第44話 ネタバレ
【皇太子side】
「怪我をしないように気を付けるのよノラ」
犬と遊ぶノラにニュルンベル公爵夫人が言う。それを隣で見ていた皇太子は
（ずっと不思議だった。どうして僕にはこんな風に微笑みかけてくれる人がいないのだろうか）と思った。
貴族たちが皇太子に向けて笑う笑みも
（違う）
皇帝や皇后も
（違う）
（もしかすると僕は永遠に手にすることができないそんな存在なのかもしれないと思っていた。）
＊＊＊＊＊＊
「よく分からない」
「！？」
「先日シュリーに告白をしたんだけど説得力がなかったみたいで」と皇太子は言う。
「は・・・分からないと言いながら告白をしたって・・・ちょっと待った一体いつの話ですか！？」とジェレミーが怒る。
「もう終わったことだよ。いつかだなんて重要じゃないだろう？」
「ただシュリーが僕のことを愛してくれたらいいなって今はただそれだけだよ」
「僕をどこまでも後悔させるつもりですね。たった一発殴ってこんな薄暗い牢獄に閉じ込められなきゃいけないなんて20発くらい殴っておけばよかった。
シュリーが皇太子殿下のために生まれた人間だとでも思っているのですか？望めば愛してくれるとでも？」
「そうかい？でもおかしいな赤の他人でありながら慰めや愛を受けているのは」
「君も同じじゃないか。その希望を僕が持つことはどうして許されないんだい？」
「シュリーが望むのであれば僕は彼女を皇后にしてやることだってできる。
いつかは去ることになるノイヴァンシュタイン家とは違って」
ジェレミー（テオの声が遠くなっていく。どこかおかしいと思いながらもどうして一度も深く考えたことがなかったのだろうか？）
（シュリーお前はどうやって『母親』になることができたんだ？）
＊＊＊＊＊＊
「奥様もうずいぶんと長いこと立たせたままです。そろそろ中へ案内を・・・」
「うるさいわねぇ！！人の家に勝手に押し掛けて来る方が悪いんでしょう！？」とルクレツィア・フォン・セバスティアン伯爵夫人（ジェレミーの叔母）が怒る。
「私の前に現れる神経の図太さも信じられないけど！よりによって風邪をひいている時に・・・
笑い飛ばして追い出してやりたいところだけどジェレミーの件で私に何か助けを求めに来たんでしょうから
必死に哀願する姿を見てやらなきゃね！」
＊＊＊＊＊＊
「奥様このままいつまでも待つわけには…」
「以前のことを思えば門を開けてくれたことさえ奇跡よね。今、立場が悪いのは私の方だものこの程度は甘んじて受け入れるべきだわ」とシュリーが言う。
「長らくお待たせして申し訳ありません。セバスティアン伯爵家へようこそいらっしゃいました。奥様のところへご案内いたしますのでこちらへどうぞ」
＊＊＊＊＊＊
「私のところへいらっしゃるなんて思ってもいませんでしたわ！ノイヴァンシュタイン侯・爵・夫・人！」
「！？」
（つ・・・衝立・・・！？）
「早くお座りになったらどうですか！？体調も優れないのですからさっさとしてくださいな！
話は聞きましたジェレミーがとんでもない事件を起こしたそうですね。風邪で寝込んでさえいなければ私もその場にいたことでしょう
とにかく・・・見舞いき来られたわけではないのでしょうし用件は？」
「・・・裁判のためにいろいろと方法を探していたのですが、その中で」
（送られないまま残っていたヨハネスの手紙を一通見つけました。私に必要な内容が書かれた・・・」
「しかし手紙1つだけでは安心できませんでした。裁判台ではどんなことを言われるか分からないため確実にこの内容を保証してくれる保証人が必要でした」
「その証人が私であるはずはないでしょう。ヨハネスお兄様とそのような手紙をやり取りしたことは一度もないのだから」
「手紙のあて名は亡くなられたアリーチェ夫人の兄でありニュルンベル家と肩を並べる騎士家門ライヒ家の長男『ヘルマン・フォン・ライヒ』」
「ちょっと待って！そこまで分かっていながら私のところへ来たということは・・・！」
「ライヒ家への訪問を断られたということですね！」
第44話 感想
皇太子がちょっと病んでる感じでした。でも確かにシュリーとジェレミーって年が近いのに不思議な感じですよね。
