第47話 ネタバレ
「そなたが突然休暇を申請したとき申し訳なさを感じていた。そなたはこれまで一度も俺の傍を離れたことがなかったから。
ところが今日のそなたを見ていると・・・他に理由があったのではという疑問が生じた。俺の気のせいか?」
「・・・・・・」
「ジンジャー・トルテ」
「ひょっとして・・・彼女を異性として見ているのか?」
「・・・・・・はい。
私はジンジャー様を異性として好いています」
『そのようなことをお聞きになる陛下もジンジャー様に恋心を抱かれているのですか?』
イザナの目を見つめながらハメルは心の声で尋ねた。
「・・・さあ、このような感情ははじめてで」と答えるイザナ。
(たしかに誰よりもかわいく愛おしく・・・一緒にいると楽しい。だがこのような感情を・・・恋だと定義していいのだろうか?)
「違うのでしたらこれから私はジンジャー様を振り向かせてみせます。たとえ彼女が陛下を想っていたとしても。それでもよろしいですか?」
「嫌だ。全然よろしくない!」
『そういうのを恋心と呼ぶのです陛下・・・』
ハメルの心の声を聞きイザナは赤くなる。
(心が読めるのは俺の方なのに読まれたような気がするのは何故なんだ?ララとはもう五年の付き合いだ・・・
ララも俺の心をよく知っているのだろう)
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【イザナの回想】
五年前の晩冬
閉じ込められた日からずっと傍にいた付き人が老衰によりこの世を去った。この上なく孤独な塔の中で唯一俺が頼れた人の死・・・
塔の外に出られず最後の挨拶すらできなかった。
俺はさらに孤独になった。俺の力のことを知らない者たちは俺が伝染病を患っていると思い込んでいたし誰もあの塔に近づこうとしなかったから。
そんなある日・・・
『はじめまして王子様!これから王子様の付き人をするラキシャンと申します』
ララは宮殿に雇われてすぐ俺の付き人を志願したそうだ。
呪いのせいで人を信じることができなくなった俺でも年が近く人柄がいいララに心を開くようになり・・・
兄弟がいればこんな感じだっただろうかと秘密まで打ち明けるほどの仲になった。
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(五年前、突然現れたララ。生姜令嬢はララにネックレスを盗むのを手伝ってもらったと言っていたし。
偽のネックレスには『HB』の文字が刻まれていた・・・確信はないがララがハメル・ブレイである可能性が高い
だが・・・俺は・・・)
「・・・陛下、私は陛下も好きです。なのでお二人方とも失わないようにこの想いを胸に秘めておこうと思っております」
「男からの告白なんてうれしくない。だが・・・俺もそなたが好きだ。そなたは塔にいた頃から献身的に俺に尽くしてくれているからな」
「陛下・・・今の・・・愛の告白ですか?」
「あぁ、今のは俺が男にする最初で最後の愛の告白だ」
「今のお言葉一生忘れません」
(人を信じるというのが俺にとってどのような意味を持つのかはそなたが誰よりもよく知っているはずだ・・・
だからどうか最後まで俺を裏切らないでくれ。そなたが何者であろうと俺はそなたを信じたい)
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数日後
「失礼いたします。レラジエ・アトランタが陛下にご挨拶申し上げます」
「座って。で、話って?」
「単刀直入に申し上げます。陛下が呪いに悩まされているということを知っております。
望まなくても目が合えば相手の心が読める呪い。その呪いをかけたのはゲシュト・・・私の祖父ですね」
「・・・・・・!・・・どうして知っている?」
「『幽閉された王子と侯爵令嬢』という本を読んだのです。陛下はあの本の存在をご存じですか?」
「・・・あれを読んだのか?」
(ジンジャーが持っていた本は今俺が持っている・・・まだ他にもあったのか)
「偶然あの本を読み、呪いを解く方法を私なりに調べてみたのです。一度お聞きいただけませんか?」
「いいだろう」
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【レラジエの回想】
祖父が宮殿を去ってから陛下に呪いの症状が出はじめたという部分を読み。ふと王国の大魔法使いだった祖父がどうして早くに爵位を父に継がせ他の領地へと旅立ってしまったのか気になりました。
私は当時まだ子供でしたので深い事情は知らずにいたのです。ある日祖父の遺品を見ていると・・・
『お父様これはどなたの肖像画ですか?』
『うん?あぁ、そのお方は・・・ヘンドリック様だ。亡くなった先代の陛下の弟さんだよ。若くして自らの手で命を絶たれてしまった・・・
おじいさんの弟子の中で最も成績がよく魔法の才能に溢れたお方だった。残念でならない・・・』
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「ヘンドリック様が亡くなられてから半年もせずに祖父は宮殿を離れたそうです」
(俺も子供の頃のことはあまり覚えていないが叔父さんの葬式に参列した記憶はある)
(だが・・・叔父さんの死と俺の呪いにどんな関係があるんだ?)
第47話 感想
まさかとは思いますがイザナの叔父がイザナに呪いをかけたのですかね?それで死んでしまったとか・・・?