第33話 ネタバレ
「やはり夫人もお気づきなのでしょうか?僕があなたを愛しているということを」
(ちょっと待って・・・これは一体どういうこと?)
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「この香水にいたしますね奥様」
「ええ」
(一睡もできなかった。おかしい、幼い殿下の言葉1つに振り回されすぎている。ただうまくあしあしらってしまえばいいだけなのに。一晩中、胸が高鳴って不安な気持ちが消えてくれないなんて)
ズキンッ
「!?」
(頭痛まで・・・)
「奥様、本当に大丈夫ですか?少し休まれた方が・・・」
「ううん、グウェン約束の時間が迫ってるから支度を終わらせてちょうだい」
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「昨日の無礼をどうかお許しください」
「・・・殿下・・・」
「僕の浅はかな行動によって夫人が困惑されたであろうことはわかっています。でも昨日は思わず焦ってしまったというか・・・
皇室は2年前から皇太子妃を迎えるための準備を始めました。多くの令嬢と姫たちの肖像画が皇宮へ送られてきました。外見 地位 品性どれひとつとっても非の打ちどころのない方たちでしたが僕の心を動かすことはありませんでした。
でも夫人は違います。夫人と一緒にいると心が温かくなりどこか懐かしいような気持ちに包まれるのです」
「亡くなった僕の母の姿が思い浮かぶほどに」
「・・・私には過分なほど光栄なお言葉ですわ。ですが殿下・・・私が思うにその感情は異性間の愛情というよりは前皇后様を懐かしむ殿下のお気持ちからきているものではないかと思うのです。
それは愛ではなく———」
「僕は絶対に思い違いをしているのではありません!!」
声を荒げる皇太子にシュリーは驚いた様子だった。
「・・・声を荒げてしまって申し訳ありません。でも僕は絶対に勘違いをしているのではありません。今すぐに返事をいただけるとは思っていません。ただ僕の気持ちを知っておいていただきたいのです。そしていつか夫人が誰かをその胸に抱くことになろうとも昨晩の僕の告白を思い出してくださればと思います」
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【皇太子side】
馬車の中で皇太子は物思いにふける。
(・・・・・・いつも笑いかけてくれていたのに今日は壁を感じたなぜだろう?皇太子である僕が好意を寄せていると告白すれば当然喜ぶだろうと思ったのに。かえって距離ができてしまったみたいだ)
(いや、問題はない。望みさえすればいつだって誰だって僕を愛してくれるようになるんだから)
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いつの日かの記憶
しゃがむノラの横に何かが壊れていた。そして皇太子は泣きそうな顔でニュルンベル夫婦にノラの方を指差して何かを告げる。それを聞いた夫婦が皇太子に笑顔を向けていた。
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「告白が少し早すぎたのかもしれないな。他の方法を探してみないと。急ぐ必要はない」
(彼女と一緒に過ごす時間はたっぷりあるんだから)
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【シュリーside】
(・・・どうしたものかしら私にできる最善の断り方だったのに。皇太子殿下は思ったよりもずっと頑固だった。
現皇帝も暗黙的に決められていた。皇后候補の代わりに男爵家の娘を選ばれて大きな波紋を呼んだけれど、それとは次元が違う話だ。
殿下は今、母親に対する懐かしさを愛情と混同していらっしゃる。でも・・・)
『絶対に勘違いではありません!』と話した皇太子の言葉をシュリーは思い出していた。
(あの表情と反応・・・今まで見た中で最も真摯だった。何が正解なのか分からない。本当の男女間の愛について私が何を知っているというのだろう。)
(殿下の私に対する関心ができるだけ早く収まることを祈るばかりだ)
コンコン
「どうぞロベルト」
「奥様、今週中に決裁が必要な書類でございます」
「ここに置いてちょうだい」
「それから・・・奥様が皇太子殿下と会っておられる間にニュルンベル公子がいらっしゃいました」
「ノラが?入って待ってくれればよかったのに」
「そのようにおすすめしたのですが帰ると言い張られて・・・」
(今日は訪問の日じゃないのに・・・)
「どこか普段と違う様子はなかった?」
「・・・普段通りでいらっしゃいましたが・・・今日は口元に小さな傷がございました」
(いつでも力になると言ったのに1人にさせてしまった。この上なく心が重たい一日だ)
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翌日【貴族院議会】
ハインリッヒ公爵「今なんと仰いましたか!?聖誕祭予算の削減ですって!?開催を目前にしてそんな・・・!皇帝が主管される行事を・・・一体、教会は何を考えているのですか!」
ニュルンベル公爵「・・・確かに受け入れがたい意見です。全国の物資と人力がこの大宴会に集中しています。教皇庁の予算が抜けた分だけ混乱が起きるでしょう」
枢機卿「教皇庁は市民たちの救援が優先であるという結論を下しました。帝国民に一時の享楽ではない永遠の安寧を教会は今回の聖誕祭準備から手を引かせていただきます」
第33話 感想
皇太子とノラの間に何かあったようでした。それにしても、シュリーは皇太子を幼いと感じているようでしたがシュリーも同じ年頃に見えるのに不思議な感じがします・・・やはり二回目の人生だからかな?