第28話 ネタバレ
「うはははっ!!脱出成功~!!」
「気を抜かないで!まだ敵陣の中なんだから!!」
(外まではまだ距離がある。下の階の騎士たちが領主の親衛隊と合流したら面倒なことになるわ!)
「うははは!!シャバの空気うめぇ!」と呑気に喜ぶ巧。
「うるさいってば!!死にたくなきゃ大人しく言うこと聞きなさいよ!!」
「わ・・・分かったよゴメンって・・・」
(何よりも一番ムカつくのはこれよ・・・あきらかに私より上位職業のくせに人を子バカにしたようなこの態度・・・!!)
「ところで・・・あそこの奴らってやっぱ敵だよな?」
「ん?りょ・・・領主の親衛隊!!」
「貴様ら!!あれだけの数の兵士と騎士を全て倒したのか・・・!?」
ウィンストーン領主のロー男爵が兵士を連れて現れた。
「あんなに大声で騒ぐから・・・」
「あんたのせいだっつーの!!」
(こいつらを逃がしたら間違いなくステイム伯爵に告発されてしまう!それだけは避けねばならない!)
「絶対に逃がすな!!」
「ひいぃぃっ!!ユーフェミア何とかしてくれよできるだろ!?」
「・・・・・・!?」
(この・・・まだ弱いフリをするつもり!?怒鳴りつけたいけど今は我慢・・・!ここは閉ざされた地下じゃない野外・・・!思いっきりぶちかましてあげるわよ!!)
「〈魔王の炎尾〉!!」
「!!」
「グッ・・・!!なんて威力だ・・・!し・・・親衛隊が・・・一撃で全滅しただと・・・?」
「苦労して溜めたスキルも全部使い果たして・・・人をからかってばかりいる男のせいでムカついてたけど・・・おかげでだいぶすっきりしたわ。ありがとうロー男爵。でもさっさとこんな城からおさらばしたいの一緒に来てもらうわよ」
(怖えー・・・怒らせたらやばいタイプだ)と巧は思う。
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「ついに完全脱出だ!!」
「お疲れ様でした」
「え?」
(メロ商団ラビット!?)
「ラビット!助けにきてくれたんだな!!」
「・・・・・・!」
(あっ・・・そうか!メロ商団と領主はグルだってことをすっかり忘れてた!!まだ終わったわけじゃなかったのか!!)
「後ろにいるのが用意してくれた人たちですか?」
「ええエリナさん」
(そういえばユーフェミアもメロ商団に雇われたんだったよなあれ・・・?それじゃなんで俺のこと助けてくれたんだ?クソッ・・・一体どうなってんだ!?俺意外全員メロ商団の仲間じゃねえか!!このままやられてたまるかよ!
今の俺はレベルに比べてステータスはかなり高い!入手困難な称号も4つもある!敵は大体10人くらい・・・重装備じゃないのは幸いだな。でも防御アイテムがないから・・・残りのステータスポイントで攻撃力と防御力を高めないと!)
能力値ポイント150を筋力に分配しました。筋力が316になりました。
能力値ポイント90を体力に分配しました。体力が334になりました。
(これでも勝てそうにはないけど・・・他に方法がない!!)
ステータスを高めてもなお緊張しているグリードだったが実のところ彼は非常に強くなっていた。一般的な45のステータス総合値は500未満。しかしグリードのステータス総合値はなんと1300以上!『理想の短剣』まで装着したグリードは現時点で・・・レベル100クラスの戦士たちよりも強かったのである。
しかもこれまでの戦闘相手が皆自分よりも強かった今までの経験—それが彼を異常なまでに過小評価させていたのだ。
(チクショウ・・・きっと死んじまうだろうけど・・・こうなりゃ捨て身で・・・!!)
「ラビット!!何をしている!!その悪魔のような女と一体何の話をしているんだ!早くこの縄を解け!!」
「え?」
「もう私はメロ商団の人間ではありません。あなたとヴァルモンを告発するつもりですので大人しく従ってください」
「まさか裏切るつもりか!?ただの商人ごときが正義の味方気取りか!?」
「私は商人ですので当然 利益を最も重視します。あなたに賭けましょうグリードさん」
(え?)
