第9話 ネタバレ
フェリックスが万年筆で空中に魔方陣を書くと魔方陣が光った。
(あれはユリアがプレゼントした万年筆?恐ろしいほど盲目的な子なのね・・・)
「フェリックスあともう一つ」
「はい、なんでしょう」
「何日かだけでもいいから幽閉塔の天気を安定させてほしい」
「幽閉塔をですか?」
「ああ、フェーズ公爵のせいでまだ閉じ込められている者もいるからな。彼らの濡れ衣が晴れるまで頼む」
「はい!」
(妙に張り切ってるわね。まぁ・・・そもそもフェーズ公爵が企んだことだから当たり前か)
フェリックスはフェーズ公爵を最も嫌っていた。貪欲で無能な上に皇帝の権限まで狙っていたからだ。ユリアの最も信頼する人がユーストであることは不愉快だが認めることはできた。
でもフェーズ公爵のことはゴミのような人間だと思っていた。公爵を憎むには十分なほどの理由があっても皇帝が彼の肩を持っていたため簡単に口を出すことができなかったのだが・・・
(今は皇帝がフェーズ公爵を切り捨てる計画を練っている。だからあんなにはしゃいでるんでしょうね・・・)
「陛下!他にやることはありませんか?」とキラキラした目で尋ねてきた。
「・・・・・・」
(貴族にいたずらしても見逃されてきた理由がわかったわ・・・)
「公爵の書類から間違った内容を探し出すように。頼んだぞ」
「承知致しました!」
(よしっそれじゃ私も。ユリアの知識のお陰でこの世界の文字も簡単に読めるようになったことだし。まずはベヌース伯爵を釈放できる資料を見つけないと・・・頑張ろう!)
******
「ベヌース伯爵は証拠不十分により釈放する!」
「塔に指示を伝えて参ります」
「ああ」
(さすがあの部長に似てるだけのことはあるわね)
部長は綺麗にまとめた1ページより長ったらしい文章の方がいいと思ってる男だった。中身より量、仕事の質より勤務時間の長さを重視する典型的な無能人間だった。
(お陰で全部読ませてもらったわ!こんなやつが上にいたから国がダメになったんだ)
「陛下、少しお休み下さい」
「ああ」
(ん?これは・・・)
「これを口にするのも久しぶりだな」
「お口に・・・合いますか?」
(そんな当たり前のことを)
このお茶は2年前までユリアが作戦を練りながら楽しむチーナ茶だった。爽やかな香りで頭を軽くする効果があるが、茶葉を栽培し飲めるようにするまでの過程がとても難しかった。
お湯の温度や蒸らす時間に気をつけないといけない上に加工を間違えば吐き気がするほど苦い味になるが正しく煎じれば爽やかで程よい酸味の味がする素晴らしいお茶になる。フレーナはユリアのために自ら茶葉を栽培し乾燥させた。
(現世にもこういうのがあったらあんな大量にコーヒーを飲まなくてもよかったのに!このお茶一杯の手間を考えるとフレーナに拍手を送りたいわね・・・
全てはユリアたった一人のために作ったんだもの・・・)
「お前の茶が口に合わないはずがない」
「陛下・・・」
「この味を忘れていたとは大変もったいないことをしていたな」
コンコン
「陛下・・・!近衛兵隊長がお見えになりました」
「わかった」
ガチャ
「来たか。座りたまえ」とユリアが笑顔ですすめる。
「何を考えているんですか・・・?」
「何のことだ?」
「ベヌース伯爵の釈放命令を下したと聞きました」
「ああ、フェーズ公爵の資料を見ると証拠不十分だったからな。それに何か問題でも?」
「本当にそれだけの理由ですか?」
「他に理由があると言いたいのか?」
「・・・・・・」
(混乱するのも無理ないわ。変わってしまったユリアはこんなことするはずないもの!彼が苦しんでいるのはわかるけど・・・
残された時間はあと2日・・・どんな手を使ってでも生き延びてみせる。それがユーストを混乱させることになったとしても!)
第9話 感想
ユーストの信頼を得るのは難しそうですね。めちゃくちゃ怪しまれているようです。