ?』
「あなたの遠い後継者を必ず落としてみせます。協力する気がないなら話しかけないでください!」
(わたしはこの世界がどう流れていくかすべて知っている唯一の人間で・・・ひょっとするとユーデタの神々よりもこの世界の『運命』と『縁』をよく理解しているかも知れない!)
『・・・ちょっと待ちなさい。私は地上の出来事に直接介入してはいけないことになっているユーデタとレモルディでタブー視されていることだからな。ただ・・・どうせ君はこの地上の人間ではないから少しくらいは手伝ってあげても問題ないだろう』
「本当ですか!?でも急にどうして?」
『さっき君が協力する気がないなら話しかけるなと言ったではないか』
「え・・・?そんな理由で?」
『・・・君を観察するのが私の楽しみだからな。さっきエウレディアンを落とすと言っていたが地上の摂理に介入しない程度であの子がどこで何をしているかくらいなら教えてやろう。地上で私と最も似ている子だから・・・』
「ラウルス様尊敬してます!今までのご無礼をお許しください!!」
『心にもないことを』
「ほ・・・本当ですってば!」
『・・・・・・では頑張って落としてみなさい。地上で最も強力な神聖力を・・・!』
第36話 感想
どうやら原作を少しずつ変えたつもりでも変えられない未来もあるようですね。しかし、神様も味方につけることができた?ようなのでエレニカが次は何をするつもりなのか気になるところです。