第41話 ネタバレ
「これを持っていきなさい」
ジンジャーに母がワインを渡す。
「これは・・・?」
「ジュースに見えるけどワインよ。お近づきになるにはお酒を飲むのが一番。甘いけど飲み過ぎないようにね度数は高いから。お酒に弱い人が飲んじゃうと・・・」
(要するに・・・鉄のようにお堅いイザナの新たな一面が見られるってことでしょ?)
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『もう十八なんだからがんばりなさいねジンジャー』
(これを一緒に飲めば・・・いい感じになって・・・そして・・・)
母の言葉を思い出しながら悪巧みするジンジャーにイザナが声をかけてきた。
「それにしても」
「は・・・はい?」
「まさかそのネックレスを盗んでくるとは思わなかった。どうしてそこまでしたんだ?」
「それは・・・」
(レラジエがネックレスを使ってあなたに会うのが嫌だったから。昨日イザナが言ってたように・・・二人が仲良くなると私も同じような気持になりそうなんだもん。
でも・・・ネックレスだってつけてるし違うこと言ってみようかな?)
「腹黒のレラジエがネックレスがあるのをいいことに陛下に何か要求するかもしれないじゃないですか。それを防ぐため盗んできました陛下のためを思って~」
「へぇ・・・?」
「実は昨日お見せしようと思ってたんですがうっかり忘れてたんです」
「そっか、かばんの中身が気になっていたら急に中身が飛び出てきて驚いたよ。あっ!開けようとしたわけではないから誤解のないように」
「どうして中身が気になったんですか?」
(まさかかばんの中に生姜が入ってないか・・・あり得る・・・こいつ・・・また私と生姜を結びつけようとしたのね?ホントにそうなら指を生姜みたいにしてやる!)
ジンジャーはニコッと微笑みながら考えていた。
(!)
一方、イザナは心の声が聞こえてしまい思わず手がビクッとしてしまう。
「えっと、ただ生姜令嬢が普段どのような物を持ち歩いているのか気になっただけで・・・」
「はい・・・?」
「その・・・まさか生姜が入っているのではなんて思ったりしてないし・・・」
「?」
「その・・・生姜令嬢なら生姜が入っていてもおかしくないようなそうでないような・・・」
オロオロと喋り出すイザナに
「陛下・・・何をおっしゃっているんですか?」と尋ねる。
何しても生姜が浮かぶと悩まされるイザナ。
(それより・・・心が読める。予想通りこのネックレスは偽物か?だが生姜令嬢の心と態度を見る限り本物だと信じているようだ。ということは俺を騙そうと偽物を持ってきたわけではない何か手違いがあったのだろう。
レラジエとハメルの関係を調べてみるしかない)
「ところで陛下ネックレスを手に取ってみていかがでしたか?呪いを解く手がかりは見つかりそうですか?」
「いや・・・念のためネックレスをつけてはみたけど、なんの感触もなかった。その代わり一つわかったことがある俺の知る生姜令嬢はただの生姜じゃないってこと」
「はい?それどういう・・・」
「盗みを働くのを見るとこれからは『怪盗生姜』と呼んだ方がよさそうな・・・」
「へ・・・陛下ってばまたまた~・・・」
(ハッ・・・焦った・・・でも『卑猥な生姜』よりはマシか)
「怪盗生姜さん次のターゲットはなんだ?」
「う~ん・・・次のターゲットは・・・陛下のハート!?」
「それは・・・難しそうだ」
「怪盗ってのは盗むのが大変なものに魅力を感じるものなんです」
「君には負けるよ応援してる」
(悠長なこと言っちゃって~知らないわよ?今日奪っちゃうかもしれないのに♡)
「それじゃ行こう」とイザナが手を差しです。
「はい!♡」
「・・・・・・?かばんを持つという意味だったんだけど・・・」
「あっ、手を繋ぐんじゃなくて?」
「やっぱり卑猥な生姜だな・・・でもまあ、おまえが望むのなら仕方がない繋いでやろう」と耳を赤くしながら鞄も持ってくれた。
(ひょっとして・・・照れてるの?イザナにこんなかわいい一面があったとは)
ジンジャーはニタニタしながらギュッと手を握る。
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(わぁ・・・雰囲気ある真っ昼間なのにこの辺りはやけに暗いし)
「怖いのか?」
ジンジャーがイザナの袖をギュッと握ってくるので尋ねた。
「はい・・・少し塔に続く道はこの道しかないんですか?」
「誰もいないし物寂しいところだろう?俺も塔を離れたから荒れ放題だ」
「・・・・・・」
(・・・思ったよりずっと荒れ果ててる。これが『幽閉された王子と侯爵令嬢』小説に出てきたあの塔・・・悪役の私がこの塔に足を踏み入れることになるなんて誰が想像しただろう)
「いつまで見てるんだ?早く中に入るぞ」
「あっ、はい・・・」
(きっと・・・本の著者ハメルも想像できなかったはず」
第41話 感想
イザナも嘘が下手そうだからジンジャーもさすがにネックレスが偽物と気付きそうだけど・・・