第40話 ネタバレ
(高金利に人身売買・・・これを見ると強制労役はまだ可愛く思えるわ)
夕方、フェリックスづてにシリルから送ってもらった資料は全てこの地域の貴族に対する腐敗の証拠だった。
そして明日は舞踏会。この地域の全貴族が集まる。一網打尽にするにはちょうどいい舞台だった。
「ダリオという人を探して明日の舞踏会中に男爵城へ来るよう伝えろ」
「かしこまりました」
(この陳腐な芝居の幕を下ろす準備は整ったわ)
ユリアが不敵に笑う。
******
使用人たちは舞踏会に向けて忙しそうに働いていた。
(ほんの10分前まではものすごく静かだったのに・・・
ここに来てから初めての遅い時間帯のスケジュールで本番は今夜の舞踏会だからのんびり起きるつもりだったのに)
小説の中のユリアは幼少時代を除けば舞踏会の準備をしたことがなかった。
社交界に出向く年頃には戦場で剣と踊っていたから。
(だから漠然と考えていた。それは認めるけど)
「陛下!」
(まさかここまで本格的に準備するだなんて思いもしなかった)
「・・・・・・舞踏会は夕方からだしゆっくりしていてもいいだろう」
ウキウキした様子のフェリックスに言う。
「何を仰るのですかそういうわけにはいきません」
「しかし今日は本当の舞踏会ではなく・・・」
「ボクも本当は認めたくありませんが今日は陛下が久しぶりに社交界へ出向かれる記念すべき日ということには変わりありません」
フェリックスが何やら魔法を使う。
「ん?」
その場に衣装がズラッと現れた。
「フレーナには負けますがボクも陛下の侍従としてしっかり学びましたから」
「フェ・・・フェリックス?」
「安心してお任せください!」
フェリックスがクシを持ち輝く笑顔で言う。
「もちろん普段の陛下も完璧ですがボクはまだ忘れておりません。戦場でこう仰ったでしょう?顔も武器になるのなら使うべきだって」
(まぁ・・・)
(ユリアの顔に見惚れてやられた敵も大勢いるからね)
(おかげでのんびりできるはずの一日がフェリックスが計画していたビューティフルコースで埋まってしまったわ。
城ではいつも他の侍女たちに任せていたから正直考えることもできなかった。
でも・・・
フェリックス・・・想像以上の腕前ね)
青のドレスに身を包み髪を束ねたユリアがうつる。
ガタン
「あの馬車は?」
ユリアが窓から見えた馬車について尋ねる。
「エンビタ伯爵の馬車です」
「あれがエンビタ伯爵・・・」
今回の件で一番重い罰を受ける者。
ある意味ではスチェータ男爵よりタチの悪い男だった。
悪いことにばかり頭が回り家臣の管理もまともにできなかった。そのため彼は自分の地位を守るために様々な汚い手口を使ってきた。
スチェータ男爵と同じ日に舞踏会を開くというような些細なことから拉致や殺人なども躊躇なく行った。
(そこまでは男爵も知らないようだったけど・・・)
「もし今日何者かが陛下の髪の毛一本にでも触れようものならボクは容赦しませんから」
「フェリックス・・・」
「ボクいい子にしていたし・・・そう思いませんか?」
(これは断じてこの可愛さに負けて言うわけではない!)
(今日の舞踏会では我慢する理由がないからもともとそうするつもりだったし)
「ああ、お前はずっといい子でいてくれた」
「そうですよね!?」
「今日の舞踏会で何をしようとしているかはわかってるな?」
「もちろんです!」
第40話 感想
やっと次で悪い人たちが裁かれるかんじですかね?