第62話 ネタバレ
『おめでとうございます陛下、やっと呪いを解かれたのですね』
(呪いが解けたのか?)
「ジンジャーそのネックレスを——」
「あっ、はいっ!」
ジンジャーがネックレスを捨て、イザナがジンジャーの目をじーっと見つめる。
「・・・・・・心が読めない。何も聞こえないぞ!!」
「!!」
「キャ~ッ、よかったです。陛下!!」
(どうやらさっきの光は呪いが解けたことで生じたものだったようだ。でも、どうして呪いが解けたんだ・・・?)
『やはり予想通りでした。イザナ陛下あなたは強いお方です。あなたの叔父さんであり私の弟子だったヘンドリック様のように・・・』
「・・・前から気になっていたんだ。どうして叔父さんは抵抗せず死ぬことを選んだんだ?いくら兄弟でも殺されることを知っていたなら何か対策が取れたはずじゃないか」
『・・・・・・ヘンドリック様は元から長くは生きられないお方でした』
「!」
生まれつき体が弱く魔法を使う際のエネルギーの消耗に耐えられないため長生きできない運命だったのです。
それでもヘンドリック様は魔法使いへの道を諦めようとしませんでした。お兄様と王国のために懸命に特訓されていたのです。
ヘンドリック様はお兄様であるアストル王が大好きでしたから・・・ところがアストル王がヘンドリック様を敵視していることを知りアストル王が差し出した毒入りのワインを口に含まれ他界されました。
『アストル王はあれほどまでに大きな愛と犠牲を払う価値のある人物ではなかったというのに。ところが陛下とジンジャー様はあのお方たちとは別の運命を歩まれました。
毒が入っているという話を聞いてもジンジャー様を選ばれましたね。はじめて誰かを心から信じようとしたその想いが陛下の呪いを解いたのです』
「で・・・でも私、毒なんか入れてません!」
「わかってる毒を入れたのはおまえじゃない。弁明をする機会をやろうアトランタ侯爵令嬢」
「な・・・なんのことだか・・・」
「どうやら俺たちを騙せると思ったようだな。俺もはじめはおまえの演技を鵜呑みにしそうになった。だがケーキを口に入れた瞬間おまえの目を見ると動揺し油断したのかおまえは真犯人の顔を思い浮かべていた」
「えっ!?ちょっと待って!?」
「俺がケーキを飲み込むとは思わなかったようだ」
「・・・・・・」
「陛下!毒入りだって知りながら食べちゃうなんて!危ないじゃないですか!ハメルがいたからよかったですけど!」
ジンジャーの言葉にイザナがニコッと笑う。
「ゲシュトに【心から信じられる人】を探せって言われたから・・・どうすれば信頼関係を築けるのか考えてきたんだ」
これまで俺は心が読めたせいでいつもはなから相手を信じようとせず心の内を読もうとしていた。そしてふと気づいたんだ。
俺はその呪いを利用していたのではと
「呪われていると悲観しながらもいつの間にかそれをあてにしていたんだよ。だから今日は心を読むのではなくありのままのおまえを信じケーキを食べた」
「おまえなら信じられると確信が持てたから。言っただろうおまえを信じたいと」
「陛下・・・」
「ジンジャーありがとう。それから・・・永遠に愛してる」
イザナがキスをする。
結局、ジンジャー様が書いた本の結末通りになりましたね・・・この二人には私が入り込む隙などない。
(お二人とも・・・おめでとうございます。どうか末永くお幸せに)
(つまり・・・陛下が心からジンジャーを信じて呪いが解けたってこと?これじゃ私ジンジャーのために苦労したみたいじゃない。
どうしてこんなことに・・・!)
『レラジエ』
「おじい様・・・!な・・・七年前に亡くなったのではなかったのですか!!」
『今おまえが見ている私はおまえのネックレスに植え付けておいた魂の一部であるのみで実態はない』
(ネックレスに・・・?それじゃ前に陛下がおじい様の声を聞いたのも・・・!)
「ど・・・どうして私には何も教えてくれなかったのですか?呪いを解く方法を教えてくれればよかったではありませんか!」
『私がネックレスに魂を植え付けておいた理由は・・・いつか陛下に呪いを解いてもらい私が犯した過ちを償うためだった。
それゆえ私の声は呪いにかかった陛下にしか聞こえないようになっていたのだ。おまえなら陛下が呪いを解く際に力になれるだろうと思いネックレスを遺したが・・・
おまえがこのような愚かなことをするとは思わなかった』
「・・・私はいつも主人公だったのです。だから未来が書かれた小説を読んだときも驚きませんでした。誰よりも主人公に相応しい優雅さと美しさを持っていると自負してきましたもの。
それなのに私ではなくジンジャーが主人公だなんて!!あの子はいずれ忘れられるただの愚かな悪役であるべきなのです!」
「ちょっと!?お・・・愚かな悪役ぅ!?」
「レラジエ・アトランタ、ジンジャーになんてことを言うんだ。罰を着せようとしただけでなく侮辱するのか?」
「・・・・・・どんな手を使ってでも・・・小説通りの展開に戻したかったのです。私も・・・私も陛下を心からお慕いしていました。ただ陛下を振り向かせたかったのです」
「本来なら私が陛下の隣にいたはずですので・・・」
レラジエが静かに涙を流す。
「レラジエ様・・・」
第62話 感想
イザナの呪いがやっと解けたようですね。レラジエは結局、小説も現実もバッドエンドなのかな?