第19話 ネタバレ
「レオン!レイチェル!他の家族が準備している隙に抜け出して遊びに行っちゃダメでしょう!せっかく新しく誂えた服なのに台無しになるところだったじゃない!今度からは我慢して待っておくのよ?いいわね?」
支度が終わり庭園を駆け回る双子にシュリーは注意する。
「奥様・・・私はまた客室とキッチンの確認をしに行って参ります・・・!」
屋敷のメイドたちの働きを見て皆あと数日だけ頑張って・・・!と涙をシュリーは流した。
(覚悟はしていたけど・・・!朝早くから準備しているのにこんなに余裕がないなんて・・・!ちょっと欲張りすぎたかしら?
でもこんな風に着飾ると本当に可愛いわね。正直 無理のある日程だったけど服を新しく誂えて本当に良かった!!)
他の2人は心配いらないわよね?と思っているとジェレミーとエリアスが部屋に入ってきた。
「また何か問題を起こしているのか?」とジェレミーが言う。
ジェレミーを見て「ジェレミー!?その腰の剣は何!?皇室の方々も参加される宴に武器を持って行くつもり!?今すぐ部屋に置いてきなさい!騎士の叙階を受けたわけでもないのに何を考えてるの?」シュリーが言う。
「来年は受けるじゃないか!」とジェレミーは言い訳をしていたが部屋に戻しに行った。
「まさかジェレミーが・・・予想外の伏兵だったわ!!エリアス!あなたも見せなさい!」
「ふふ・・・この俺に問題なんてあるわけないだろ」
「意外と一番まともね・・・!今日は本当に重要な日なの!皆きちんとお行儀よくしてちょうだい・・・!」
「奥様!!お急ぎください!!」
「私の準備がまだだったわね!!」
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「これはこれは・・・盛大なこと・・・さすがのノイヴァンシュタイン家・・・」ハインリッヒ公爵が馬車からおりて言う。
ハインリッヒ公爵はシュリーを見かけ「すごい人出ですね」と話しかけた。
「ハインリッヒ公爵様ご参席ありがとうございます」
「ご招待いただけて光栄ですよ実に素晴らしい宴になりそうだ」
「ヨハンのためですもの」
「お子様方は・・・?」
「先に来られた方々と中で挨拶を交わしています」
問題を起こしてないかしら!?と心配するシュリー。
「ほう・・・そうですか・・・ああそういえば紹介が遅れました。夫人と会うのはこれが初めてでしょう我が娘オハラです」
公爵が娘の紹介をする。シュリーはオハラを見て以前の記憶を思い出す。
『彼がお母様を憎んでいるのは当然のことでしょう』
「はじめましてノイヴァンシュタイン夫人オハラと申します」
「子女との参席も歓迎すると仰ったので夫人への紹介も兼ねて連れて来たのです」
(——これが子供の頃のオハラ!たった12歳になったばかりの少女)
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【過去回想】
「結婚ですか?」と尋ねるシュリー。
「ええ ジェレミーの結婚。まだまだ子供で自分勝手なあの子が大人になった時、自分だけでなく他人の人生まで責任を取れるようになったらあなたが主導してハインリッヒの息女をジェレミーの妻として迎えてください・・・まだまだ遠い未来の話ではありますが」とヨハネスは言う。
「ハインリッヒ・・・公爵・・・・・・でしたでしょうか?」
「よく覚えていましたね息女の名はオハラです」
「ああ・・・耳にしたことがあります。まだ幼いのに・・・たいそう立派に社交界デビューをされたとか」
「父親によく似た娘ですよ。ハインリッヒは見かけは気高く名声と人望のある人物のフリをしていますが戦争中 支援を口実に皇室に吸収されてしまった3つの公爵領のせいで貴族という命綱だけをかろうじて維持している者に過ぎませんでした。
そんな公爵家に活力を吹き込まれたのは彼の夫人であり製造と商団に興味を見せていたクライン伯爵家の娘クラウディアのおかげです。そうして妻の実家の力を借り爵位に見合う富を手に入れることに成功しましたが製造と商業は平民の仕事。それは同時にハインリッヒの恥部となってしまった」
「それでは・・・ハインリッヒ公爵がジェレミーと婚約を望んでいる理由は・・・」
「ノイヴァンシュタインとの婚戚関係を利用して自身の立場回復を狙っているのですよ」
「・・・ジェレミーやオハラにとって良い話ではないようですね・・・」
「シュリーこれからはこのような話を度々することになるでしょう。そして『力の流れ』を理解することに慣れなければなりません。それが今後 侯爵夫人として生きていくシュリーに私が望むことです」
「・・・・・・・ヨハネス・・・まだ難しいですが・・・分かりました。でも・・・オハラとの婚約をジェレミーが嫌がったらどうしましょう?」
「なるほど・・・このような家門間の利害関係を受け入れるにはジェレミーはまだ強情すぎる。まともに説得しようとすればきっと激しく反発するでしょう。ジェレミーには私が機会を見て伝えるようにしましょう。生きている間は父親としての役割を果たさねばなりませんからね」
「ヨハン・・・!」
「あまりにも不謹慎な話だったかな。でも・・・あなたも分かっていると思います。私に残された時間はあまり多くないということを・・・」
「・・・・・・」
「もしも私が生きている間にジェレミーを説得できなければその時は『母親』の才覚に期待するしかありませんね」
第19話 感想
ジェレミーとオハラの婚約はヨハネスの願いだったようですね。ヨハネスの容姿が出てきましたが普通におっさんでした・・・目の保養にならないのが少し残念です。