第51話 ネタバレ
ドレッサーの椅子に座りミエールが浮かない顔で「公女様・・・」と呟く。
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【回想】
サラ『彼女を危険な目に遭わせるなんて…毒殺されるほどの【悪女アリア】を実際に見た人はいるの?』
侯爵『侯爵家はこの事件を見逃すことはできない。どうか無事に解決しますように・・・
10代後半の侍女が未だに見つかっていないということはきっと誰かが陰で侍女を操っているのだろう』
『誰かからの指示を受けたに違いない!』
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アニー「お嬢様をよく思わない方は・・・私はエマ様しか思い当たりません」
「ふむ・・・みなさんそうおっしゃいますね」
アリア(さすがアニー!噂を流すのが上手いんだから!)
「お嬢様はどう思われますか?」
「エマについてですか?エマは・・・私がいるだけでミエールに悪影響を及ぼすと考えているのではないかと思います・・・
たしかに私は平民出身だから・・・そう思われても仕方ありませんよね・・・」
「そんなことありません!」
「聞き取り調査ではお嬢様のことをみなさん褒めていらっしゃいましたよ!」と男たちが顔を赤くしながら言う。
「嘘ではありません!侍女たちもです!口合わせをしているのかと思いました!」
「ミエールからも聞き取りはされましたか?」
「いえ、ショックが大きかったようでまだお話できる状態ではないらしく・・・」
「ミエールはすぐに体調を崩してしまうから・・・
それでもエマと一番仲が良いのはミエールなのでぜひ一度お話されたほうがよろしいかと」
「かしこまりました」
「また来ようぜ」と男たちがヒソヒソと話し合った。
「アニー騎士の方々にお茶を淹れてきてくれる?果物とお菓子もよろしくね」
「そんな・・・僕たちはそろそろ戻らないと・・・」
「私のせいでお手間を取らせてしまったことが申し訳なくて・・・
外は寒いですし暖かいお茶を飲んで行かれてはいかがですか?」とアリアは騎士の手を両手で包み引き留めた。
「それではもう少しだけお邪魔いたします」
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アニー「お嬢様はエマ様が犯人だとお考えですか?」
「この件に関与しているとは思うわ」
「私もそう思います!だって・・・」
「私はエマ様の指示でお嬢様の専属侍女になったので!」
ニコニコと笑顔で言うアニーだったが慌てて
「あっでも今は仲が悪いので安心してください!私はお嬢様の味方です!」と付け加える。
「それならいいんだけど。それよりこんな寒い時期にどこからチューリップを手に入れてるの?毎日用意するのは大変じゃない?」
「あれ?てっきりお嬢様が注文されているのかと思ってました。毎朝お嬢様の名義で家に届いていたので・・・」
(えっ?てことはまさか・・・アースが毎日送ってくれてるの?)
(それともアースの『力』で直接持ってきてくれてるとは?夜中にこっそり来てたりして・・・
ここしばらく会ってなかったから少し寂しかったのよね。今日かは寝る時間を遅めてみようかしら?)
コンコン
「お客様ですかね?」
「誰かしら?」
「どちら様・・・」
アニーが扉を開けるとそこには
「カ・・・カイン様!?」がいた。
(どうして?どうしてアカデミーにいるはずのカインがここに・・・?)
カイン「・・・大丈夫か?」
アリア「・・・・・」
カインの質問にアリアが頷く。
「そうかしっかり休むんだぞ」と話すとカインは出て行った。
「今のは・・・」
「何だったんだろう・・・?」
(無言でジッと見つめられた・・・何で・・・?)
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「アカデミーの卒業式にも参加せずに帰ってきたのか・・・スーツも用意していたというのに」
夕食の時に伯爵が言う。
「ただ集まって祝辞を聞くだけですから。それより・・・直ちに事件の真相を明らかにすべきかと」
「アリアのことは警備隊に任せたから・・・」
「未だに何の進展もありませんよね。目が腫れているようだがミエールは大丈夫なのか?」
カインに心配されギクッとしたが「はい私は大丈夫です」と答えた。
(私を心配してカインが突然帰ってきたからみんな驚いてる。私を心配・・・えっ?まさか…)
アリアがカインの方に向くとビクッと驚いていた。
「!」
「エヘンッ」と顔を赤くするカイン。
(嘘でしょ?頭大丈夫?血の繋がりはないにしろ私は一応あなたの妹なのよ?さすが伯爵の息子ね。伯爵は老けていく妻が嫌になったか死んだかでお母さんに目移りしたって聞いた
でもこの状況は)
(私にとってはありがたいこと。カインが自分の手でロースチェント家門を潰すことになれば…
最高じゃない?)
「カインお兄様が私を心配してくださるなんて・・・でも私は大丈夫です。少しずつ回復してるの」
アリアの健気な姿にカインの心はズキュンとなった。そして、その光景を見たミエールは顔色が悪くなる。
(実の兄が平民出身の私に惚れるなんてミエールからしたら最悪よね。残念だとは思うけど
きっとこれがロースチェント家の本当の姿なのよ。)
(あんたが言ってた貴族の素質ってこの程度のものだったのね
素直に認めたら?ミエール)
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【馬車の中】
エマ「お嬢様、本当に行かれるんですか?」
ミエール「だってあの女を殺したらベリーを首都から追い出す計画だったのに失敗してしまったから・・・
ベリーは怯えてどこかに隠れてるみたいだし。公女様にお願いされたことだけど私にできることはもうないの。
何度も状況を説明したけど返事がないから・・・会って話すしかないのよ」
「ですが・・・私がどうにかしてベリーを見つけ出すので・・・」
「もういいって言ってるじゃない!」
(どうしてエマもお兄様も私の思い通りに動いてくれないのよ!)
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「公女様はお忙しいため本日はお会いできないそうです。後日連絡をすると・・・」
「待ちます。公女様がいらっしゃるまで私はここから離れませんから!」
「だいぶお待たせしてしまうかと・・・」
「何時間でも待ちます!そうですよねお嬢様?」
「はい!」
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「ミエールお嬢様」
「イシース様!」
「突然来られるとは思わなかったから・・・お待たせして悪かったわね。それで私に何の用かしら?」
「あの・・・」
「全て私のミスなんです!大変申し訳ございませんでした!」
「エマ・・・!」
「最後まで油断してはいけなかったのに私がきちんと確認しなかったせいで・・・」
「わざわざ謝る必要なんてないのに・・・」
「イシース様・・・!」
「自分の過ちを分かっているみたいだからあとは責任をとってくれれば充分よ」
「えっ・・・?」
「まずはこの事件をさっさと解決してしまいましょう。ベリーは今どこに隠れているかわからないのよね?」
「はい・・・」
「それなら難しくないわ」
「ベリーが捕まって余計なことを話す前に誰かが出頭すればいいのよ」
「イシース様・・・!エマ・・・エマだけはやめてください・・・」
「私は誰が出頭しても構わないわ。あなたにお願いして面倒なことになったからさっさと解決してほしいだけよ。
私の言いたいことがわかるよね?ミエールお嬢様」
「はい・・・私が何とかします・・・」
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【イシースside】
「お嬢様お手紙が届いております」
「あらそう。やっと来たのね」
(皇太子も今回の件で捜索を要請したらしいけどいつまで私を無視し続けるつもりかしら?)
「今後が楽しみだわアーステロペ」