第21話 ネタバレ
「突然お邪魔してごめんなさいセレニアさん」とバレリーが言う。セレニアは嬉しそうに「わざわざおいでいただいてありがとうございます。待っているとは言いましたけどこんなにすぐ来てくださるなんて思いませんでしたわ!」と話した。
(よく言うわ早く来いと言わんばかりに急かしたくせに)
「もしかして大事な用事の最中に来てしまったんじゃないかしら・・・」
「いいえ!ただ軽い運動をしていただけです。私はここに来る前にもいつも剣術の鍛錬をしながら生活していたんです」とセレニアは話す。
「あ・・・」
「私がお持ちしたお茶はお飲みになりました?」
「はいおかげさまでぶつけたところはずいぶんよくなりましたわ」
「私が暮らしていた世界ではお茶を淹れることも人として重要な仕事の一つでした。私あの世界のお茶がとても好きだったんですけどこっちの世界でも似たような材料を見つけたんです。だからカイロスに頼んで何かと手に入れてもらったんですよ」とセレニアが語る。
(露骨に自分が以前暮らしていた世界をアピールする言い方、希望に上気した表情この人何かを期待して私に探りを入れてるんだ。『早く言ってみなさいよ』って
期待させたままにするのはよくないしかといって私に危害を加える虎が誰かもわからないこの状況で私のすべてを見せてしまうのは危険すぎる。
それなら方法はただ一つまずは先制攻撃だ!)
「どうしてこの世界に来ることになったんですか?」とバレリーが尋ねる。
「・・・やっぱり、やっぱりあなたは私に起こった現象をご存知なんですね。ずっと知りたいと思ってたんです。あなたの正体をこんなとんでもない現象を知ってるのは私をこの世界に次元移動させた張本人しかいないはずだから・・・あなたもしかして——」セレニアの考えにバレリーは驚く。
「おっ落ち着いてください!絶対に私じゃありませんから!!私はただ」
バレリーが慌てて訂正しようとした時、座っていた椅子が後ろに傾き倒れそうになるが、セレニアが背中を支えて受け止めてくれた。
支えながらセレニアは「あなたもしかして魔法使いなんですか?この世界には魔法使いという超能力を持った者が存在すると聞きました」と尋ねる。
「ち・・・違います私はそんなことできませんよ!!私がその現象を知っている理由は・・・わっ私って想像力が豊かなんです!!帝国で一番強い騎士ともやり合える実力者なのに誰もセレニアさんの正体を知らないこととか空から落ちてきたらしいという話とかそんなウワサをもとに想像したんですよ!」
「推理力に長けていらっしゃるのね。それなら私の話をお聞きになって一緒に考えてくださいませんか?ご想像されたように私は違う世界から来ました。言葉どおり空からストンと落ちてきたんです。どうやってここに来たかもわからないので元の世界に戻る方法も知りません」
「そんな・・・」
(こういう場合ってファンタジーの世界ではなんていうんだっけ?神の啓示?)
「もしかして神様に会ったことあるんですか?」
「え?元始天尊様のことですか?それとも西王様ですか?竜王様?河伯様?」
(そうだ世界のジャンルが違ったんだ・・・)
「いえ、ちょっと違うみたいですね・・・」
「・・・もしかしたら神様には会っているのに私が覚えていないだけかもしれません。ストンと落ちてくる前の記憶がすっぽり抜けているんです。誰かがいたんですが・・・笑ってい・・・」
セレニアは思い出そうとしたが頭痛がしてむせた。
「大丈夫ですか?」
「すみません頭痛がおさまらなくて・・・師匠・・・」
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【セレニア回想】
『ラン驚いてしまったのか。こっちにおいで誰がお前をそんなに怖がらせたんだ?私が罰を与えてやろう。大丈夫私がついているから』
セレニアが子供の頃、泣いているセレニアを師匠が抱き寄せて背中を軽くトントンたたき落ち着かせてくれていたのを思い出す。
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今はバレリーが心配そうに背中をトントン叩いてくれていた。
セレニアは言う。
「・・・ランって呼んでくれませんか?」
第21話 感想
セレニアがどうやって次元移動してきたのか気になります。何か使命があるのかな?でも前の世界には戻れないような気もしますが・・・