第24話 ネタバレ
「病気になって頭までおかしくなったんだってさ」
「うちの父様もそう言ってた。一体どこが偉い貴族なんだ?あの黄色頭はやたら威張り散らしてるけど」
「侯爵夫人だっておかしいよな。歳だって俺たちとほとんど変わらないじゃないか。やっぱり夫がすぐに死ぬことを分かってたんだよ。だからあんな年寄りと結婚したんだろ」
両親をバカにされたジェレミーは怒り、悪口を言っていた少年の胸ぐらを掴んだ。
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【回想】
「お帰りなさいませ旦那様。長旅でお疲れでしょう?」
「いや大丈夫だよ」
「保養地へ行かれた奥様がお会いできずに残念だと伝えてくれと仰っていました」
「ああ私も残念だ。今回の出張は長かったから積もる話もあっただろうに」
「悪いなジェレミー少しだけ待っていておくれ」
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「師匠として新しく来た皇室の騎士はどうだ?」
「・・・・・・強いです」
「アルベルンとエヴァレットもとても実力のある剣士だが皇宮に所属する者からはまた違ったことが学べるだろう誠意を持って言われることをよく聞きなさい。そういえば・・・エリアスは母親について行ったようだな」
「はい・・・ものすごく駄々をこねていました」
「アリーチェが困っていただろうな。おまえの母アリーチェは平野を駆ける姿が最も光輝く人だった。どこまでも広がる草原の中で馬の上に乗ってこそ息をすることができるのだと言っていた。しかし帝国領土の戦争がその光を奪ってしまった。だから遠いところで過ごす彼女をどうか恨まないでおくれ」
「・・・前にアルベルンが・・・僕の剣の才能は母上の血筋を受け継いだものだと言っていました」
「そうだ。ライヒ家は誇り高き武人の家門だからな。だからといってお前も必ず騎士にならなければいけないわけではない」
「・・・なりたいです。父上のようにたくさんのことをやり遂げるのは僕には難しいけど・・・剣は好きだから。皇室騎士団に入って母上とエリアス レイチェル レオンを守れるようになりたいんです。それが僕の夢です」
「お前のことを誇らしく思うよジェレミー」
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【現在】
「病気になって頭までおかしくなったんだってさ」
「だからあんな年寄りと結婚したんだろ」
ジェレミーは悪口を言っていた少年を殴った。そこへ、エリアスが止めに入りレオンやレイチェルも「兄様!やめて!!」「ママが騒いじゃダメって言ったでしょー!!」と止めていた。
ザワザワするなかシュリーは駆けつる。
(ニュルンベル公子が相手じゃない・・・それにエリアスがジェレミーに加勢せずにむしろ必死に止めようとしているということは・・・!
ジェレミーが本気で怒ったんだわ・・・!
「一体何の騒ぎだ!!」
遅れてニュルンベル公爵も喧嘩の現場に到着する。
「よくぞ聞いてくださいました!!ささいな言いがかりをつけられたからといってうちの息子に襲いかかってこんなひどい怪我を負わせるなんて!!この不始末をどう謝罪されるおつもりですか?ノイヴァンシュタイン夫人!!」
(ささいな言いがかり・・・?)
「ノラ!一体何があったのか説明しなさい!!」
「・・・・・・」
「・・・・・・!」
「あなた!」
「公爵様、子供たちの争いに当惑されるお気持ちは分かります。でもこの部屋で起こったことは少し複雑であるように思えます。なので私にも1つ質問をさせてください。うちの子が手を出すきっかけとなった『ささいな言いがかり』それが一体どんな内容だったのかをどうか皆様の前で堂々と答えてくれませんか?それを聞いた上でジェレミーに明らかな非があればお望み通り丁重に謝罪させていただきます」
(大丈夫よジェレミー今日のような日にあなたが怒りを爆発させる理由といえばただ1つ困ったように辺りを見回している誰もがただの興味本位で私とヨハネスを嘲笑ったためでしょう。訊いたところで答えられるはずがない。誰だって黄金の獅子を敵に回したくはないだろうから。もちろん18歳のあなただったら我慢していたかもしれないわ。でもあの時のような1人で耐えて耐えて耐え抜いて心の澱として残ってしまうようなことにはしたくない)
「——皆様静かになられた様子を見るにこれ以上の言葉は必要ないようですね一家を率いるには若すぎる歳ではありますが私は耳を塞いで黙って立っているだけのかかし人形ではありませんどうかお子様方と共にお引き取りください私の屋敷で私の家族を侮辱されることは我慢なりません・・・謝罪の手紙はお送りいただかなくても結構ですわ」
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急激に襲い掛かる疲労感に頭の中だけでも倒れてしまいたいと考えるシュリー。
(パーティーは再開されて・・・このままいけば最後まで予定通り順調に進むはず・・・)と考えるシュリー。
でも・・・
『これにて失礼させていただきます』とニュルンベル公爵は帰ってしまった。
(最後までいてくださると思ったのに。やっぱりどこか慌てて帰っていったような感じよね・・・)
「兄貴探してんだろ?2階のテラスにいたぜ。俺が外の風に当たって頭でも冷やしてこいって言ったんだ!」とエリアスが教えてくれる。
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「ここにいたのね。考え事をしていたの?」
「・・・いや・・・エリアスの奴に閉じ込められたんだ」
「2階で喧嘩が起こったって聞いた時はてっきりあなたがニュルンベル公子と争っているのかと思ったわ」
「・・・あいつ途中で加わってきてはじめはボケッと突っ立ってたのに」
「あなたの味方になってくれたの?」
「・・・味方というほどじゃないけど」
「・・・ジェレミーあなたがどんな気持ちで令息たちにつかみかかったのか分かるわ。でもそんな小さな波紋が時にはとても大きな波となって返ってくることがあるの。だから1つだけ約束してちょうだいこれからは拳の代わりに——」
シュリーはジェレミーの手に触れる。
「何なのこの手の冷たさ!まるで氷みたいじゃない!!いったいいつから外にいたの!?」
ジェレミーの手の冷たさに驚き急いで屋敷の中へと連れて行く。
その時、ヒソヒソと声が聞こえた。
(?どこから声が・・・)
気になったシュリーは声がする方を見る。バシッと叩く音が聞こえ何かをシュリーは目撃した。
第24話 感想
ジェレミーの喧嘩騒動がまた起きたわけですがなんとかいい感じに治めることができたようでした。次はなにやら、シュリーが何かを目撃したようですね。