第41話 ネタバレ
ガタ ガタ ガタン
「どうして扉が開かないんですか?外にいる人たちは何をやってるんですか!?」
「ここはもともと人が入ったらしばらく扉が開かないんだ」
「それどういうこと・・・」
バレリーがカイロスの袖を掴む。
「何を怖がってるんだ?怖がらなくていい。ここは一度入ったらしばらくの間外部と遮断されるからひと息入れたいときにときどき来るんだ。
代々の家主と女主人の宝物が保管されている場所だから子孫を休ませてあげようという彼らの思いが込められているんだろう。
だけどバレリーにとってはそうではなさそうだな。倉庫にある物の目録を確認するのが今日の任務なのに明かりまで消えてしまったんだから」
「いえカイロスこそ・・・どうしてこんなに濡れてるんですか?」
「いきなりビクトールとあなたのメイドにここへ連れて来られたんだ・・・」
「寒そう・・・」
こんなに曇って寒い日
「それに薄着だし・・・」
私のせいでエイミーに連れて来られたのね
ゴホッ
「大丈夫ですか??」
「・・・大丈夫だ」
(熱もあるみたいだし)
「・・・・・・」
「ちょっと手を貸していただけませんか?勇気が必要なんです」
カイロスの手首を掴み頭に押し付ける。
パアッと優しい光があちこちに灯る。
「・・・これはバレリーがやったのか?」
「はい笑わないでくださいね」
バレリーが先生に以前言われたことを思い出す。
『何だこれは!蛍を捕まえてきた方がよっぽど明るいぞ!』
『マッチがあるのになぜ数式を覚えてこんなものを作ろうとする?』
『道具を使えお前はサルか??』
「大したものではないことくらい自分でもよくわかってますがでも何もない状況ではそれなりに役に立つんです。温かくて本くらいなら読めますし・・・」
「でも本当は・・・もっと大きくたくさん作れたんです」
成功したのは一度だけだったけど
すごくバカにされたわね
「十分だ。小さいけど温かくて頼りになるところはバレリーと似てるな」
「!!」
バレリーが赤くなる。
「じゃ・・・じゃあ明るくなりましたし本格的に倉庫の目録整理をしましょう!」
「わかった」
「とりあえずこの機密文書は・・・」
「機密文書ではなく育児日記だ。先代の家主と女主人だった両親の宝物だ」
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「カイロスにもこんな時期があったんですね!」
「僕は両親が歳をとってからできた子だからなんでも記念に取っておきたかったらしい」
「だけどこれは・・・カイロスのクマのぬいぐるみでしょう?」
「・・・あれは父上と僕のものだ」
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【カイロス回想】
「君はズルいよ。どうしてカイロスにだけクマちゃんを作ってあげるんだ?」
「カイロスが人形遊びをする時期だからです!」
「私にも作ってくれ~」
「あなたみたいな大人がクマちゃんなんて!子どものものを狙わないでください!まったく・・・あなたにはもっと大きいのを作ってあげますよ。それでいいですね?」
「やっぱり君が一番だ!」
イチャイチャする両親を想い出す。
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「可愛いお父様ですね!」
「可愛いか・・・?」
「じゃあ大きいのはお父様ので小さいのはカイロスのでしょう?でもカイロスのぬいぐるみがなぜここに・・・?」
「僕は・・・両親が亡くなった後幼くして家主になった。人前では決してぬいぐるみを持っている姿を見せるわけにはいかなかったんだ。
部屋の片隅にクマのぬいぐるみを置く家主を望む者はいないからな。見下されないためにもそれを遠ざける必要があったんだ」
「・・・私も、もう見下されたくなかったんです。だから諦めてしまったのかもしれません魔法を。
才能がなくて大変だったけど・・・習ってる間は楽しかったのに・・・だからこれ以上逃げません!」
第41話 ネタバレ
泥棒も育児日記や思い出の品ばかりでは精神がおかしくなっても仕方ないですよね。