第53話 ネタバレ
エウレディアンに抱きしめられていたエレニカは泣き疲れたのか眠くなっていた。
「変だなぁ・・・昼にあんなに寝たのにまた眠いです」
「そうか」
エウレディアンがエレニカをお姫様抱っこでベッドまで連れて行く。
「陛下・・・部屋に戻らなくていいんですか?」
「戻らないと」
(なんで戻らないんだろう・・・)
(やっぱり陛下は・・・無駄に優しい・・・)
******
「神殿は神様を祀るための場所なので皇城よりは物静かで質素ですが構いませんか?」
「はい大丈夫です。正直わたしには皇城が華やか過ぎたので・・・」
「・・・・・・」
「さあ行きましょう」
エレニカはディエリゴと神殿まで馬車に乗って行く。
(ベルック宮殿・・・マリアンヌは元気にしてるかな?)
「・・・え?一体どうなっているの??」
「陛下の命令に従って庭園を浄化しました。邪悪な魔法を完全に取り除くまで・・・実はそれでちょっと大変でした。陛下が満足されるまで何度も作業を繰り返したので・・・」
「い・・・いくら何でも程度ってもんが・・・」
(普段優しい人ほど怒ると怖いって言うけど・・・)
(やっぱりエウレディアンも只者じゃないわね)
(・・・へ?)
「・・・・・・広場に誰もいないけど・・・何かあったんですか?」
「あっ実は・・・数週間前・・・陛下が広場を封鎖するよう命じられました」
「数週間前なら・・・あっ!!」
エレニカはエウレディアンと出かけた時のことを思い出す。
「こ・・・こんなことまでする必要はないんじゃ・・・」
(あれから1ヵ月も経ってるのに・・・心配してくれてるってのは分かってたけどこんなに厳しく対処していたなんて・・・)
「姫様のことがかなり案じられたようです」
「ベルック宮殿もあんなに大がかりな措置を取るなんて一言も言ってくれなかったのに・・・)
「ホント変な人・・・」
「そうかも知れませんね。あの時私がお話しした通りでしたね」
******
「どうぞこちらへ」
『やっとこれでよく見えるな』とラウルス様が言う。
「神殿は本当に安全なんですか?」と小声でエレニカが尋ねる。
『君の恐れる者たちの力が最も及ばない場所だ』
「やっとよく見えるってことは・・・神殿ではもっと自由に身動きできるってことですか?もっと早く地上に下りて来られるとか・・・」小声で言う。
『それは君に今すぐレモルディに下りてみろと言っているようなものだ』
(チッやっぱり・・・脇役の力はともかく絶対者の力も頼りにならないなんて・・・これからもわたしは最弱マンボウのままなの?)
「姫様?」
「・・・・・・・?」
「あらやっぱり!またお会いしましたね。クラリス・アイベンと申します。姫様は恐らく私をご存じないでしょう」
(アイベン・・・どこかで聞いたことあるような・・・)
回想シーン
『アイベン伯爵・・・今日の謁見は中止だと伝えたはずだが?』とエウレディアンが話していたのを思い出す。
(あ!)
「ひょっとしてアイベン伯爵の奥様ですか?」
「あらうちの主人を覚えてくださっていたのですね!主人からお聞きしました。先日皇城で姫様にお目にかかったと!実は私も前回姫様が神殿に来られた時遠くから拝見していたのですよ」
(知らない間にどんだけ顔売ってんの?)
「偶然が重なると必然だそうですが不思議ですわ~いつかまたお会いしたいと思っていましたがラウルス様が私の願いを聞き入れてくださったようです」
『うーん・・・それは違うけど・・・』
「そうかも知れま——」
「姫様!!私の心臓が止まってしまっても構わな——アイベン伯爵夫人?」
ディエリゴが途中ではぐれてしまったエレニカを探しにきた。
「あら・・・今回も神官様とご一緒だったのですね」
「はい、当分の間ここで過ごすことにしたんです。ごめんなさいディエリゴちょっと考え事をしてたらいつの間に・・・」
「いえ・・・私の注意不足でした」
「なぜ神殿で過ごされるのですか?皇城にはお帰りにならないのですか?」
「あっ・・・ちょっと事情があって・・・」
「まさか・・・エルラド嬢が姫様に何か悪さでも・・・?」
第53話 感想
二人の仲が進展したような気もしたのですが・・・やはり神殿で暮らすことにしたようですね・・・