第55話 ネタバレ
【ジンジャーside】
イザナと塔の最上階を調べに行った。
「何も・・・ありませんね」
「俺が塔に閉じ込められる前にここにあったものをすべて処分したと聞いた。でもアトランタ家の隠し金庫のようなものがあるかもしれない」
「どうせなら呪いについても書いてくれればよかったのに。肝心なことを抜かしてどうすんのよ」
「なんだかゲシュトも性格が歪んでそうじゃないですか?さすがレラジエのおじいさんって感じ・・・」
ジンジャーがコソコソとイザナに言う。
『性格が歪んでいて悪かったな』
「キャァァッ!!」
「あなたは・・・!」
『陛下お久しぶりでございます。ゲシュト・アトランタでございます』
あれがゲシュト?
死んだんじゃなかったの・・・!?
『最後にお会いしたのは陛下がまだ五歳の頃でした。ご立派になられましたね』
「よくもそんな呑気なあいさつができるわね!」
「生姜令嬢・・・」
「あなたが呪いなんかかけたせいで陛下は十五年という長い歳月を理由も知らないままここで過ごすことになったのよ!」
『・・・・・・私の命は七年前に尽きました。死ぬ直前に赤いネックレスに私の魂の欠片を埋め込んでおいたのです。
陛下があのネックレスを着用されたとき私はやっと目覚めることができました』
待ってそれじゃ今私が見てるのって・・・まさか・・・ゆ・・・幽霊・・・!?
ジンジャーが素早くイザナの後ろに隠れた。
『遅くなり申し訳ございませんでした』
ダンッ ダンッ
扉の外から足音が聞こえ息を切らせたハメルが入ってきた。
「師匠!」
『ハメル・・・久しぶりだね』
「やっぱり・・・師匠でしたか」
『おまえが【賢者の目】を覚醒させるとは思わなかった。最悪の結末を阻止してくれたのか。よくやった・・・』
「・・・恨みを晴らすため呪いをおかけになったことは知っています。
どうして私に何も言わずにレラジエ様にあのネックレスをお遺しになったのですか?」
『実は私は死が近づくまで呪いをかけたことを悔やんでいなかった。寿命を引換えに決断したことだったからね』
【ゲシュトside】
私は賢者の目を使いアストル王がヘンドリック様を暗殺したと確信した。
あの方は幼い頃から魔法の力を持つ弟と比べられながら育ってきたのだ。
ヘンドリック様は王位継承に一切興味をお持ちではなかったがアストル王は優秀な弟に王位を奪われるのではと常に怯えていた。
そんな感情は徐々にあのお方を侵食し
ついには・・・!
『哀れなお方ではあったが・・・当時の私は到底許すことができなかったのです。そのためアストル王とイザナ様お二人に呪いをかけました』
先代の陛下にも呪いを・・・!?
ジンジャー(でも・・・先代の陛下が呪いに苦しんでいたなんて聞いたことがない)
イザナ「どういうことか詳しく説明してくれ」
『イザナ様はこの王室唯一の後継者でいらっしゃいます。
兄弟もいらっしゃいませんしお父様の弟であるヘンドリック様もご結婚前にお亡くなりになりましたのでご親戚もいらっしゃいません』
「まさか・・・父が後継ぎを残せないようにしようとしたのか・・・?」
『はい・・・それが私の復讐でした』
誰のことも信用できない渇いた心で
唯一の息子すらも遠ざけるしかできない孤独な人生を送らせようとしたのです。
『ところが私が宮殿を離れてから予想外のできごとが二つ起きました』
イザナ(!?)
一つはアストル王があまりにも早い段階で陛下を塔に閉じ込めてしまったこと。
もう一つはイザナ様にかけた呪いが何倍も強くなってしまったこと・・・
死期が近づくにつれ・・・
夢にヘンドリック様が出てくるようになりました。
何も言わず悲しげな顔で私をご覧になっていたのです。
『あれは・・・私の罪悪感の現れだったのかもしれません。
そこで死ぬ前にイザナ様の呪いを解除しようとしましたが・・・』
私がかけた呪いは強いものではなかったというのに
どういうわけか・・・
呪いが強くなり呪術では解除ができなくなってしまっていたのです。
『悩んだ末・・・陛下がいつか呪いについてお調べになる日に備え私の魂の一部をネックレスに植え付けておいたのです』
「それじゃ・・・どうやって呪いを解けばいいんだ?」
『呪いを解くためには・・・心から信じられる人をお探しください』
心から信じられる人・・・?
『陛下はこれまで相手の心を読むことで人を判断されてきました。その習慣を取り払う第一歩となるかもしれませんね。
イザナ様はアストル王よりもずっと強いお方です。信頼できる人たちと共に呪いを解かれてください。ではまたお会いできる日まで・・・』
話終わるとゲシュトはそのまま消えた。
(き・・・消えた・・・俺は今夢をみているのか・・・?)
第55話 感想
ゲシュトの亡霊と話ができましたが、まだまだ呪いを解くには時間がかかりそうですね。