第59話 ネタバレ
【回想】
「主を失った黄金の獅子を手に入れることがここまで難航するとは思っていませんでしたな」
「ヨハネスあの男がエリザベート皇后と内々に手を組んでさえなければ・・・」
「神の偉業に反旗を翻す不届きな者たちです!」
「皇帝はなぜあのような伴侶ばかり迎えられるのでしょう!」
「戦の英雄という名声にふさわしく積極的に乗り出してくださると思っていたのに・・・」
「もう夢を見るのはやめましょう。陛下はルドヴィカ前皇后が亡くなられて以来完全に気力を失われました」
「とにかく・・・造作もないと思っていたことがシュリー・フォン・ノイヴァンシュタインに阻まれこのような状況まで来てしまった」
「あのずる賢いハインリッヒ公爵とノイヴァンシュタインが姻戚関係になれば私たちが手出しすることはほぼ不可能になると考えた方がいいでしょう」
「まあ・・・これについて何か策があるからこそ・・・枢機卿は我々をこのように呼び集めたのではありませんか?」
「・・・顧みるまでもなく聖戦のためにノイヴァンシュタイン家を隷属させる試みはすべて水の泡となりました。しかし協会が直接管理を行使しようとする今までの計画とは反対に彼らが動かざるを得ない【契機】を作り出せば話は変わってきます」
「・・・どういう意味でしょう?」
「侯爵夫人は夜明けと共にハイデルベルクにある別荘へ向かうそうです。目的地に到着するためには皇都近郊の大きな森を通らなければなりません」
「盗賊の群れが出没すると騒ぎになっている場所ですね」
「だから何だというのです!?回りくどい言い方はやめて理解できるように説明してください!」
「ホホホホ・・・」
「・・・・・・!」
教皇エウゲニウス三世「これはこれは・・・面白いことを考えられましたなリシュリュー枢機卿」
「教皇聖下」
「聖父と聖母の天のもと罪を逃れ山へ隠れた異教徒の群れが我が帝国屈指の名門家の貴婦人を襲い金品を奪い無惨に殺害・・・皇室と貴族とそして庶民、身分を問わず沸き上がる憤怒の火種は帝国をまるごと覆い包んでしまってもおかしくはないでしょう」
「すなわち聖戦の始まりです」
「お・・・」
「おお・・・!」
「しかし聖下・・・!単純に侯爵夫人を殺すことで解決する問題ではありませんぞ」
「侯爵夫人が死亡した場合ノイヴァンシュタイン家を皇室に一任するという遺言があります。これによってむしろ皇后の力を育む結果になるのでは・・・」
「【サファヴィー人の手で我が国の貴族が殺害された】という大義名分を前にして大帝国カイザーライヒが進軍しないという選択肢は存在しません。皇帝にしろ皇后にしろ行動を起こすしかありません」
「「「・・・・・・」」」
「・・・あの・・・万に一つ・・・ジェレミー卿が従わない可能性も考慮するべきではないでしょうか?」
「あの父親であれば考えられますな」
「ヨハネス前侯爵にならい反対する可能性が高いでしょう。その上彼と侯爵夫人は犬猿の仲ではありませんか」
「長い間監視を続けてきたリシュリュー枢機卿はどう考えますか?彼は動くでしょうか?それとも動かないでしょうか?」
「・・・ジェレミー・フォン・ノイヴァンシュタインは必ず動きます」
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バタンッ
「護衛は2人だけだが熟練の騎士たちだ15人ほどで隊を組み今すぐ派遣しろ。盗賊団の仕業に見せるために金目のものはすべて奪い痕跡を偽造するのだ。失敗は許されん」
「はい枢機卿様!」
リシュリュー枢機卿の命に従い男がかけていく。
【回想】
『素晴らしい計画ですね実行してください。そして・・・大事を成功させるためには劇的な演出も必要なものです』
『侯爵夫人の死はできる限り残忍でまた惨たらしいものでなくてはなりません』
醜悪で汚らしい。
彼らが私と同じ神の創造物であり真理をほめ称える存在であることを否定する。
救済されなければならない
一途に信仰し悟りを開いた者だけがこの座につくべきなのだ。
だからこそどれほど険しい道へ導かれようと耐えて従わなければならない。すべてはより広大な神の土地とより高潔な信徒たちの誕生のために
「——その哀れな魂が神聖な使命のための犠牲となることもまた祝福なのである。我々はいつか神の腕の中で再び出会うであろう」
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【アルベルンside】
・・・やはり落ち着かない。前侯爵様がこの世を去られて新しい奥様に仕えてからすでに7年。けっして短くはない歳月だ。俺の感情がどうであれ昨日の行動は軽率だった。
せめて最後の挨拶はきちんとするのが道理というものだろう。
そうだ・・・もう一度引き止めてみよう。今、追いかければきっと間に合うはず。
アルベルンが馬に乗って追いかけて行くとそこには、騎士の死体があった。
アルツ・・・?ヴォルフガング・・・?
ドクン
ドクン
ドクン
馬車に近寄り扉を開ける。
惨劇を目にしたアルベルンは顔を手で覆い膝をつく。
第59話 感想
惨いですね・・・次の人生こそはハッピーエンドで終わってほしいです。