第34話 ネタバレ
「あの子はどうしましょうか?」
「悪いが君に頼むよ」
「私には養わなければならない家族が3人もいるから・・・」
「こっちだって状況は同じですよ!」
(あ・・・忘れかけてた遠い昔の記憶だ)
「こはるももう15歳だし一人で何とかやってけるだろ?」
「そうね・・・みんなで少しずつ集めて仕送りすれば問題ないでしょう」
お父さんのお葬式の日、頭から消してしまいたい15歳の頃の記憶・・・みんなわたしを同情してくれたけど厄介者を見るような冷たい目で見てきた。わたしのことを自分たちで勝手に言うのは構わない・・・でも——陰でコソコソしないで面と向かって言ってほしかった。そういえばみんなからの視線や陰で話題にされることへの抵抗感はあの日の記憶のせいだったのかも知れない。
でもお父さんの死がわたしに与えた影響といったらそれくらいで大きな傷痕として残っているわけではない。ずっと前に亡くなって記憶にすらないお母さんと浮気ばかりして年に1カ月も家にいなかったお父さん。
(そう・・・わたしは元々『一人ぼっち』だった)
だから『姫野こはる』という名前にも愛着がなかった。誰かに愛着を込めて呼んでもらったことが一度もなかったから。
・・・てゆーかなんで今更昔のことなんか思い出してるんだろう?ホント変な夢・・・気にしないでもう一回寝よう・・・・・・
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(はぁ、やっぱり夢か・・・かなり昔の出来事がでてきたような気がするんだけど・・・何だっけ?さっきからなんか冷たいしジメジメすると思ったらすごい冷や汗・・・うなされたのかな?もともと朝弱いし目覚めも悪い方だけど・・・)
「外出したせいで風邪でも引いたのかな?」
その日以降・・・エレニカはいつもと変わらない毎日を送っている。ちょっと変わったことといったら窓際で居眠りすることが多くなったのと・・・
『許されない子よ君は本当に怠け者だな』
「!」
「・・・エレ二ノビカ・シュシュビア・ルボニです!」
エレニカの頭に変な声がやたらと話しかけるようになったってこと。
『君の名前を知らないわけではない許されない子よ』
(『お父様』って呼んでほしくない陛下の気持ちが分かるような気がする。反省してこれからはちゃんと言うこと聞こ・・・)
『おいそこの可愛い許されない子よ今日もアイツに会いに行くのかい?』
質問してくるがぐったりしているエレニカは答えない。
『・・・・・・返事くらいはしなさい』
(まったく・・・神の威厳をユーデタに置いてきたようね)
(拉致されてベルゴットに連れて来られたのもソルレアに警戒されてしまったのも理解できる範疇だったけど
いきなりラウルスが登場するなんて!)
(それに今更ではあるけど・・・地上と神界の境界『ユーデタ』と地上と地下の境界『レモルディ』そして地上も3界が本当にあったなんて・・・てゆーかラウルス様の御声って高位聖職者ですら一生に一度聞けるかどうかってくらいレアなんじゃなかったの?しょっちゅう話しかけてくるくせに質問には全然答えてくれないし・・・)
『なぜこんなに取るに足りない人間が転がり込んできたのか理解できないな』
「取るに足りないですって!?」
(わたしがイメージしてた神様とギャップあり過ぎ!!人のことからかいながら楽しんでる悪趣味な神様にディエリゴが仕えているなんて・・・ディエリゴ!司祭なんか辞めちゃった方が絶対いいよ!!)
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『あの日』以降ソルレアが皇城に現れることもなかったしラウルス様が時々話しかけてくるの以外は春風が心地よい至って平穏な毎日だった・・・ところが
「姫様・・・最近顔色が優れないようですが・・・」
(・・・ん?)
「姫様体調の方は大丈夫ですか?」
(へ?)
「姫様お顔が真っ青ですよ」
(えええ!?)
「どこか具合でも悪いのでは?」
(?????)
「お悩みがございましたら躊躇わずに何でもお話しください」
(平穏だと思っていたのはわたしだけだったの?)
「最近悪い夢を見ることが多くなったけどそれ以外は全然元気です」
「きっとストレスが原因です!今すぐ陛下に報告して皇室の医師を呼んだ方が良いのでは?ぐっすり眠れるようにお薬を処方してもらいましょう」
「そうですね私の方から陛下に報告します」
(最近ストレスを感じるようなことなんて・・・あったっけ?悪い夢にうなされることは多くなったけどそれ以外は普段とあまり変わらないし・・・そんなに体調悪そうに見えるのかな?)
(まぁ最近妙に無気力な感じはあるかも外出した時はテンション上がってまだマシだけどベルック宮殿にいる時はなぜかずっと横になっていたいんだよね・・・)
(でもそれってただ単に暇だからなんじゃないの?そういえば前回のティータイムから3日も経ってる・・・そうだ!こういう症状を一瞬で治してくれる特効薬に会いに行こう!)
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「姫、具合でも悪いのか?」
「え?陛下もそうおっしゃるんですね」
「他の人にも同じことを言われたのか?」
「はいディエリゴとベルック宮殿のメイドたちに・・・最近会う度に心配されます。わたし・・・そんなに病んでるように見えますか?」
(まさか不治の病!?)
「顔色が悪い。血色が全くない感じだ。」
「問題になりそうなものはあの日すべて処理したのだが・・・」
(あの日?)
第34話 感想
ソルレアの仕業なのか悪夢にうなされて体調が優れないエレニカの話でした。エウレディアンがいい感じに解決してくれると思いますが・・・