第5話 ネタバレ
「ノイヴァンシュタイン家とは!侯爵領の土地傘下の金鉱など!その収入だけでも天文学的な単位を超える大貴族です!その上侯爵家は皇室との親密な関係を維持している立場!その全てをあの——
あのように年若い女性にどうして一任することができましょうか!早急に正当性があり現実的な能力を備えた適任者を見つけ我が高貴なる帝国カイザーライヒ皇室を忠実に庇護することのできる——」
男の言葉に「この議題は皇室とは無関係だ論点をずらすな」と帝国皇帝 マクシミリアン・フォン・バーデン・ヴィスマルクは話す。
「陛下の仰る通りです。故人となった前当主ヨハネス・フォン・ノイヴァンシュタイン侯爵が彼の夫人にすべての権限を渡すことを遺言で明らかにしているにも関わらず適任者とは・・・私はこの聴聞会の正当性自体に疑問を呈します 何のための争いなのか本当の目的を明らかにしていただきたい!」とニュルンベル公爵は言う。
聴聞会が無事に終わりうつむくシュリーに「大丈夫ですか侯爵夫人」とニュルンベル公爵が尋ねるとシュリーは「なぜ私を助けてくださったのですか?」と聞く。アルブレヒト・フォン・ニュルンベルは
「・・・夫人が受けておられる不当な処遇を考えれば当然のことをしたまでです 私の長年の親友ヨハネスの遺志を守るためでもありますし
・・・この会議場は冷え込みます侯爵邸へお帰りください」
ニュルンベル公爵に見送られ馬車に乗るシュリー。
(皇帝陛下とニュルンベル公爵が助け船を出してくれなかったら私は今頃・・・
これからもこんな風に誰かの善意に頼るしかないのだろうか?ただ黙ってその座に座り続けるだけで——)
何もできない自分自身が何よりも腹立たしいと感じるシュリー。
屋敷でノイヴァンシュタイン家の血族が集まった。
「全員がこのように一堂に会するのは久しぶりですねヨハンもこの場にいればきっととても喜んだことでしょう」
シュリーが話しているとミュラーが遮り「いやぁ全くこんな風に集まると子供の頃のことを思い出すなぁ!!」と話しペラペラと一人で語っていた。ヴァレンティノ卿は「ミュラー兄貴とヨハン兄貴はいつだって問題ばかり起していたじゃないか」と話す。
シュリーは昔のことを語り出す血族たちに「思い出話はそのくらいにしていただけますか?残っている葬儀手続きがいくつかあります つまり私にはまだまだやることが山積みであるということです」と言った。
(どういうことだ?前に会った時はまるで子ウサギのようにブルブル震えているだけだったのに!今は怯えるどころか・・・!!)
「いいでしょう・・・単刀直入に申し上げます我々が今日この場に集まったのは我が家門の未来を心配してのことなのです」
「心配とは?」とシュリーが尋ねると
「夫人もご存知の通りノイヴァンシュタインは帝国でも屈指の大貴族 夫人はまだ気の毒なほど若く子供たちも幼い 傍系の者たちとの信頼関係がなければ社交界と議会は絶対に夫人のことを認めないでしょう」とミュラーは言う。
(ミュラー伯爵の主張には一理ある)
帝国の大小事を論じる貴族議員会で構成人員は名門家の当主たちと著名な枢機卿たち議会の意見はたとえ皇帝や教皇であっても無視することはできない
(過去の私は彼らの気品ある態度を信じていた侯爵夫人である私に向けられる丁寧な物腰と優しい微笑みを浮かべながら当主権をはく奪するための聴聞会に
私を立たせる前までは)
どう見てもおこぼれを狙う目つきの血族たち。昔だったら私を懐柔しようとするこの人たちを断固として拒否してたけれど・・・
議会が選んだ人物から経営に口出しをされるよりは私を操り人形にする方が自分たちにとって有利だと考えているはず聴聞会を乗り切るには味方が必要・・・悪い提案じゃない
この後継者論争が長引けば皇室が乗り出してくる——と考えるシュリーだったが、そういえば皇帝陛下はなぜ・・・?と何かを疑問にもつ。
急に黙り込むシュリーにミュラーが呼びかける。
「具体的にはどのような手助けをしてくださるのですか?」
「ツタのように絡まった複雑な運営問題を分担するのです これも全て亡くなられた兄上を思っての提案ですよ!」
「・・・考えてみましょう」
「あのぉ・・・もし夫人が私たちを受け入れてくださるのであれば—―このルクレツィア・・・夫人にもう1つささやかなお願いをさせていただいてもよろしいでしょうか?」
第5話 感想
色々癖のある親戚たちでしたのでシュリーの夫であるヨハンはどんな人なのか気になりました。自分が死ぬと分かっているのにどうして子供たちと年の近い子を妻にしたのか・・・