第8話 ネタバレ
(い・・・嫌だ・・・違う、違うの!)
「青炎の主、ユスタフ・ラバン・ド・ラチアの名において死刑に処する」
「!?」
(違う!私はランじゃない!私は・・・!)
******
「!!」
「はぁ・・・うっ・・・」
夢か・・・
(汗でびっしょり。ストレスがたまっているみたい)
こっちの世界で目覚めた時、つまりユスタフに押しつぶされて目覚めた時・・・鏡には見慣れない顔が映っていて母親と名乗る人は顔をくしゃくしゃにして泣いていた。
(何とか自分が書いた小説の世界だと気づいたけど・・・)
それを実感したのは、しばらくしてユスタフが謝りに来た時だった。
ユスタフの姿に衝撃を受けた。申し訳ないとか、謝罪の気持ちなど持ち合わせておらず感情がすり減ってしまったような冷たい表情だった。
「申し訳ありません姉上」
ユスタフの袖の下には罰を受けた形跡があった。
(私が・・・そうさせてしまった・・・)
そう書いてしまった
******
(私が書いた小説のせいでユスタフだけじゃなくみんなを苦しめている)
(それにまだユスタフに信頼されたわけじゃないから命も危うい)
(いいえ、きっと大丈夫!ユスが当主になるまで猶予もあるし原作を知ってるから変えることもできるはず)
「魔石も見つけたし。もっと頑張って変えてみせる!」
(それに今日はゴールデンローズの人と会うことになってるし)
(おねがい、詐欺にだけは遭いませんよーにっ!!)
******
ラチア邸にある謁見室の中で貴人を迎えるエメラルドの間
(貴族ではないけど大切な客人だから)
「こんにちは、お会いできて光栄です」
ゴールデンローズ商会長、リベリー・リバティが来てくれた。
(支店長じゃない・・・)
「まさか・・・商会長が直接お見えになるとは思いませんでした」
「あらまあ、ラチア公爵家の情報網を甘く見てはいけませんね」
「ラン・ロミア・ド・ラチアです」
「青炎が轟きますように。リベリー・リバティです」
ラチア公爵家が送った小さな魔石と手紙。これは革命だと直感した。ラチアの魔石がもたらす世界の変化と莫大な利益。
(いろいろ手を尽くして調べた)
閉鎖的な公爵家と聞いていたけど・・・ラチアとの血の繋がりを持たず当主になった少女。
(ただ者ではないはず。それに商会長は男だと公表しているのに私のことを一目で見抜いた)
「お茶は濃いめでよろしいですか?」
「ええ、もちろん」
(破産寸前の公爵家だからと見くびったら足をすくわれるかも)
「回りくどい言い方は好みませんので単刀直入に話しましょう」
「聞かせてください」
「あなた方に魔石を売りたいと思っています」
「我が商会は公爵家との取引を歓迎いたします」
「公爵家の借金は調査済みでしょうし、それを踏まえて取引額を提示したいと思います。6ヶ月間ゴールデンローズ商会に独占権をお渡しします」
「その対価として前払金100万ベラトでいかがでしょう」
第8話 感想
自分が書いてしまったから不幸になっていると考えるとつらいですね。