第32話 ネタバレ
【ユリアside】
用意してくれた部屋には美青年たちが待っていた。
(さて・・・この後はどうすればいいかしら。私は手を出すつもりなんてないのに・・・)
(フェーズ・・・スチェータ男爵・・・まったくはた迷惑なやつらだ)
「・・・・・・」
(仕方ないわね)
「!」
部屋を見渡すと酒が置いてあり手にとる。
(楽しい夜を過ごせと言っていたけどかなり気合い入れたみたいね。ウイスキー・・・ユリアになってからウイスキーは口にしないと決めていたのに。
それにしてもスチェータ男爵もやるわね。食事の時もずっとワインを飲ませてこの部屋にも酒を置いたということはよっぽど酔わせたいのね。こんな強い酒を・・・
アルコールで皇帝の暗殺を企んでると捉えていいくらいだわ・・・はぁ・・・この手だけは使いたくなかったけど・・・)
(こんな状況では・・・あれを破るしかないのかしら)
今言った『あれ』というのは8年間会社員をしている間これだけはしないようにと決めていたことで
その1つは上司として仕事では厳しくしても絶対お酒は勧めないこと。
(だったのに・・・これしきのことで8年間も守ってきたルールを破ることになるとは・・・)
「・・・・・・」
(・・・ああ私はクズだよ!背に腹は代えられない!)
ユリアが酒を机にドンッ!と置いた。ビクッと驚く男たちにユリアは目を光らせて
「お前たち今夜をこのまま過ごすだけでは何かもったいないと思わないか?」
「「!」」
「それに皇帝の体に触れるまたとないチャンスなんだぞ」
(私ってば何を言ってるのよ!!)
「そこでだ私とゲームをしないか?」
「・・・・・・ゲ・・・ゲームですか?」
「難しいことではない実に簡単なゲームだ。私と飲み比べをして勝てばいいだけ」
「飲み比べ・・・ですか?」
「ど・・・どうする?」
「俺たちは酒は苦手なのに・・・」
「私に勝った者には褒美をはずむぞ」
(よ・・・よかった・・・!全員お酒に弱いようね)
(少しワインを飲んだ私でも勝てそうだわ。こうなった以上・・・もうやるしかない!)
話が急に変わるけど私がユリアになる前、安原つぐみとしてまだ部長に嫌がらせをされていた頃身につけた『ウイスキーの飲み方』があった。
パリン
ユリアが手刀で氷を砕きグラスに入れる。それを見た男たちはブルブルと怯える。
その名もオン・ザ・ロック
オン・ザ・ロックは2~3個の氷を入れる飲み方だけど
「何をしている飲みたまえ」とユリアが小さな氷が入ったグラスを手渡す。
その方法によって相手にとんでもない量を飲ませることができる。上司限定。
本当に卑怯極まりないやり方である。
ユリアは自分のグラスにのる大きな氷を見て
(これじゃオン・ザ・ロックというよりオン・ザ・ストーン・・・)と思った。
(まさか私があの部長のような真似をすることになるとは・・・)
「——では始めるとしようか」
******
「はぁ・・・」
バサッ
(彼らの服は服としての機能を果たしてるのか・・・?でも幸い1杯目で酔い潰れてくれてよかったわ。本当に卑怯な手口だったけど・・・スチェータ男爵には・・・できるだけ良いように言っておいた方がよさそうね。
それになぜ酒もまともに飲めない者をここに連れてきたのかも調べないと・・・あの嘆願書と関係があるのかしら)
(それより心配なのは・・・ユースト・・・おそらく演技だろうけど・・・あの顔は・・・気になりすぎる!)
ユリアは部屋を出る前に気配を探った。
(気配は・・・ユースト1人だけか)
扉を開け佇むユーストに「疲れているのか?」と声をかける。
ビクッと驚くユースト。
「陛下・・・」
第32話 感想
最後ユリアが部屋から顔を出して終わりましたが、ユーストが驚きと若干嬉しそうにしていて可愛いかったです。