第52話 ネタバレ
時は二十年前城の中にある魔法研究所
「呼吸を整え集中してください。頭の中で狙いのものを思い浮かべるのです」
第一王位継承者ヘンドリックは師匠に言われた通りにすると魔法が発動した。
「また成功しましたゲシュト!!」
「上達されましたねヘンドリック様。生まれつき魔力をお持ちでも集中力と想像力がなければ使いこなすことができません」
「これもすべてゲシュトのおかげです。この力で王国を発展させられるといいのですが」
「きっとできますよ。ヘンドリック様なら偉大な魔法使いになられるはずです。この王国の大魔法使いである私が断言いたします」
ガチャッ
「それはなんとも頼もしい!」
アストル王が部屋に入ってきた。
「陛下!お呼びいただければ参りましたのに!」
「親愛なる弟が研究所に閉じこもっていると聞き気になってね。魔法の研究に余念がないというのは本当だったようだ」
「ゲシュトのおかげで魔法がかなり上達しました。彼は立派な師匠です」
「・・・とんでもございません。ヘンドリック様が才能あるお方だからでございます」
その言葉にアストル王がピクッと反応した。
「そうか・・・二人とも期待しているぞ」
(・・・・・・!?)
ゲシュトはアストル王から悪意を感じた。
「久しぶりに一緒に昼食をとろうじゃないかヘンドリック」
「もちろんです陛下」
「・・・・・・」
魔法の力はごく少数の人間にしか与えられない遺伝によるものなのか突然発現するものなのかはわかっていないがヘンドリック様の場合、遺伝のように思われる。僅かではあったが先代の王妃殿下も魔力をお持ちだったのだ。
(兄弟ともその力を受け継いでいれば何か違っただろうか・・・)
(王位を脅かされたくないお気持ちはわかるが兄が弟を警戒するなんて)
当時の私は浅はかだった。陛下のそれはただの警戒心ではなかったのだ。
その五年後
「殿下どうしてこのようなご選択を・・・」
「うぅっ・・・すばらしいお方でした」
「運命はなんて残酷なのでしょう」
「昨夜の朝タンプル塔で倒れていらっしゃったそうです」
「服毒ですって・・・」
(そんなバカな・・・ヘンドリック様が命を絶たれるなんて昨日まで明るく笑っていらっしゃったお方が何故・・・)
******
「・・・悲しみの中そなたたちを呼んだのは大事な発表があるからだ。今後王国内での魔法の使用を禁ずる」
(!)
「ヘンドリックは私に遺書を遺した。魔法のせいで幻覚が見えるようになり精神的に限界だという内容だった・・・
魔法が人間にそのような副作用を与えることを知った以上王として黙って見ているわけにいかない。ただ今をもって・・・」
「魔法使いの養成及び修行に関する支援を中止し王国内の魔法の使用を全面禁止する」
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「陛下どうかご再考ください!これまで魔法はこの国で平和利用されてきました。それなのに何故・・・!」
「どうせ魔法使いの数が減ってきている。魔法にかける金があるのなら軍事力の拡大にあてた方が現実的だ。それに・・・侯爵も八十年前のあの事件を知っているはずだ」
(八十年前の事件・・・魔法使いの死者が相次いだあの事件のことか・・・?)
「当時、魔法に頼り切っていた先々代の大王は事件のことをあまり追及しようとしなかったがあの事件は呪い魔法によって起きたことは誰もが知る事実。
あの事件や私の弟のように魔法による犠牲者をこれ以上出したくない」
「・・・・・・」
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ゲシュト(・・・まだヘンドリック様の遺書の内容に納得できない。幻覚?精神的に限界?体は弱いお方だったがヘンドリック様は強い心をお持ちだった。
それに魔法で悩んでいらっしゃったのなら師匠の私が気づかないはずがない!)
「ヘンドリック様・・・何があったのですか。私はこれからどうすればよいのですか・・・」
ゲシュトはヘンドリックの魔法の練習で使用した花瓶を抱えた。
すると、カサッと音が聞こえ不思議に思ったゲシュトが花瓶を逆さにする。
(手紙?)
【手紙の内容】
ゲシュト私は大丈夫です。いずれ死ぬのですから少し早く逝くだけです・・・どうか兄を恨まないでください
「ヘンドリック様いつこのお手紙を・・・」
ゲシュトが手紙を読み終えると魔法の力によりタンプル塔に向かうヘンドリックとアストル王の姿を目にした。
(まさか・・・!)
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「えっ・・・ゲシュトは過去を見たのか?父上は一体何をしたんだ・・・?」
第52話 感想
真実があきらかになってきましたね。