第23話 ネタバレ
「僕も君を『バレリー』と呼んでもいいか?」とカイロスは尋ねた。
「え??どうして??」
「男女の関係には段階というものがあると聞いたからだ」
「いやいやだからどうして私と・・・」
(何なのこの人?セレニアを『ラン』と呼ぶためにお前を練習台に使いたいっていうこと?)
「僕もこういうことは初めてだからよくわからないしなにかとミスすることも多いと思うけど・・・だけど僕たちの関係を発展させるために努力しようと思ってる」
「それは・・・」
「僕は君が先に歩み寄ってくれて本当にうれしいのに・・・ダメなのか?」
(まぁ私と皇太子の他に強そうに見えて実は見掛け倒しなこの公爵の恋愛相談に乗ってくれる人もいないだろう)
「・・・まぁいいですよ名前を呼ぶくらいは・・・」
「君も僕のことをカイロスと呼んでくれ」
「はぁ??あぁセレニアもカイロスって呼んでるから私もそうしろってことですね?」
「そうだセレニアも僕のことをカイロスと呼んでいる。だからバレリーも僕のことをそう呼んでくれ」
「ええ・・・そうしますね」
(もうバレリーって呼んでるのっ??疲れる・・・どうにもウザい提案だから、しばらくこの人と会わないようにしようと心に決めたけど)
******
「お嬢様、元老院から新しいドレスが届きましたよ!お嬢様・・・?お疲れのようですね」
(わざわざ避けるまでもなく婚約式の日まで一度も公爵に会うことはなかった
・・・私にとってはうれしいことのはずなのに何だろう?妙に気になるこの感じは・・・)
「誰か待っていらっしゃるんですか?」
******
「今まで僕はあまりにも何も考えずに突っ走ってたようだから自制することにした」とカイロスが言うとビクトール補佐官は
「・・・お気づきになられてよかったです」と話す。
「ロマンス小説によれば女はセクシーな男に惹かれるらしいがボルシェイク公子に手紙をもらってからこの何日間かずっと悩んで自分の勘違いに気づいたんだ」
「あぁボルシェイク様の弟君のことですね!確かまだ12歳だったと・・・いかがお過ごしですか?僕はボルシェイク家の・・・婚約式の出席について・・・」
ロックス補佐官がバレリーの弟マーシャルからの手紙を読む。
******
【マーシャルからの手紙】
姉は誰に対しても簡単に心を許したりしないので冷たい人だと誤解されやすいのですが本当は誰よりも温かい人です。公爵様が本当に信頼できる方なら姉も心を開いて優しく接してくれると思います。
姉のことを悪く思わないでください。どうかよろしくお願いします。
******
「人にはみんな個人差があるということを考えていなかったのだ。この間の失敗から学んだのは彼女はセクシーな姿と突然の接触を無礼だと思うらしいということだ。おそらく彼女は身なりがきちんとして落ち着いた人が好きなんだろう。ということで落ち着いた態度で婚約式に臨もうと思う」
******
【公爵の婚約式】
表面上はお似合いの若い男女の門出を大人たちが集まって祝う席。しかし実際には偵察やスパイ陰謀に策略など綱渡りのような場だということを知らない者はいない。
「公爵には実は他に恋人がいるんだって?黒髪の・・・」
「ものすごい美人って聞いたぞ」
「婚約相手は公爵家じゃなくて伯爵家の娘らしいわね。セレニア・ホーウィンが相手だって公にすることはできないから、ただ操り人形の役目をする女が必要だったんでしょ」
「気の毒に・・・」クスッと笑う。
「ボルシェイクご令嬢がご入場されます」
主役たちの動き表情それらを何一つ見逃すまいと集中している彼らの頭の中ではそろばんがパチパチと弾かれている。
そして最後にわかるのだ。セレニア・ホーウィンをわざわざ確認するまでもない。
「本物はこっちだったのね・・・ちょっと・・・ムレア?」
「よくもあの女・・・カイロスお兄様を・・・!」
第23話 感想
やはりぶれない二人でしたね。そして新たな難関がバレリーにおとずれそうな感じに終わりました。