第34話 ネタバレ
(主人が庭園で育てた花・・・?)
「さきに言ってくださればいいものをご用意したのに」
夕食の時、伯爵がシュンとした様子で言う。
「大丈夫ですよ。いつも歓迎していただいてたので。主人に余裕ができたおかげでお手伝いできたまでです」とレインが話していた。
(皇居近隣で売っている国花を庭園で育てる・・・どういうこと?ん~・・・それほど国に忠誠しているとでも言いたいのかしら?どうして私に・・・)
「私の提案があまり気にいらなかったのか?」
「そんなことございません」
「アリアを思ってくれたのか。せっかくだからアリアにも意見を聞いてくれ」
「えっ?なんの話?」
「レインが君に興味があるようなんだが・・・どうかね?」
「そんなにストレートに言われても・・・」
ハハッとレインは笑う。
(なんなの?どうせいいように利用したいだけなんでしょ?レインの主人ならまだしもどうして私が侍従なんかと?伯爵にはもう期待しないと決めてたけどほんとうに最低ね・・・)
「あなた・・・!?」
伯爵の提案にアリアの母もギロッと睨むが伯爵は気づかない。
「こんなにも家紋に貢献してくださっている方ですしお姉様はまだパートナーもいないので会ってみてはいかがですか?」
ミエールがフフっと笑いながら言う。
「私はあなたにピッタリの相手だと思うわ」
「私にはオスカー様がいるじゃないですか」
「そうだったわね・・・たま~にしか来ないから忘れていたわ」
「プレゼントはたくさんいただいてます。お姉様は受けとることがないから・・・わからないですよね」
(自分だって公女が送ったものだってわかってるくせにそれで満足できるの?)
「急にお聞きしたことなのでこの話はこの辺で・・・」
「気になったらいつでも言いなさい」
(私の娘に・・・)
(私の意見なんてどうでもいいのね。貴族の結婚なんてそんなものか娘を売るなんて簡単なのよ。だからって許せないけど)
******
(レインの主人って人がミエールから離れただけマシね。公女の誕生日にオスカーとミエールの話でも聞いたのかしら誰かはわからないけど公爵家よりは下ってことね・・・)
アリアが部屋で本を読んでいるとドアにコンコンとノックがあった。
「遅い時間に誰でしょう・・・あっお嬢様レ・・・」
「花束ともう1つ渡すものがございました!お返事をいただきたいとのことなので読んでみてください」
レインが手紙を渡す。
「?」
(手紙・・・?)
親愛なるアリアお嬢様お元気ですか?気持ちが決まりしだい侍従を通して返事をいただけたら幸いです。 アース
「ア・・・アース!?」
「その方が僕の主人です~」
(あんな大量にプレゼントを送っていたのは・・・アースだったの?)
