第20話 ネタバレ
SA社午後11時33分
ゲーム『サティスファイ』ではユーザーの行動が世界を変化させる巨大システム。20億人のユーザーによって多くの変数が生み出されている故に世界の維持のためにシステムエラーは許されない。
『クエスト『B408』が発動しました。緊急役員会議の招集許可をお願いします』
「許可する私もすぐに向かう」サティスファイ開発者の栄枝哲大は言う。
(『B408』!?特別な条件下でのみ発動されるS級隠しクエストじゃないか!成功報酬はセカンド職業・・・
成功すればサティスファイ史上初となる2つの職業を持つユーザーが誕生する!しかしゲーム時間で200時間を耐え抜く必要がある一歩間違えればユーザーの身に危険が及ぶクエストだ)
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『IDフロイ 本名はダンバ・アルンバタール 24歳です。『B408』を発動させたモンゴル人ユーザーです』
「モンゴル人のユーザーは全体の3%しかいないのにすごい確率だな」と栄枝が話す。
「それに戦闘に弱い職業である雄弁家にも関わらず職業特性を生かし主にクエストのみでレベルを127まで上げたことも驚異的です」と鳳比奈子が言う。
「双葉理事モンゴル支部長は?」栄枝が尋ねると「今繋がりました」と眠そうな様子で双葉理事がこたえた。
『モンゴル支部長久賀です。こちらの役員も全員揃っています』
「『B408』クエストの件で集まってもらった。ユーザーの安全確保は済んでいるな?」と栄枝が言う。
『現在リアルタイムで観察を行っており医療班も待機させています。モンゴル政府にも協力を要請しました。それと・・・1つ提案があるのですが』
「・・・・・・?」
『ゲーム史上初となる複数職業を持つユーザーが誕生する可能性についてマスコミに発表しようと思っています。そのユーザーがモンゴル人であるとなればモンゴル市場の活性化にも繋がるでしょう』
「モンゴル市場の活性化・・・良いチャンスが巡ってきましたね」
「ええ遊牧民気質のせいかゲームカプセルに険悪感を持たれていましたからね」
「あまりにも楽観視しすぎなのでは?注目を集めておいてクエストが失敗したら笑いものになるだけじゃないですか」
「その点は心配ないと思いますよ」双葉理事は言う。
「・・・・・・?」
「設計上では簡単にクエストが成功するようになっていますから。身体的な問題でログアウトになることさえなければまず問題ないでしょう。クエスト成功確率は分析してもらえましたか?」
「そ・・・それが・・・資料をアップロードしましたのでご覧ください。ただ・・・」
「・・・ただ?・・・・・・!!成功確率がたったの9%・・・?ちょっと待ってくれ!『B408』はクエスト進行者が隠しNPCに救出される内容だろう!」
ユーザーは地下監獄で『謎の騎士』と出会い〈ウィストーン村〉の事情を聞いた正義の剣士がユーザーを救出する
「その後ユーザーは剣士を手助けする連携クエストを行って報酬を受け取る・・・ユーザーの安全さえ確保されていればほとんど失敗する可能性がないはずじゃ・・・」
「あっはっはっは!!」
「会長何か・・・?」
「はははもう一度資料を見てみろ。変数があったんだよ『クエスト共有』」
「資料って・・・」
「もともと〈ウィストーン〉の事情はフロイが正義の剣士にのみ伝えなければならない。しかし途中でクエストの情報が共有され・・・正義の剣士が用なしとなってしまうアクシデントが発生したんだ」
「くっ・・・そしてその情報を共有されたユーザーが・・・グリード 長嶺巧・・・」
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「うわああ!!俺はたかだか報酬600ゴールドのクエストしかくれないくせに!カンのクソジジイ!!あんなに親切にしてやったのに!おかしいだろ!?
あんなぽっと出の野郎に・・・俺は治療費まで出してやったってのに・・・おばちゃんラーメンおかわりサービスでチャーシューも」
巧は露店でやけ酒を飲みながら独り愚痴をこぼしていた。
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家に帰った巧は「もう1時か・・・バレないように静かにしなきゃな」と言い靴を脱いでいたが、「ちょっと!今何時だと思ってるの!?遅くなるなら連絡くらいしてよね!」と妹が起こる。
「げっ・・・まだ寝てなかったのかよ学生のくせにこんな時間まで起きてんじゃねーぞ」
「カプセルの中にいなかったから心配して・・・ってお兄ちゃんお酒飲んだの?」
「おお~お兄ちゃんを心配して待ってくれたのか?優しい妹だなぁ」
「別に待ってなんかないしテレビ見てて遅くなっちゃっただけだし!」
「おいおい思春期か?うへへへ~」
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SA社会議
「0%じゃないのか?」
「え・・・?」
「このユーザーがクエストを成功する可能性だよ・・・9%じゃなくて0%の間違いじゃないかってスーパーコンピューターモルフェウスがエラーを出したんじゃないか?」
「いえ・・・そのような報告はありませんでしたが」鳳は言う
「はぁ・・・分かってるよ八つ当たりだ」
「クエスト共有でシナリオがねじまげられたせいで正確な成功率を出せないんだろう」
「え?」
「こうなった以上フロイの監禁の知らせを伝え聞くのは謎の剣士ではなく『グリード』になるからな」
(クソ・・・この長嶺巧とかいう奴最悪だな・・・レジェンダリー職業を持っているのにレベルがたったの21?今まで一体何をしていたんだ!?宣伝価値もないくせにレジェンダリー職業を手に入れた上に・・・また別の隠しコンテツを無駄にするなんて!こいつは・・・毒だ!
サティスファイにとってあまりにも致命的な毒!!)
第20話 感想
ゲームの運営側に目を付けられたら最悪な結果になりそうですね。
また、巧が素直にフロイを助けに行くのか疑問です。お金のためならどこにでも行きそうですがwww