第43話 ネタバレ
帝国カイザーライヒ
永遠のように思えたその勝ち戦の旗の下には暗い影が立ち込めていた——
それは終わりの見えぬ徴収と狭まることのない階級の貧富の差と堕落した司祭たちによる民衆の苦痛だった。
沸き上がる市民の憤怒が自分たちに向けられる前に帝国の首脳部は戦争の刃でこれを鎮めようとしていた。
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皇后(私たちがたとえ深い絆を持つ仲ではないとしても)
【4年前 皇后宮 謁見室】
皇后「私とあなたは同じ道を歩んでいるものだと思っていたのだけれど話によるとあの幼い少女を後妻として迎えるという奇行に走ったばかりでなく後継者教育のようなものまで受けさせているそうね?」
ヨハネス「・・・すでにそんなことまでご存知とはさすがですね。私が去った後あの子はノイヴァンシュタインを支える人材となるでしょう」
「・・・あなた気は確かなの?」
「ジェレミーは当主の器にはなれません」
「まっすぐに前を見つめることしか知らぬあの子は狡猾な者たちに容易く利用されてしまうでしょう。側を守ってくれる伴侶に出会うまで手助けしてやりたかったが私に許された時間はあまり残っていません」
「言い訳のつもり!?それならばなおさら私に侯爵家を任せるべきでしょう一体何を考えているの!幻影に魅せられて正気を失ってしまったようね!」
「ルドヴィカの幻影などに!!」
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【皇后side】
(そう・・・あの時確かに笑っていた。まるで何もかもが自分の思い通りに進むというように)
「でも教会はすでに動き始めて皇帝もいつ気を変えて敵に回るか分からない」
「さあこれは試練なのよ」
(ヨハネスがあなたを選んだ理由をこの両目で確認させてもらうわ。この程度の危機すら乗り越えられないようであればノイヴァンシュタイン家は私の手中に収めてしまわなければ)
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【シュリーside】
「こっちに来ちゃダメですシュリーさん。ホコリまみれなので」
「ヨハネスが亡くなってからは彼の執務室をろくに掃除していなかったから・・・それよりせっかくノラが手伝ってくれているのに大した収穫はないのね。書類やガラクタばかりで・・・」
「もう少し見てみましょう」
(生前のヨハネスが使っていた個人的な空間。彼が亡くなって以来重要な用がない限りこの部屋に入ることはなかった。萎縮してしまうような気が・・・今でもなんとなく)
(あっ・・・あの箱・・・!)
「ノラ!あの上の隅にある黒い箱が見える!?ああ・・・高すぎるわね踏み台になる物を持ってくるわ」
ヒョイッ
「これですね」
「そんな高いところに簡単に手が届くなんて!?」
「俺が部屋からどうやって抜け出してきたと思っているんですか?このくらい朝飯前ですよ」
(ああ・・・!公爵夫人の気持ちが分かるよう・・・!!ノラ・・・あなたの部屋1階じゃないわよね・・・)
「それじゃあ俺はこれで帰りますね」
「え?もう帰るの?」
「使用人たちもいるのに俺に手伝いを頼んだということは他人にあまり見られたくないものなのでしょう。
今度は笑顔で会いましょうシュリーさん。その時は俺がもっと笑わせてあげますから」
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【ノラside】
(・・・歩いて帰ってもよかったのに。もちろん歩いてたら家に着く頃には日が暮れてしまうだろうけど・・・)
シュリーに乗せられた馬車の中で思った。
(もしも俺が大人だったならきっとっもっと力になってあげられただろう。あんな寂しげな顔をさせることもなかったはずだ)
(今の俺はあまりにも無力だ。早く大人になりたい)
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(ありがとうノラ。見つけたヨハネスの手紙入れ彼は常に他人と一定の距離をおいて付き合う人だった。けれど稀に数少ない大切な相手に気安い手紙を書くことがあった。
もしかしたら彼らには正直に明かしていたのかもしれない)
「私たちが普通の夫婦仲ではなかったことを・・・」
(これがけっして安全な方法ではないということは分かっている。『家庭を成す努力をしなかった』という過失を呈するためには通常であればただ相手と口裏を合わせればいいけれどヨハネスがいない今)
(口実としてあげられるのは彼と私の間の『子供』の有無だけ)
「・・・・・・裁判台で夫婦生活について証言する貴婦人だなんて・・・鉄血の未亡人だとかブラック・ウィンドウと呼ばれていた頃が懐かしくなるかもしれないわね」
(わずかな可能性に賭けてこの作戦を成功させることができれば当主となったジェレミーは解放され何者でもなくなった私はこの家を去らなければならなくなる。
怖い
私を受け入れてくれる人が
私のいるべき場所が
私の意味が
もうこれ以上どこにもなくなってしまいそうで
でも答えはもう出ているのだ)
「・・・今回もあなたの結婚式には出られない運命みたい。そうでしょう?ジェレミー」
(見つけ出そう。ヨハネスの手紙の中に残った糸口。離婚の理由を証明できるたった一文)
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【牢獄】
「今回こそは僕がどんな様子でいるかを見物しにいらっしゃったのでしょう?皇太子殿下」とジェレミーが言う。
「・・・2人でいる時は名前で呼んでくれていたのに。まあ今はそんな気分じゃないんだろうけど。そんなに警戒しなくていい助けてやると言いに来たんだ。母上を説得することはできなかったけど。裁判に参加してシュリーを弁護しよう」
「何もかも殿下が計画されたことだったのでは?」
「そんなことをして僕になんの得があるというんだい?」
「・・・少なくとも危機の瞬間に現れた勇者のふりはすることができるでしょう」
「・・・君にそんな風に思われていることは胸が痛いけどシュリーを助けたいと思っているのは本気だよ。僕にもある程度の責任はあるんだから。
皇室を相手取った争いは非常に困難だ。きっと彼女は1人で孤軍奮闘することになるだろう」
「・・・ですか?」とジェレミーがボソッと言う。
「ん?」
「好きなんですか?シュリーのこと」
第43話 感想
ノラ、イケメンですね!大人になったら絶対良い男になるよwww
そして皇太子は絶対性格が歪んでいると思う・・・