第39話 ネタバレ
(今まで気づかなかったわたしがバカだった。お父様の手を握るだけで元気になってた身体がなかなか回復しないのもおかしかったし・・・)
(何かに触れたわけでもないのに身体を突き刺されるような痛みと・・・惑わされるように引き寄せられるあの変な感覚。確かデカルブは暗黒の魔法の中でも『生きた者を惑わす魔法』を得意としていた。そしてそれを彼に教えたのは母親のソルレアだから・・・)
(ユゲ―ル広場の結界石とベルック宮殿の枯れた花はあの女の仕業だったんだ!)
「わたし・・・本当に大丈夫なんだよね?まさかベルック宮殿の花みたいにどんどん枯れちゃうんじゃ・・・」
『君がここまでついていないとは・・・まあ、どうせ君はこの地の人間でもないんだからこうなる運命だったと割り切ったら少しは楽になるだろう』
「全然慰めになってませんけど?」
『許されない子よ、そんなにこの地で暮らしたいのか?』
「死にたい人なんているわけないじゃないですか!」
『そういう意味じゃない君がここに来る前に暮らしていた元の世界に戻りたいとは思わないのか?』
「元の世界・・・?元の世界は今よりももっと悲惨だと思いますけど?それにどうせ帰る方法も分からないし」
『それなら・・・私の司祭になってみるのはどうだい?』
(司祭?)
『・・・君の身体のことなんだがどうも私の祝福を受けているような気がするんだ』
「そりゃ・・・洗礼を受けてるので」
『そうか、なら問題は君の身体ではなく魂だということ・・・君はこの世界の人間ではないから私が君の魂を祝福して『許し』を与えることはできない。だが君を私の司祭にして地上で私の代理となる権限を与えることはできる。そしたら今よりは身の安全を確保できるはずだ』
(つまり・・・魂までは祝福できないけ、どわたしの身体を守れるくらいの神聖力なら与えられるってこと?)
「やります!今すぐやらせてくださいっ!」
『・・・だが問題がある』
「問題?」
『君に神聖力を与えるためには私が地上に行かなければならないのだが私は10年に一度しか地上に降臨できない』
「長くて5年って言われてるのに10年も待てるわけないじゃないですか!」
『10年後とは誰も言っていない確か最後に地上に行ったのが5年前だから・・・あと5年だ』
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(明日死んでもおかしくない状況だから5年も10年も変わらないっつーの。花咲く春にあんたもわたしも枯れちゃう運命なのね。お父様が皇城にいたら今すぐ会って相談してたはずなのに・・・一体いつ帰って来るのよ)
「姫様・・・身体も弱いのに外にいたら風邪引きますよ」
(気のせいかも知れないけど身体中が痛いし・・・宮殿に入るのも何だか怖いよぉ。でも本当に風邪引いたら回復不能になっちゃうかも知れないからとりあえず部屋に戻った方がいいかも)
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「火は自分で消します」
「分かりました・・・では姫様お休みなさい」
(・・・絶対眠っちゃダメ!眠ったら地獄を味わうことになるかも知れないから。今夜だけ何とか乗り切って朝一でお父様に会いに行こう。てゆーか全然眠くないし!)
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【数分後・・・】
「こはるの面倒を見るって約束したじゃない!」
「何の話だ?俺は当分の間だけだと言ったはずだ」
「そんな無責任な!」
「無責任?遺産もろくに残ってないし・・・とにかく俺は無理だ!」
(あれ?ひょっとしてわたし・・・眠っちゃったの?目を閉じた記憶も眠った記憶もないのに・・・でも夢の中なのにちゃんと意識はあるんだ。眠っちゃダメだって気持ちが強かったせいかな?)
「正直もう15歳なんだから一人で大丈夫なんじゃないのか?」
(これがわたしを苦しめた悪夢の実体か・・・一体いくつの頃の記憶なんだろう。思ってたよりどうってことないわね正直この夢も見飽きた感じだし・・・こんな夢もう全然平気——・・・)
『こはる、こはるどこに行くの?一人で大丈夫だって言ったじゃない』
「はっ・・・!」
『そうでしょ?まさか・・・嘘だったの?』
(お母さん・・・!?)
『早く答えなさい!!・・・一人が嫌ならお母さんと一緒に行ってもいいのよ?お母さんと行きましょう。そうすればすべて解決するわ。さあ早く・・・もう二度とあなたを一人にしないわ』
(これは全部ニセモノなんだから・・・)
「・・・冗談じゃないわよ」
(絶対に惑わされちゃダメ!!)
『早くお母さんと行きましょう。素敵なところに連れて行ってあげるわ』
「は・・・放して!!」
『こはる!待ちなさい!』
(あの女の言うことに耳を傾けちゃダメ!)
『一体どこに行く気!?こはる!!』
「わたしの部屋に決まってるでしょ!」
『お母さんと一緒に行きましょう!』
「こんな紛らわしい魔法を使うなんて・・・ソルレアのバカァァ!いくら美人でも絶対許さないからね!早く目を覚まさなきゃ・・・こんな変な夢に惑わされるなんて絶対イヤ!!」
『姫』
「!!」
「へ・・・?」
『そんなに慌ててどこに行く?』
「うわぁん、お母さんの次はお父様??」
『エレニカ姫!』
「お父様はわたしのこと名前で呼ばないし、いくらマネしたって騙されないんだから!」
(やっと分かった。この悪夢はわたしの『弱点』を狙ってる・・・わたしが最も知られたくないもの最も嫌いなもの。そして最も・・・奪われたくないもの)
(お父様、陛下・・・エウレディアン!今すぐお父様の声が聞きたい・・・一体どこに行っちゃったのよ!いくら呼んでも夢の中にまで助けに来てはくれない。だから自分の力でここから脱出しなきゃ!)
「絶対許さない・・・」
暗い夢の中を走り続けるエレニカにやっと光が見えた。
(出口だ!あそこに行けばこの悪夢から出られるはず!!)
出口を目指して走りぬけたエレニカは手を伸ばす。
『た・・・助かっ———あれ?』
(なんか声が変・・・?ベッドに誰かいるのかな?)
『・・・・・・!?!?』
(ど・・・どうなってるの!?)
ベッドには苦しそうな顔で眠るエレニカと横には透明だけど本来の姿のエレニカ(こはる)がいる。
第39話 感想
悪夢から脱出しようとしたエレニカはなんと、幽体離脱をしてしまったわけですが・・・どうなるのかな?