第61話 ネタバレ
【エレニカside】
「ベルゴットの皇帝とはどういう仲なんだよ」
「拉致犯と人質、主人と客だって何度も言ってるでしょ!」
(もちろん、それよりはずっと親密で内密な関係だけどね・・・キャッ内密な関係だなんて!)
ニヤニヤするエレニカに
「相変わらず嘘つくとすぐ顔に出るな」
「ところでエレニカ姫、一緒に宮殿に行かれずになぜ外で・・・?」
「せ・・・せっかくいい天気だから外にいたくて・・・」
エレニカは皇城の中を自由に歩き回れない。
——ってことがバレたら大騒ぎになるだろうから・・・
「ところでお父様とお母様はお元気ですよね?」
「あ・・・はい、殿下は体重がすっかり減ってしまわれましたし王妃様はストレス性消化不良だと聞いておりますがそれ以外は特に・・・」
(えぇぇえ?全然元気じゃないじゃん!)
「・・・・・・」
(みんなすごく心配してくれたのに完全に忘れていたなんて・・・)
「テゼビアお姉ちゃんは・・・」
「だいぶ回復して日常生活に支障はありませんし娘も元気に育っています」
「良かった~手紙読んでずっと心配だったんです」
「そうでしたか・・・今は安定しているので心配しなくても大丈夫です」
「じゃあフェルナンデス」
「な・・・何でしょうか」
「出産予定日はいつなの?」
「ふ・・・冬です。恐らく年末になるかと・・・」
(だと思った!アレクシオスの誕生日は冬だったから・・・彼が生まれたら原作カップルのちびっ子時代を近くで見れそうね)
(可愛いだろうな~わたしの主人公たち!)
「それで」
「・・・・・・」
「ルボブニにはいつ帰してもらえるんだよ」
「使節団と一緒に帰るつもりだけど?」
「お?そうなのか?いや~とんでもない暴君皇帝ではなかったみたいだな」
「言葉に気をつけなさいセルゲイ。ここはベルゴットの皇城だぞ」
本当に帰らなきゃダメだよね?わたしの体質もそうだしソルレアがまた何してくるか分からないから・・・
それに何よりもわたしのことを心配してくれてる人たちにこれ以上辛い思いをさせたくない。ラウルス様が降臨するまでの4年間だけ何とか生き延びれたら
またベルゴットに戻れるかも知れないし・・・
「そういえばベルゴットの皇帝・・・意外と若いし噂通りルックスは悪くないな」
「やっぱり?正直、ルックスは今まで見た男の中でダントツの1位だからね」
(ベルゴットに戻ってくるためには何か口実が必要なんだけど・・・)
「あと若干、偉そうなところはあるけど強圧的な感じではなかったしな」
(エウレディアンがプロポーズでもしてくれない限り無理だよね?)
「うん、最初鉄壁ガードを攻略するのが大変だったけど実はすごく優しい人なの・・・・・・あれ?なんだっけ?」
ハッとするエレニカに皆の視線が集まっていた。
「鉄壁ガード?攻略?どう見ても怪しすぎる・・・」
「な・・・何が?」
「お前の心の中をのぞいてみる必要がありそうだ。エレニカ!お兄様の目をまっすぐ見なさい」
「お兄様?どうでもいいけど顔どけてくれる?それに変なことばっか言わないでよね。あの人のおかげで今まで元気に過ごせたんだから。帰ってからお父様とお母様に変なこと言っちゃダメだからね!分かった!?」
「ふーん・・・」
「本当にタダじゃおかないから!」
「わあ怖いな~」
「てゆーか何だよこの細い腕は・・・帰ったら身体にいいもんは全部食べてもらうからな!」
「公子様の言う通りです。ここに来られてだいぶ痩せられたのでは?」
「そうですか?確かにちょっと痩せた気も・・・」
「ほらな!前はパンパンで可愛かったのに・・・」
「う・・・うるさいわね!」
そのやり取りをエウレディアンが執務室の窓から見ていた。
【エウレディアンside】
「ふう」とため息をつき前髪をかきあげる。
(騒がしくて集中できないが窓を閉めると余計気になってしまう)
これ以上欲張らずに帰すと決めていたのだが・・・
(・・・無防備で不注意なところが魅力ではあるが他の男にそのような姿を見せてほしくはない)
だがルボブニに戻ったら・・・
『幼なじみ兼、姉の旦那さんの弟です。だからつまり姻戚関係です!でも正直、家族ってよりは・・・友だちのイメージが強いですかね~』
以前話していたエレニカの言葉を思い出す。
(いや、その前に・・・異性ではないか!)
エウレディアンの考えをもし、2人が知るとすれば「ええ?コイツが??もはや同性ですけど?」とかえってきていた。
帰らせないといけないのだが・・・
「ルボブニに帰ったらすぐ元通りになるはずだから大丈夫ですよ」
「やはりベルゴットで大変な思いをされたの——」
「違いますってば!」
本当に帰らせないと・・・
「・・・・・・」
いや待てよ・・・本当にそれしか方法がないのか?
「・・・・・・」
(まったく・・・一体何を考えているのだ。早く帰らせないと・・・少なくともソルレアを地下の牢獄に入れるまでは・・・)
だが問題はそれだけではない。ベルゴットはエレニカの体質に合わないし。私の地位も・・・だからこれ以上欲を出したらいけないのだが・・・
「ベルゴットでの生活もなかなか楽しいですよ?色んな問題が解決したらずっとここで暮らしたいくらいです」
あのような言葉を愛おしく感じるようになってしまった。
ソルレアと魔塔の問題を解決したら・・・エレニカを私のそばにおけるのでは?体質に合わなくても・・・ずっとそばにいれば私の神聖力で何とかできるはずだ。
(必要ならグルカマンロードの手数料を10倍・・・いや20倍引き上げても構わない。一国の姫を皇后として迎えるのだからそれくらいは当然・・・!)
「・・・・・・また訳の分からないことを・・・」
自由気ままな姿がエレニカの一番の魅力だというのに一生皇城の中に閉じ込めるつもりか?
・・・とりあえずグルカマン協定を解決しよう。それからソルレアの罪を暴いて——
その次は魔塔の不正を正すのだ。
「そう・・・一つずつ確実に・・・」
(こんなに多くの魔鉱石を横領していたとは・・・このすべてが帝国全域に広がりどう使われているのか想像しただけでも忌々しい)
この量ならロシェルが知らないはずがないのだが・・・彼も暗黒の魔法士か・・・少なくとも弟子たちの過ちを黙認した共犯者だな。
「彼を信用しすぎたようだ」
ソルレアと弟子たちの情報をまとめた名簿。魔塔と関連したすべてを詳細に記録した日誌。とりあえずエレニカを安全にルボブニに帰し帝国全域を浄化する。
ベルゴット全域の司祭と聖騎士を動員し・・・暗黒の魔法をこの地から完全に取り除くまでどれくらいかかるだろうか?
すべてが終わったらベルゴットもエレニカにとって安全な地になるだろうか?
(結果は分からないがこのまま彼女を諦めたくはない)
私の欲ではあるが・・・結局すべてはエレニカにかかっているだろうな
「分かってくれたら良いのだが・・・」
第61話 感想
エウレディアンがかなり悩んでいました。