第38話 ネタバレ
「ママ ママ!次は『あたしたちの』を開ける番だよ!エリアス兄様まで開けたから!」とレイチェルが言う。
「え?『あたしたちの』って?」
「それは~聖誕祭の贈り物!!ママの分!ママは大人だから聖女様から贈り物をもらえないでしょ?だからあたしたち2人で作ったの!」
「兄様たちが模様を決めて僕とレイチェルが縫ったんだよ!」
「あたしの方がレオンよりも少しだけたくさん縫ったけどね!」
「あら縫ったってことは刺繍入りのハンカチみたいね・・・」
(う・・・うさぎと1匹とライオン4匹・・・!!
なんでうさぎ・・・?子供たちの目にさえ私はライオンに囲まれた草食動物のように見えるのかしら・・・?)
キラキラワクワクして見つめる双子にシュリーはハッとして
「あ・・・ありがとう!本当に可愛いハンカチね」と双子たちを抱きしめて言う。
(それでも心を込めて作ってくれたのは嬉しいわ)
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「・・・エリアス様、失礼しま・・・!」
メイドが洋服を持って行くとエリアスは弩弓を持ちポーズを決めていた。
(エ・・・エリアス様が・・・大喜びしていらっしゃる・・・!さっきまで何ともないフリをしていらっしゃったのに・・・!)
「エリアス様お召し物をこちらへ置いておきますね」
「!?」
メイドが声をかけるとエリアスは驚きバタバタと弩弓を隠す。
「何か必要なものは・・・」
「なななな何だよ!!必要なものはない!着替えも1人でできるから!!」
「では・・・何かございましたらお呼びくださいね」
メイドは部屋を出ると「ふふふ」と笑った。
(エリアス様がとても喜んでいらっしゃったと奥様にお伝えしよう。1人で踊ってたことは内緒にして・・・恥ずかしがるだろうから・・・)
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【皇太子side】
「ふぅむ、どうだい?ちょっとやり過ぎかな?髪は下ろした方がいいだろうか?」
「聖書の内容に集中なさってください」
「はあ~着替えている最中にそんなことできるわけがないだろう」と皇太子がため息をつく。
「そもそも聖誕祭当日にまで授業だなんてひどいじゃないか一日くらい休んだっていいだろうに」
「なりません」
「ちぇっ枢機卿たちも今日の宴に参席するんだろう?準備はしなくていいのかい?」
「・・・私は行きません他に著名な枢機卿たちが顔を出すでしょう」
「分かった。聖職者にとって宴は毒だと考えているんだね?僕にとっては気を遣う相手がいなくなるのはいいことだけど。最高級の布と宝石だけを選んだものだけどシュリーが気付いてくれるかなぁ?今日は皇室図書館を見せてあげないと!」
「毎回申し上げていますがシュリー・フォン・ノイヴァンシュタインのことは侯爵夫人と呼ばなければなりませんよ」
「呼び方くらいいいじゃないか年だってそう変わらないんだし。それにこう呼ぶ方がシュリーも喜ぶと思うよ」
「無理やり押し付けられた上辺だけの名前よりは本当の自分の名前を呼ばれる方がね。言っただろう?彼女に関しては僕のしたいようにするって」
「・・・ニュルンベル公爵に続いて今度はノイヴァンシュタイン・・・首都の父母という父母を皆収集なさるおつもりですか?」
「まあ、それも悪くはないよね」
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「やめなさい!!レオン!レイチェル!!大人しく座っていないとダメでしょう!ただでさえ揺れる馬車が乱高下してるじゃない!もうすぐ新しい年が明けるっていうのにこんな風に騒いでばかりいたら紳士淑女になれないわよ!」
「「!! なれるもん・・・!」」
「じゃあ、どんな時も気品を持って行動しなきゃ」
「うん・・・」
シーンとするがレオンとレイチェルはまたすぐにツンツンとお互いを突っつく
「兄貴だけそっちに座ってずるいだろ!俺と席替われよ!!」
「嫌だ」
「替わってくれなきゃ兄貴の服に吐くからな!」
「あ?」
(あらゆる出来事を経験して過去に戻ってもこの時期が大変なのは変わらないのね・・・!私の思い通りになるようなことじゃなかった・・・)
「あ!ママ!あそこ見て!皇宮だ!」
(・・・——今はまだ分別のない子供たち。あと2年も経てば見違えるほど大きくなって今のように1台の馬車に皆で座ることなど想像もできなくなるわ。やっと仲良くなれたせいかしら。早く大きくなってほしいと思いながらもその時になればきっと寂しいのだろうと思ってしまう)
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「僕皇宮に来たの初めてすごく大きい・・・」とレオンは見上げて言う。
「シュリーと兄貴以外は皆初めてだろ」
「ジェレミー宴の順序を確認してくる間、弟妹たちのことを見ていてくれる?」
「ああ」
シュリーが離れてすぐ男がジェレミーに声をかける。
「おや・・・ジェレミーじゃないか!」
「!」
「私だよ!」
「ミュラー叔父上」
(叔父上はずいぶんと頭が寂しくなられましたね)
「しばらく見ない間に大きくなったな!その・・・ジェレミーに訊きたいことがあるのだが、家の中で何か心配事はないかな?」
「心配事ですか?」
「何も問題はないかと訊いているんだよ。お前たちの継母はまだ若いから心配になってね」
「ああ、うちは今それはそれはとてもとっても平和すぎて退屈で涙が出そうなくらいですよ。なぜですか?叔父上も騒ぎの種を作られるおつもりですか?」
ジェレミーが叔父を見つめると叔父は
「い・・・いや!間違いなくうまくやっているだろうとは思っていたとも!何を言っているんだ!おっと!呼ばれているようだな!また会おうジェレミー!それでは!」と逃げていく。
「ミュラー伯爵じゃない。私がいない隙を狙ったのね・・・何かおかしなことを言われたりしなかった?大丈夫?」
「うん大したことじゃなかったよ。いきなり家の雰囲気はどうだって訊いてくるから最高に良いって答えてやった」
シュリーはジェレミーの肩をポンポンたたく。
「何だ?褒めてるのか?」
「ふふふ、もちろん!」
第38話 感想
枢機卿は皇太子の裏の部分を知っている感じでした。宴でも何か騒動が起きそうですね・・・