「待って・・・」
「アース様がミエールにプレゼントを渡してたのは・・・」
「あれは間違えていたみたいです。主人はミエールお嬢様には1ミリたりとも興味がないのでご安心をプレゼントだって本来はアリアお嬢様のものなんですから。一応・・・お嬢様に気を使ってお花を渡したりしましたが・・・」
(あの花ね・・・)
「庭園で育てているのですね。主人のお気にいりのお花だって・・・この花は皇居で育てている特別なものだと聞いたのですが・・・てことは・・・」
「!!」
「アース様は・・・」
「!!」
「本当にお花がお好きなんですね」
「まぁそうですね・・・」
(皇太子かもしれないとも思ったけど公女の誕生日パーティーに参加したと聞いたし結婚は間違いない)
「誤解も解けたのでお返事を・・・」
「待って余計にお返事が出しずらくなったわ」
「どうしてですか?」
「だって・・・アース様は素晴らしい方なのに・・・どうして私にこのような提案をなさるのか・・・理解しがたいわ」
「その件はすでに主人からご説明受けたと思いますが」
「まだ正体もはっきりわからないし・・・」
(正体・・・)
「僕からはお伝えできませんがお嬢様の知識を共有したいだけなのでご安心を」
「そこが謎なのよ・・・私そこまで賢くないわ」
「僕からしたらお嬢様の方が謎ですけどね。僕がみた限りお嬢様はとても聡明な方ですよ。何度感心したことか」
「それは・・・」
(砂時計を使ったから・・・)
「噂で聞いただけよ」
「どこから情報を得たとしてもそれを・・・うまく活用できる能力は素晴らしいものです」
******
「自身の状況や条件を理解しているわけだ。あれは天性だと思う。この世には理解しようとしないやつらばかりだからな。あんな才能を持つ人をみると・・・そばに置きたくなる」
(それって一目惚れでは・・・?)と皇太子の言葉を思い出したレインは思う。
******
「そうおっしゃっていました。普段は自身たっぷりなのに今日はいつもと違うようです」
「!」
「お返事はどうされますか?」
(正体も明らかじゃないし不明な点ばかり・・・でも・・・)
「参加するとお伝えください」
******
(自分でもわかっていた。アースが変なことを企んでないといいんだけど。才能・・・そんな風に言われたのははじめて。いつも非難する言葉ばかり聞いていたから・・・自分自身可能性を塞ぎこんでいたのかもしれない。私ってこんなにプライドなかったけ・・・)
「お嬢様~!!アリアお嬢様がサラお嬢様にアドバイスされたのですね!?」
物思いにふけるアリアにいつもの令嬢たちが興奮した様子で尋ねてきた。
「えっ?」
「手を握るタイミング!詳しいのですね!」
「平民出身なので・・・恋バナはたくさん聞いていました。結構みんな話すんですよ」
「詳しいから完璧なアドバイスができるのですね!」
(全部私の経験談ですけどね)
「お役にたてるかわかりませんがいつでも聞いてください」
「恋人ができたら是非!」
「私も!」
(侯爵は以前からサラに興味があったから成功しただけ・・・まぁサラほど味方につけたい人はいないから勝手にして)
「侯爵様ったら手を繋いだだけで頬を赤らめるのね!」
「侯爵様は聞いていたより優しい方なのですね~」
「お似合いですよ!」
令嬢たちに言われサラが「そうですか?」と照れていた。
「そういえばこのまえアリアお嬢様の悪い噂がまわっていました!」
「ほんとうに信じられません!」
「噂ですか?」
アリアが尋ねる。
「聞いてないですか?」
(なんせ悪い噂ばかりだからどれのこと?)
「一番ひどいのはお嬢様がオスカー様を誘惑してミエールお嬢様を悲しませようとしてるって噂です!」
(それは・・・事実だけど)
「私はそんなこと・・・!」
「ですよね!」
「アリアお嬢様がそんなことするはずない!」
(エマとその仲間たちの仕業ね・・・)
「公女様のお誕生日にオスカー様とミエールお嬢様が仲睦まじくしていたので・・・」
「もう噂は収まりましたが本当にひどかったです!」
「そう・・・知らなかったわ」
(オスカーのせいで私の計画が狂ってしまった。アースの力を借りてみる?彼はいったい何者なの・・・)
「アリアお嬢様さきほどからボーッとして・・・」
「もしや・・・お嬢様も気になる方がいらっしゃるのですか!?」
「え?違う違うほかのことを考えていただけ・・・」
「いったいなにを考えているのですか!?」
「だれ~!?」
「も~っ!」
「お嬢様に興味を抱いてもらえる方って誰でしょう~?」
「誰かしら・・・」サラも気になっていた。
「なんだかヤキモチやいてしまうわ・・・」
令嬢たちが盛り上がるなか寂しそうな顔でサラがボソッと言う。
第34話 感想
レインの意味深な言葉もありましたが、アースの正体に気付かない様子でした。まさか皇太子と何度も会っていたとはさすがに思いませんよね。