第35話 ネタバレ
「帝国の主人」
「皇帝陛下にご挨拶申し上げます!」
(これはどういうこと!?)
ことの始まりはわずか数時間前
フェリックスのおかげで男たちを片付けやっと眠りにつき目が覚めた直後のことである。
(今日はフェリックスに世話されながらゆっくりと・・・)
過ごそうと考えていたユリア。しかし、部屋のドアをドンドンドンと叩かれてお誘いがあった。
「陛下!今から狩場へ行きませんか!?」
(迷惑だってことがわからないのかしら・・・でも・・・)
タタタタッ!
ガチャッ!
「もう準備が整ったのか!」
(以前の方蕩なユリアなら喜んで向かうでしょうね)
「!」
「ええ!陛下のためです!遅らせるわけにはいきません!ここにいらっしゃる間はこの私にお任せください!」
(ユリアに気に入られようと張り切りすぎてるわね)
「ではさっそく参りましょう!馬車も準備できております!」
******
(・・・・・・)
豪華すぎる馬車に言葉が出ない。
(本当に・・・豪華極まりないな。ここまであからさまだとは・・・贅沢してるところを隠す気は少しもなさそうね)
(目的のためにはやむを得ないことだけど・・・のんびりするにはちょうどいいわね)
スチェータ男爵が用意した馬車に乗って目的地へ着くと・・・
「帝国の主人皇帝陛下にご挨拶申し上げます!」
「!?」
(もしかして・・・来る場所を間違えたのかしら・・・狩場じゃなかったの!?城でもここまではやらないわ)
レッドカーペットにスリーピーススーツでお出迎えがあった。
(だけど・・・腐敗した貴族を喜び迎えることこそ放蕩した皇帝の証拠・・・!)
「こ・・・ここまで歓迎してくれるとは!」
(ここは笑わなきゃ!)
「この大陸の唯一の主人、皇帝陛下にお会いできて光栄でございます」
「・・・・・・・・・・・・」
(感動のあまり言葉も失ったか!)
(間を空ければ空けるほど自分たちに感服したあまり言葉を失ったと思うでしょうね)
「全員顔をあげよ。お前たちの顔が見てみたい」
(・・・・・・あそこまで喜んでいるところを見るとわざと自分の味方になる者だけを呼んだのね)
「陛下に一目お会いできみな感激しております」
「そうかそうか今まで気にかけてやれずすまなかったな。この『エンビタ』地域にこれほどの忠臣がいるとわかっていればっもっと早く来たものを」
「・・・・・・」
(シリルの調査通りだわ)
******
【回想】
「陛下ちなみにスチェーテ地域の貴族たちはエンビタ伯爵と犬猿の仲だと聞きます」
「ふむわかった覚えておこう」
******
【現在】
「と・・・とんでもありません!こうやっていらしてくださったではありませんか!ここ『スチェーテ』をお気に召していただけただけでも光栄でございます」
「男爵の言う通りです陛下!」
「陛下に楽しんでいただけるのならそれだけで十分でございます」
「へ・・・陛下それより」
「「我々が準備したものをご覧いただけませんか?」」
「明日の狩りのため優秀な猟犬を連れて参りました。狩り子につきましても腕の立つものばかり集めさせました。陛下は弓を使われると聞きましたのでこの地域の有名な職人が作ったものをご用意いたしました」
「剣は是非私が準備したものをお使いください。特殊な鉱石を使って・・・」
(全部自分を主張するだけでまったくまとまりがないわね・・・男爵の顔がすごいことに・・・でも勝手にやってくれてて本当に助かるよ。どうやらこの芝居も無意味にはならなそうね)
「そしてこの狩場は・・・」
ふああ~と欠伸をするユリアに
「も・・・申し訳ございません!」
「ここまでいらっしゃってお疲れのはずなのに・・・」
(ふむ・・・わがままな皇帝のイメージも悪くはないわね)
チラッとスチェータ男爵を見ると
「!」
「くつろげる場所へご案内いたします!」と笑顔で言う。
「やはり男爵ほど私をわかってくれる者はいないな!」
「!」
(ここまで牽制し合うとは・・・さすが寄せ集めの集団だわ)
「さあさあこちらへ!」
******
「とても気に入ったぞ今夜もぐっすり眠れそうだな」
(またクズ皇帝になる時間か・・・)
「ところで男爵、私に話したいことでもあるかね?」
案内された部屋の椅子に座りユリアが突然スチェータ男爵を睨む。
第35話 感想
ユリアがいきなり態度を変えましたがこれから何が起きるのか気になりますね。