第12話 ネタバレ
アミーナは庭園でジャカールの兄、ナディールに出会った。
「ん?まさか錬金術を知らないのか?それに関しては今度ゆっくり聞かせてもらうとして・・・簡単に説明すると砂で金を作る技術のことさ世界中の材料や元素を組み合わせ必然を起こす方法の総称だ」とナディールは教えてくれた。
(錬金術・・・魔法は忘れ去られたのに錬金術は省庁までできるほど大きな勢力ですって?・・・!もしかして錬金術って魔法の別名なんじゃ・・・!
「その錬金術を使える人はたくさん生まれるの?」
「生まれるだって?これだから田舎者は・・・錬金術は頭脳と学費 資格と修了書さえあれば誰にだってなれるよ」
(生まれた時から決まっているのが魔法使いだけど・・・魔法使いじゃないってこと?それじゃ祈祷って・・・?)
「弟の母親にあたる人が首都のバラが見たいと言い出してね正確なことは分からないが恐らく土に何かを混ぜたんだろう種もある程度改良されたはずだ」とナディールは言う。
生物を媒体に使ってるってことじゃない!魔法では禁じられてたのに!と思ったアミーナは「錬金術は禁じられてないの?」と尋ねた。
「まあ・・・人間と妖精の改良は禁じられてるけどね だがあのガラスは妖精の骨でできているそうだよ」とナディールが話す。信じられなかったアミーナは「嘘つき」とぼやくが「好きに考えるがいいさ」とナディールは言う。
「それじゃ今度は俺が質問する番だ」
「私の何がそんなに気になるわけ?」
「そんなの山ほどあるさ噂によると誘拐されていたところを弟に助けられたそうじゃないか」
「そうよ知らない所に捨てられてたの」
「人里離れた所で生活していたというのも本当みたいだな?」
「そうよおかげで世の中のことはほとんど知らないわ錬金術もね」
「それは大変だったなそれでここにはいつまでいるつもりなんだ?」とナディールは尋ね「それはまだ・・・わからない」とこたえるアミーナ。
「どうして?あいつがわざわざ連れ帰ったぐらいだから・・・しばらくはここにいるんだと思ってたけど?」とナディールは話し、近くにあったバラを一本手に取っていた。「あの人はそう言ってくれたけれど私はまだ決めてないの」とアミーナがこたえると、ナディールは手に取ったバラの茎をポキっと折る。
「そう・・・てことはやっぱり・・・
君にも何か『力』があるようだね」
ナディールの言葉にギクッとした。まさか正体に気付かれてる?元々はランプの妖精を探していたにはこの人・・・まさか強制的に願いを叶えさせるつもりじゃ・・・動揺してるってバレちゃダメ!どうやってごまかせばいいの?と戸惑うアミーナ。
「ナディールここにいるの?」と突然声がして花の冠を付けた美女が現れる。
彼女はナディールに「西宮殿にいたのね探したのよ?」と話すと「急にここのバラのことを思い出してね。憎い相手の残した遺産でも使い道があるってことさ」とナディールは言う。女性を見て、わぁ・・・きれい・・・と思うアミーナ。
彼女はアミーナに視線を向けるが「それじゃまた」とナディールがアミーナに手を伸ばしてきたので「触んないでって言ってんでしょ!」と怒った。
帰り際、ナディールが手折ったバラを彼女が付けている花の冠に近づけて何か話していた。
「あの人がジャカールのお兄さんだなんて・・・」
疲れた様子でため息をつくアミーナ。
【翌日】
「ナディールに会ったんだって?何か変わったことはなかったか?」とジャカールが尋ねた。「温室で錬金術について教えてもらっただけよ。あと・・・すごく綺麗な人がいたの頭に花冠をかぶった女の人」とアミーナがこたえる。
「彼女まで西宮殿に来てたのか?」
「うんあなたのお兄さんを探してたみたい」
「すごく親しそうだったけどもしかしてあれがお兄さんの奥さん?」とアミーナが聞くと「そんなんじゃない」と即答するジャカール。
「プリマベーラは以前話した父の主治医だ」
「彼女が主治医だったの?あなたのお父さんの心臓を一年も維持できたってことは物凄い薬剤師みたいね?」
「薬剤師じゃなくて祈祷師だ神から神秘の力をもらい人を治すんだよ。海を渡った南方にあるエノキアの難民らしいナディールがある日連れ帰ったんだ」
アミーナはジャカールの話を聞き、ナディールが言っていた『君にも』何か力があるようだねはそういうことだったのねとどこか安心した様子だった。
「まず・・・数日ここにいてもらったわけだが何か不便なことはなかったか?」とジャカールは尋ねる。「しいて言うなら何もせずにじっとしてたのが不便だったわ」とこたえるアミーナ。「それでここにはいてくれるのか?」聞かれ「・・・ごめんなかなか決心がつかなくて・・・」とアミーナは言う。
「責めようっていうわけじゃない躊躇っている理由があるのか?」あんたのせいよ・・・願いが叶うってのにそのチャンスをみすみす逃す人がいるなんて信じられないんだものと考えるアミーナ。
「・・・真珠宮殿がここにあるからよ」
「中宮のことを言ってるのか?」
「ええ・・・昔は真珠宮殿と呼ばれていたの私にとっては思い出の場所ですぐ戻るつもりだったけど失敗したの」
「そうだったのか・・・じゃあお前がどうしてそんな存在になったのか・・・聞かせてくれないか?」
「・・・平和だったある日突然魔法使いが市民に襲撃されたの全員死んでしまったけど私を脱出させてくれた仲間のおかげで私だけが助かった・・・だけど魔法で過去に戻ろうとしたんだけど・・・失敗してこの有様よ」
「・・・建国史ではパーズに関して深く語られていないんだ無血開城だったからな」
ジャカールの言葉を聞いたアミーナは椅子から立ち上がり「パーズを戦いもせず明け渡したってこと?」と迫り聞く。「当時全ての交易の地を吸収したがその中で無抵抗だったのはパーズだけだった。その当時その地に支配勢力はおらず残っていたのは宮殿だけだったそうだ」とジャカールは言う。
(・・・なら・・・あの時どうして・・・!どうしてあそこまでしたの?魔法使いを皆殺しにしたのよ?どうして!)
「ここに残るか決めかねているなら俺の意見を言ってもいいか?お前はこの世に関わりたくないと言ったがパーズの市民が飲んでいる水はお前が降らせた雨から生まれたものだ」
「そんなの願いを聞いてあげただけよ」
「その願いは元を辿ればお前の提案だったそれに本当にこの世に背を向けた者ならば他人の願いを聞くなんて発想自体しないはずだ。出しゃばったことを言ってすまなかった。とにかくお前がどんな決断を下したとしても苦労はさせないつもりだ」
アミーナの前に身分証明書を出す。「もし置かれている境遇のせいで躊躇っているのなら俺が身分を与えてやることもできる一応これでも軍司令官だからな。適当な職位を作ればいいそうすれば市民の納得も得やすいだろうし・・・」
「・・・どうしてそこまでしてくれるの?」
「俺から先に頼んだんだ責任は取るよ」
「じゃあ・・・」