第26話 ネタバレ
『俺が外で頭でも冷やしてこいって言ったんだ!』
エリアスが思いつめた様子で自分の手を力一杯握っていた。
「あれ?エリアス様ではありませんか。どうして練習場に?もしや剣の練習に来られたのですか?」
「・・・・・・いや・・・何でもないからほっといてくれ・・・」
ショボンとあからさまな憂鬱オーラを出すエリアス。
(こんなに分かりやすく落ち込んでいるのにほっとけるわけがないでしょう・・・まったく~)
「もしよろしければ私の散歩にお付き合いいただけませんか?少し寒くはありますが」
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「そんなことを考えていらっしゃったのですね。はしかは潜伏期間があるものですがジェレミー様は招宴の翌日から発症されましたから恐らく外部での剣の稽古の際に移ってしまったのでしょう。エリアス様のせいではありませんよ」
「・・・そんなのよく分かんねぇ・・・ただ・・・」
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【エリアス回想】
「エリアス様がいなくなりました!」
「早く探して!」
「病中の奥様の部屋に—」
「大変だもしかしたらエリアス様まで—」
母はそのまま亡くなってしまった。
(母様はどうして病気になってしまったの?誰か教えて。俺がついていくとワガママを言ったせい?)
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【エリアス回想】
「新しい奥様らしいわよ」
「まあ・・・」
エリアスがシュリーに向かって石を投げた。石はシュリーに当たりそのまま倒れてしまう。
(違う。ただ驚かせてやろうとしただけだったんだ。そんなつもりじゃなかったんだ)
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「俺いつも迷惑をかけてばっかりだ」
「エリアス様私がライヒ家の鼻つまみ者だったことをご存知ですか?子供の頃・・・つまり私たち兄弟がアリーチェ奥様についてここノイヴァンシュタイン家に来る前ライヒ家の少年訓練生だった私は剣術に慣れてもいないくせに勝利と力だけを追い求める愚か者でした。
貴重な武器を壊してしまったり稽古で大切な仲間に怪我を負わせてしまうことは日常茶飯事でした。何というか・・・あの頃は周りに迷惑しかかけていませんでしたね」あっはっはっと笑う。
「・・・で・・・でも今は皆エヴァレットのことを好いてるじゃないか」とエリアスは言う。
「・・・確かにこの場所の人々とは仲良く過ごしています。後になって努力した結果ですが。自分のことにばかり気を取られて他人に対して後悔するような行動を繰り返していたことを自覚した後、周りに気を配り始めてから『嫌われ者の自分』は少しずつ消えていきました」
「エリアス様自分を変える必要性を感じたのであれば変わらなければなりません。今すぐは難しいでしょう。きっとはじめはうまくできないでしょうし。でも慣れてしまえば、それは何よりも当たり前なことになるのですよ」
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「ここ!!ここで遊んでたのに消えちゃったの!!」とメイドの手を引きレイチェルが言う。
「エリアス兄様ならきっとまたこっそり隠れて何か企んでるんだよ!!」
「そうよ!!だから早く探さないと・・・!!」
「誰が消えたって?・・・シュリーから大人しくしとけって言われたのにもう忘れたのか?やっぱりアホな双子だな!」とエリアスが椅子に座り何食わぬ顔で言う。
「・・・あの・・・エリアス様・・・」
メイドが声をかけるとエリアスは
「分かってるよ俺だってバカじゃないんだ大人しくしてるさ兄貴が完全に治るまで」と話す。
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「お祈りして来たの?」
「ああ、はしかは不治の病ではないが早く良くなられるようにとな」
「まったく・・・真面目な奴・・・礼拝堂に行ったと聞いて、奥様の様子を見てあんたまで不安になったんじゃないかと思ってたんだ」
「? どういうことだ?」
「気付いてなかったの?倒れたジェレミー様を見た奥様の表情まるで恐怖に怯えたような顔つきだったじゃないか
・・・あれはやっぱり・・・旦那様が亡くなられたせいかな・・・」
「さあ・・・ただ気が弱い方だからじゃないか?」
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「・・・シュリー」
「私はここにいるわジェレミー」
「僕・・・このまま死んでしまうのかな・・・」
「馬鹿なことを言わないで死んだりなんかしないわ」
「・・・あの日・・・父上が亡くなる前に僕じゃなくてシュリーお前を呼んだ時、本当は遺言状を書くためだったってこと分かっていたんだ。分かっていたのにお前は何も悪くなかったのに父上にとってお前が最も大切な人になってしまったようでそんな風に思えてしまってお前のことを恨んだけど本気じゃなかったんだ」
「・・・ジェレミーたとえあなたの怒りが本気だったとしても私たちが少しの間互いに別の方向を見つめていたとしても傷ついてしまったとしても、もう大丈夫よ」
「・・・シュリー」
「うん」
「僕・・・今すごく眠いんだ・・・・・・目覚めるまで・・・どこにも行かないで」
「もちろん、あなたの側にいるわ私はあなたの母親だもの」
第26話 感想
エリアスが後悔していました。こうして段々と大人になっていくのかな?一方、ジェレミーも病のせいか気が弱くなってシュリーに甘えていました。シュリーはすっかり皆の母ですね!