第52話 ネタバレ
【アリアside】
「公爵邸に?」
「はい」
(公女は貴族派で起こった問題でバタバタしてるはず・・・)
「そのままミエールの監視を続けてくれる?」
「はい!」
アリアは報告に来た男にお金を渡した。
(侍女1人処理するのに彼女が時間を割くわけがない・・・・・・
ミエールも公女も実際はそこまで力のある人ではないのかも。
たしかに以前は貴族派の首長のような存在だったし皇太子と結婚もしていたけど今はもうあの時とは全く違う展開を見せている・・・なんて考えたら期待してしまうわね)
(ミエールは公女から何と言われるのかしら?)
その後、馬の鳴き声と馬車の走る音が外から聞こえてきた。
(あれ?思ったより早く帰ってきた。なんだ・・・カインが戻ってきただけじゃない)
カインが外からアリアの部屋を見上げる。
「!」
ビックと驚くアリア。
(どうしてこっちを見上げるのよ!?)
(そうだ、カインは私のことを『そういう目』でみてるんだった。
私のことを好いてくれるのはありがたいけど)
アリアがバルコニーに出た。
(露骨なくらいの『家族』からの視線は目障りなのよ。この家門はみんなして・・・)
アリアのストールがカインの方へ落ちていく。
「あれ?アリアお嬢様のストールが・・・急いで洗濯して参りま・・・」
「いや、僕が持っていく」
******
「カインお兄様わざわざ持ってきてくださるなんて・・・ありがとうございます」
(地面に落ちて汚れたものをわざわざ渡しに来るのね・・・見てよあの表情こんな反応が返ってくることはわかってたけどやっぱり気持ち悪い!)
カイン(これを返したら急いで戻らないと)
(だけど・・・もう少しだけ・・・)
「バルコニーから身を乗り出すな。いつかお前が落ちるぞ」
「私を心配してくださるんですね」
「まあ・・・誰かが落ちるところは見たくないから・・・」
「お兄様、よかったら一緒にお茶でもどうですか?」
******
「お待たせしてすみません。着替えに時間がかかってしまって」
「あ・・・いや・・・」
カインはジーッとアリアを見つめる。
「私のせいで騒ぎになってしまいましたね」
「あれはお前のせいではない」
「お兄様はアカデミーがあったのに・・・私のせいですみません・・・」
「誰かにそう言われたのか?そうだとしてもそんなことは気にするな」
(はあ?何言ってるのよ!あんたの首は私が切ってあげるわ!ここは笑顔で・・・)
「ありがとうございますお兄様。成人したらすぐにこの家から出ていくつもりです。私がいると家門の名を汚してしまうので・・・」
「何だと?結婚もせずに出ていくつもりなのか!?修道院に入ろうと考えているのであれば僕に相談してくれ!僕が何とかするから!」
「えっ・・・そこまでしていただかなくても・・・お兄様は本当に心の優しい方なのですね。
ずっと不安だったんですけど・・・お兄様とお話したおかげで気持ちが楽になりました」
アリアがカインの手に触れる。
******
カイン「人を増やせ!侍女の1人も捜せないとはどういうことだ!」
ミエール「お兄様・・・みなさん必死に捜査してますよ・・・落ち着いてください・・・」
カイン「ふんっ」
(フフッそろそろ気づいたかしら?何かがおかしいってね・・・)
******
「お嬢様・・・今日も夜更かしされるんですか?」
アリアが書類を見ているとアニーが声をかけてきた。
「えっ?」
「最近あまり寝てませんよね?」
「そうだけど・・・早くこれを終わらせたいから仕方ないわ」
「誰かに頼まれてはいかがですか?」
「大丈夫よ」
(どこから情報を手に入れたかは知らないけど他国からも投資を頼まれているし。私自身の知識とセンスで判断しなければいけないから時間がかかるのよね・・・)
「アニー眠かったら先に寝てていいわよ」
「それではお言葉に甘えて・・・おやすみなさい」
******
(もうこんな時間・・・ベリーの件も片付けなきゃいつまでも体調悪いフリはしていられないからね。今日はいつもより月が輝いて見える)
アリアがバルコニーに出ると下にはアースがいた。
(えっ・・・アース!?)
アリアとアースが驚いていると見回りの兵士も近くにいた。
(!!)
(そっちにはアースが・・・!)
「アース・・・!」
小声で呼ぶとアースがバルコニーへ飛び越えてきた。
「急にお伺いしてすみません・・・」
「誰かに見られたらどうするつもりですか!?
「こちらを置いて行くつもりだったのですが、窓に映るお嬢様の姿に見惚れてしまって・・・」
チューリップの花束を渡す。
(皇太子がこんな真夜中に花束を渡しに来てくれた・・・)
「具合はいかがですか?ずっと心配していたのですが訪客はお断りしていると聞いて・・・」
「体調はもう大丈夫です」
(それでこっそり来てたんだ・・・)
「お嬢様に会う方法を考えていたのですが気がついたら・・・伯爵邸の庭園にいました。
今回の件で思ったのは・・・いや前から思っていたのですが今のように簡単に会えない状況をどうにかしたくて・・・」
「だからこれからお嬢様は・・・僕のそばにいてくれませんか」
「お嬢様がよろしければ・・・」
「・・・私なんかがそんな・・・」
(以前から好意を持ってくれていることは知っていた。でもそれは砂時計の力があったからじゃないの?)
「お嬢様は僕のことが嫌いですか?」
「いえ・・・ただ平民出身で悪い噂ばかりの私なんかと一緒にいても・・・」
(今まで散々努力してやっと自分に自信が持てるようになってきたのにどうしてアースの前だと一気に自身をなくしてしまうのだろう・・・
違うこれは自分に自信がないわけでも彼の立場に負担を感じているわけでもない)
(ただアースに・・・迷惑をかけたくないだけ。
私は・・・自分の本当の姿が嫌いだから・・・いつからこんなことを考えるようになったのだろうか)
「僕はそんなことで人を判断しませんよ。それに・・・僕は自分の気持ちに嘘をつきたくないんです・・・すみませんこの言葉を伝えるために来たわけではなかったのですが・・・」
「いえ・・・」
(今の状況に困惑してるだけ)
「実はお嬢様を殺害しようとした人を捕まえて・・・」
(!?)
「本当ですか?」
「その内容と居場所が書かれたこちらの手紙をお渡しするために来たのですが変なことを言ってお嬢様を困らせてしまいましたね。お嬢様のお好きなようにしていいんですよ」
「私がその方に何をするとお考えなんですか?」
「それはわかりませんけど」
「何をされたとしてもそれには理由があるのでしょう」