第9話 ネタバレ
処罰を下してほしいと申し立てる騎士にバレリーは、イズリアル卿が団長を力一杯抱きしめるように話す。
「隙もないくらいギューッと息もできないくらいね」
(抱きしめる?私が団長を?)
(だからえーと・・・抱きしめる?)
「私も皇太子に無理やり抱きしめられたんです。その気分を味わって欲しくて。やっぱり伯爵の娘なんかが言うことなんて聞けないかしら?」
「「いっ いいえ!そんなことは断じてありません」」と2人は言葉をそろえて言う。
団長が目を閉じて「よし かまわずさ・・・さぁ来いっ!」とむかえる。
「いっ行きます・・・!」団長をギュゥゥゥーッと抱きしめる。
この時バレリーはまだ知らなかった。逞しい筋肉を持つ騎士どうしで固く抱きしめ合うことはライハーツ騎士団の中で悪名高い罰として受け継がれていることを
(・・・やっぱり現実って汚らしいわ。せめて精神的な逃避でもしよう今日は一日中寝るぞ。家族の夢でも見て・・・)
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『娘の幸せのために最善を尽くしていただけますか。最善を尽くしていただいても娘の方から先に婚約を破棄したいと言い出したらそのときは黙って婚約を解消していただきたい』バレリーの父からの言葉にカイロスは『もちろん努力するつもりです。お任せください』とこたえていた。
その時のことを思い返すカイロス。
「・・・・・・報告書の内容はこれで全部か?」カイロスはビクトールに確認する。「はい そうでございます」とビクトールはこたえた。
「つまりボルシェイク令嬢は昨日メイドから無礼な扱いを受け食事中に失神し朝は皇太子に破廉恥な振舞いをされた・・・ということか」
「皆それぞれ深く反省しております」
「・・・すべて彼女の望む形で処理するように」
「かしこまりました」
急にどよーんと落ち込む様子になったカイロスにビクトールは「・・・殿下?大丈夫でいらっしゃいますか?」と声をかける。
「・・・僕が大丈夫じゃないように見えるか?」
「はい、かなり」
「エドウィンも同じようなことを言ってたな僕が彼女のことに関して過敏に反応しているって・・・そうだな縁が破談にならないように神経を尖らせていることは認める」
「それはどういう・・・?」
「・・・まるで疫病神にさえ思える怖い男の家に暮らさなければならなくなったというのにそこでさらによくないことが立て続けに起きたら誰だって耐えられずに婚約解消を言い出すんじゃないか?」
「それはボルシェイク様のことですか?それなら今度は嬉しいと思えることをして差し上げたらどうでしょう?」
「それなら東館に図書館を作っている。もう間もなく使える・・・」
「殿下が直接手渡すプレゼントの方がもっと心にグッと来ませんか?」
(答えを教えてあげたいがこの人も他人について一人であれこれ悩んでみるといいだろう。殿下がこんなにも気遣う相手はこれまでにセレニアお嬢様しかいなかったのだから)
悩んだすえカイロスは「それなら今すぐ彼女が好きそうな宝石を用意しよう」と話す。「怖い人に高い宝石をもらったところで怖い金持ちにしか見えませんよ。大切なのは気持ちを伝えることですよ殿下」とビクトールは笑顔で言う。
(さあ早く考えるんだ。ささやかな花束でも渡してお茶にでも誘うんだ!)
「やっぱり今すぐ伝えた方がよさそうだ。いったいどうして僕を避けるのかその理由を知りたいってことをセレニアはあわてて聞いたところであまり意味がないと言ってたが話をしながら聞き出せばいいんじゃないか?」
「口下手な殿下がそんなこと・・・」ビクトールは言うが「さっさと誤解を解いてくるさ」と部屋を出て行ってしまった。
「・・・・・・まぁ昼間に部屋を訪ねるなら失礼には当たらないだろう」とビクトールは考えていた。
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「誤解を・・・さっさと解いて・・・」・・・おこうと思ったのに・・・
カイロスはバレリーの部屋に誤解を解くため来たのはいいが、肝心なバレリーはベッドで寝ていた。
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その頃、バレリーの専属メイドのエイミーはメイド人生最大の難関だった!
(結局 部屋を出てきちゃった!)
「エイミーちゃん?今さっき殿下がボルシェイク様の部屋にお入りにならなかった?」彼女と話したいことがある!とカイロスから話されたイズリアルはエイミーに尋ねる。
「はいお嬢様はお休みなのですがご自分で起こすから出て行くようにと・・・」カイロスから二人きりで話したいことがあるんだ!と言われ部屋を出てきてしまったエイミー。
「え?先に起こさなきゃいけないんじゃないのかな?」
「やっぱりそうですよね?もう一度入ってみた方がいいでしょうか?殿下は変な方じゃないですよね?お嬢様はお休みになりながらも不安なお気持ちなのかずっとうなされていらっしゃるんです!お嬢様大丈夫ですよね?」
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「・・・大丈夫そうには見えないな」とバレリーを見てカイロスは言う。
「エディス マーシャル・・・お母様・・・」寝言をブツブツ言うバレリー。
(目のクマ・・・そんなに疲れているのか?ソファーに座って目が覚めるのを待つとするか)
ソファーに向かおうとしたカイロスの指を無意識にギューッと握るバレリー。カイロスは眠るバレリーの方へ振り向いた。
「お父様・・・」家族が恋しいのか寝言で呼びかけるバレリー。カイロスはバレリーが指を握って離さないので、ベッドの横に座ると眠りながらも静かに泣くバレリーを眺めていた。
第9話 感想
腐女子の私にはついついにやけてしまう罰ですね。団長受けかなり萌える!