第17話 ネタバレ
「ボルシェイク様がお見えになりました」
メイドが扉を開けてバレリーを迎える。
「ごきげんよう」
「ちゃんと時間通りに来たな出発の前に今日のスケジュールを言っておく」
ネクタイを肩に下げ胸元をさらした格好のカイロスが話していた。しかし、バレリーは考え事にふけっていた。
(・・・セレニア・ホーウィンがまるで空から下りてきた命綱でも見るような目で私を見つめていた。
どうして?私はただこの世界にはないファンタジー小説が大好きだっただけなのに何も知らないんだってば!!
私は腐った命綱なのよ!!)
(ボルシェイク様は混乱されているようだな。やはり公爵様のあのいきすぎた格好のせいだろうか?やはりあの時止めておくべきだったか?
恋愛に関する本をごっそり持ってきたつもりだったがあんな内容のものだったとは・・・)
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【ビクトール回想】
「それってシリーズですか?」
「そうだ。この本によると女性のハートを射止めるには見た目もイカしてないとダメらしい」
「射止める・・・まぁ間違ってはいませんね」
(思ったよりこの本役に立ってるかも・・・)
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(——なんて安易にスルーしてしまった!!誘惑というのはまず雰囲気とシチュエーションがあってこそ効果があるんだと言っておかなければいけなかったのに!!)
「では出発しよう。ところで君大丈夫か?顔色がよくない何かあったのか?」
「あ・・・私は大丈・・・」
突然、扉が開き使用人が入ってきた。
「殿下!どうしてこんなにモタモタしてるんですか!?早く婚約式の予行練習を終わらせて今日こそは!!今期の予算執行報告書を・・・!!出さ・・・なければ・・・」
扉が開いたことにより押されてしまったバレリーは公爵に支えられる。
その光景を見たビクトールは(ナ・・・ナイスアシスト!!)と思うが、部屋に入ってきた使用人は慌てて
「あ・・・申し訳ございません。あの・・・その・・・いいところをお邪魔してしまったようですね。失礼いたしました。どうぞごゆっくり・・・」と話し引き返そうとする。
(何言ってんのよ!!)
「背中は大丈夫だったか?主治医を呼んだほうが・・・」
「いえこのくらいどうってことないです少しボーッとしてたけどおかげで目が覚めました」
「本当にひどいですよ殿下!!いくら私が外で仕事をすることが多いからって!!殿下が婚約したこともビクトールから聞いたし。それにビクトールの奴私にウソをついて。この弱そうな方のどこが迫力・・・」
「ところで何ですかこの格好は?こっちに来て下さい。いくらただの予行練習といっても服装はちゃんとしていないと。急いでるからってこんな格好で出かけていいと思ってるんですか?」
(よく見るとこの人まじめそうに見えるけど意外に無邪気なところが妙にマーシャルに似てる)
バレリーはネクタイを締めてあげる。
カイロス「・・・ダメです」
バレリー「あ・・・いやそういう意味じゃなくて・・・」
(長女の癖がつい出ちゃった・・・)と思うバレリー。
(自ら婚約者を躾けるその姿迫力あります!!さすがドウェロ家の次期女主人様でいらっしゃる!!)と使用人は思う。
「・・・???」
(素晴らしいアシストがいたにもかかわらず本人が射止められてしまうとは・・・完全に完敗ですね)
第17話 感想
カイロスがとても可愛く思える話でした。使用人たちにとってはまさに誰か止めてあげて状態でしたねwww冷や冷やしたと思いますが、カイロスは幸せそうで何よりです。