「あなたの能力があれば素晴らしい作品を作ることができますが1人で利益を引き出すには限界があるでしょう。私と手を組んでいただければ中小商団レベル以上の成功を手にできる自信があります。私の手腕と経験を賭けましょう」
(俺を救出したのはそれが目的だったのか?)
「でもなんでわざわざ領主と商団を裏切ったんだ?」
「ウィンストーンの象徴であるカンさんの鍛冶場からスタートしたいと思っているのです。暴政の元凶を断って市民たちの信頼を回復しなければならないでしょう」
「急がないともう時間がありませんよ」
「えぇ。詳しい計画は商団が片付いた後でお話します。あなたを大富豪にしてさしあげますよ」
「ちょっと待って。まさか忘れてないわよね?ユニーク等級のオーブを作ってくれるって約束」
「忘れるわけないだろ?その代わり製作方法と材料はお前の方で用意してくれよな」
「・・・なんだかやけに素直ね」
「約束だからな当然守るさ」
(タダで製作方法を提供してくれてありがとよチビ!)
「それじゃ製作方法が手に入ったら連絡するわ。結構楽しかったわまたね!」
(ふう・・・これでやっと終わりか?疲れたしログアウトするか・・・でも中小商団の収益ってことは中小企業レベルってことだから・・・)
(これで俺も金持ちの仲間入りだ・・・!!)
「グリードさんはどこかあなたを怖がっている様子でしたね城の中で何かあったのですか?」
「はあ・・・怖がってるだなんてとんでもない!ふざけてるだけですよ。あの男領主の騎士さえ1対1で倒すほどの実力者なんですよ?」
「え?騎士よりも強いということですか?そんな・・・そこまで強い鍛冶職人なんてあり得るはずが・・・」
(・・・・・・!!ファグマ!?いた・・・!それが可能な存在!!そうか・・・あの鍛冶職人の実力と強さならばすべて説明がつく!間違いなくファグマの末裔だ!!ファグマの末裔の作品を扱うチャンスが来るとはな・・・そうなれば巨大商団を作るのも不可能じゃないぞ!!)
しかし・・・
商人としての名誉を夢見ていた彼の想像が叶うことはなかった。メロ商団はラビットとユーフェミアによって没落し商団と領主の不正はステイム伯爵の知るところとなった。ヴァルモンとロー男爵はフロンティアへと送られステイム伯爵に処刑されることで事件は一段落した。
しかし・・・
その過程でラビットにもまた10年の懲役刑が下されたのだ。ステイム伯爵がメロ商団の悪行に関わった全ての者を許さないほど厳格であることは予想できなかったのである。
(告発の褒美として命だけは助かったが残念ですねグリードさん。でも・・・新たな伝説の1ページを飾ることができた!)
******
暴政が終わりウィンストーン村は豊かな元の姿を取り戻した。
「商団の参謀と世界で最も美しい女性・・・そしてとある若き鍛冶職人この3人がウィンストーンに平和を取り戻してくれたのさ」
「とても面白いお話ですね」
「そうでしょう?」
「これ・・・お話のお礼ですわ」
語り部が話し終わると女性は男にお金を差し出した。
「うわ、こんなにも・・・ありがとうございます。見かけない顔ですがウィンストーンに来られたのは初めてですか?」
「今後は度久お会いすることになると思いますわ。これからも面白いお話をたくさん聞かせてくださいね」
そして・・・
ストーリーはヤタン神殿での出来事から再び繋がっていく。ウィストーンの新たな領主としてステイム伯爵の娘アイリーンが赴任したことによって・・・
第28話 感想
やっとクエストが無事クリアできましたが、残念ですねせっかく金持ちになれると思ったのにラビットが捕まってしまって・・・
次の難関は、赴任してきたステイム伯爵の娘アイリーンの登場です。恨まれてたりしないか心配です。