第36話 ネタバレ
「ところで男爵、私に話したいことでもあるのかね？」
ユリアの言葉にスチェータ男爵がギクッと反応する。
「その・・・なぜお分かりに・・・」
（まったく朝っぱらから駆けつけておいて気づかないわけないでしょ？今もそわそわしているし理由は察しがつくけど・・・）
「自分の忠臣の気持ちに気づかないでどうする。私とお前の仲なんだ気にせず申してみろ」
「陛下・・・！実は・・・少し心配をしておりました」
「何をだ？」
「先日、私が準備した男をお気に召されなかったようで・・・」
「なぜそう思った」
「朝・・・あいつらを追い出したと・・・それを聞いて陛下に『下級品』を準備したのではないかと心配で・・・」
（下級品ですって！？）
スチェータ男爵にイライラした。
（人にランクをつけるなんて）
「そんなわけがあるまい」
ユリアがため息をつく。
「ではどうして・・・」
「男爵、私にはうるさい者がついているではないか」とチラッと視線を送る。スチェータ男爵も後ろに控えるユースト達に気づいた。
「久々に夜通しで遊ぶことを楽しみにしていたのに」
「・・・！そうでしたか！」
スチェータ男爵が嬉しそうにする。
「いったいどこからあのようなカワイイ連中を連れてきたんだ？」
ユリアが悪い笑みを浮かべ尋ねた。
「それは・・・」
「私のために力を尽くした男爵だお前に褒美を与えたいと思っている」
「！」
「お前も知っている通り私の側には役にたちそうな者がいない」
（予想以上にあの二人を邪魔者扱いしている。それにそのことを俺に言ったということは・・・うまくいけば皇帝の補佐も夢ではない・・・！）
（・・・と頭を回している音がここまで聞こえてくるわね）
（こんなに餌を放ったのに食いつかないなんてやってることに対して肝っ玉の小さい男だね。だけど考える時間なんて与えるもんですか）
ダンッ！
「！？」
「この私が！ここまでお前を信頼していると言っているのに！なぜお前は私の意図を汲み取ろうとしないのだ！」
「そ・・・そんなことありません！陛下はお忙しいお方なので余計なことを申し上げるような気がして・・・」
「はあ・・・私が知りたいと言っているのだぞ！」
ダン！と机を叩く。
「あのようにカワイイ男たちは久しぶりだったんだ！」
「そ・・・そうでしたか・・・」
「無論だフェーズ公爵が連れてきた男も悪くはなかったがな」
（今の私って・・・本当にクズだわ・・・）
「・・・・・・実は身分の低い者が陛下の慈悲にすがれるよう導いただけです」
「私は回りくどいことが大嫌いなんだ」
「その・・・彼ら自ら志願しました。皇帝陛下に仕える栄光を味わいたいと言ったものですから！」
「なんと志願したのか！」
（嘘でしょ？）
「ええ！陛下の慈悲深さを知らせる良い機会だとも思ったので！」
「私の？」
（いらんことをするんじゃないわよ！）
「彼らには莫大な借金がありますが」
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【回想】
『本日お前らを呼んだのは皇帝陛下と一夜を過ごす者が必要だからである』
スチェータ男爵は借金を背負う美男子を集めて話す。
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「陛下の手が届いたその日より生まれ変わることになるのです！」
「・・・それで？」
「陛下により新たな人生を授かったので今までの借金はもちろん減額することにいたしました」
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【回想】
『志願する者にはその借金を減らしてあげよう』
スチェータ男爵の言葉に借金を抱える男たちは嫌々ながらも断れない様子だった。
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「彼らも喜んで受け入れました」
その話にユリアがイラッとした。
「まったくお前は・・・」
（クズだわ）
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【ユリアside】
（ユリアは狩りを楽しんだらしいけど今度の狩りは全然楽しくないわね。みんな狩りよりも自分を主張し他人をけなしてばかりだったから。
おかげで大収穫だったけど・・・話されたことは全て自分をよく見せようと他人をけなす内容ばかりだったわ）
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【回想】
「陛下、実はあの子爵が・・・」
「本当か？」
「ええ！それに彼は・・・」
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（適当に合わせたら他の貴族の腐敗まで勝手にベラベラと・・・おかげで手間が省けたよ）
「陛下、調査完了で～す」
「フェリックス頼んだことはもう調べたのか？」
「はいっ！陛下のお察しの通り資金源や入手経路まで何一つキレイなものがありませんでした。城を建てる時も借金を口実に人を動員しこき使っておいて利子は雀の涙ほどにしか減額しなかったそうです」
「本当に救いようがない男だな」
「まったくですっ！これ以上相手にせずさっさと罰を下しましょう！」
（フェリックスの言う通りこれだけあれば十分罰を下せることができるけど・・・それでは他の腐った連中の逃げ道を作ってしまうだけよ）
「もう少しの辛抱だそれと私が頼んだ伝言はシリルに伝えてくれたか？」
「もちろんです！明日の夜中までにはまとめて報告するそうです」
「よしっ、では次の罠を仕掛けてみるか」
ユリアがポンポンとフェリックスの方を叩いた。
嬉しそうに報告をしていたフェリックスだったがユリアにそう言われてしまい固まる。
フェリックス「・・・・・・は～い」
第36話 感想
ユリアの考えも分かりますが、フェリックスが可哀想になりますね。
