第29話 ネタバレ
(腐敗したにおいがぷんぷんするわね)
(フェーズ公爵は処刑されたというのにみんな都合の良いように考えちゃって・・・)
ガチャ
「陛下お食事前に軽く一杯いかがですか?」
お酒を持ってスチェータ男爵が戻ってきた。
「ぜひお願いしよう」
「!」
(高級ワインのラベルじゃない)
アフリートワインこのワインは年にたった10本しか製造されないため入手するのが困難であった。
(小説に何度も登場した銘柄だから知ってるわ。原作でも何か企んでる連中は・・・こぞってあのワインを持ってきたからね)
(腐敗の象徴みたいなものかしら)
「陛下はすでに何度も味わったと思いますがやはり貴重なお客様には貴重なお酒でもてなすのがいいと思ったので」
「何度口にしてもアフリートワインは製造された年によって少しずつ異なる魅力があるからな」
「さすが!このワインの魅力を知る者はそう多くありません」
「・・・・・・」
一見ユリアを煽てるようなことを言ってるけど
(まったく・・・)
彼が言ってることをよく聞くと自画自賛ばかりだった。皇帝くらいの地位にならないと味わえないこのワインを自分だって何度も味わったと見せびらかしたかったんだ。
(そんなに自慢したいのかしら。以前の方蕩だったユリアなら・・・不快になることなくむしろこの状況を楽しんでいたはず。彼女はここ2年間自分の太鼓持ちを傍においていたからね)
ワインに口をつけたユリアは
「!」
(はっ表情が緩むところだったわ。これ・・・本当に美味しいわ!腐敗の象徴って伊達じゃなかった!口の中を柔らかく包み込む魅惑的な味!)
「これは既存のものと比べても・・・惹かれるような魅力があるな」
「よくご存知で」
(単純に少し渋い味がしたから適当にいっただけだったけど不思議にも不快ではない味ね。もう一度このワインの力を見せつけられた・・・)
「さすがですね」
「褒められるほどではない。ふむ・・・」
ユリアが真面目な顔でスチェータ男爵を見ると男爵はギクッとする。そんな男爵にユリアは、「お前にはどんな称号を与えようかと思ってな」と笑う。
「称号ですか?」
「ああ、こんな素晴らしいワインでおもてなしをしてくれたんだ」
「陛下」
ユリアの言葉にユーストが止めに入った。
「興が覚めたな」とユーストを睨むユリア。
(マルカス公爵とは仲がよくないと聞いたが本当だったのか!)
(公爵が付き添いに来たと知って緊張していたが・・・仕方なく連れてきただけのようだ!邪魔者が隣にいるのは俺にとっては好都合だ)
「食事を持ってこい。陛下、せっかく療養にいらしたのに楽しまなくてはもったいないです」
「こんな頭の硬い奴が隣にいてはな。皇帝というのはつらい立場だと思わないか?」
「そうですね。陛下はとても寛大な心をお持ちで」
「そうか」
「それに陛下はとても偉大なお方なので分をわきまえない者の発言にも軽い説教のみで済んでるではありませんか」
「・・・・・・まったくだ私はこんなにも偉大なのに首都では何かとうるさくて休むことすらままならない」
「みんな陛下の元にしかいたことがなくすでに滅んだ他の王がどれほど残酷だったのかわかってないからそんなことが言えるんです」
「お前の言う通りだな」
「・・・・・・スチェータ男爵お前のような市勢に明るい者がこんなところにいるだなんて・・・実にもったいないお前もそう思わないか?」
(・・・!!)