第37話 ネタバレ
聖誕祭の贈り物を選びに出かけたシュリーたちは窃盗未遂の被害者ハメリからお礼としてお茶に誘われるのだった・・・。
「まあ、ノイヴァンシュタイン侯爵夫人であり現在の当主ということは・・・帝国の建国史で見たことがあります。大貴族の家門ではありませんか!一介の旅行者である私ですら耳にしたことがあるほどですわ。こんな素晴らしい方に助けていただいたなんて」
「そんな・・・ところで旅行で来られた方なのですか?」
「ええ世界のあちこちを探索して回っておりまして。海を越え~山を越え~」
ハメリの話を聞いたシュリー達は生活範囲=屋敷のためか一体どういうこと?という表情だった。そんな2人に笑いながら「お見せした方が早そうですね」と鞄の中身を広げる。
「船に乗って放浪しながら各国の風習や生活像を記録するのです。こんな風にこのノートにはチュートンの食生活について書かれています。灌漑を調査したり衣服を描写した内容もありますわ。帝国では教会を中心に観察しました」
「ステキですね。とても自由で・・・こんな職業にはどうやったら就くことができるのですか?レイチェルに向いていそう・・・」
「あっええと・・・そのこれは・・・職業ではないのです・・・一種の趣味というか・・・まだまともな職と呼べるものはなくて・・・それでも世界を見て回るのはとても楽しいです。
はじめて目にする風景に圧倒されたり私とは異なる信念を持つ人々に出会ったり、でも眠りにつく前にふと故郷サファヴィーの熱い太陽が懐かしくなったらその時は愛する家族たちの元へ帰るべき時なのですわ」
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シュリーたちはハメリの見送りに船着き場へ行く。
「それではシュリー」
ハメリがシュリーとお別れをしていると
「ハリメまもなく船が出航します」と付き人が言う。
「いつかサファヴィーに来られたら必ず私のところへもお立ち寄りくださいね」とハメリがシュリーに名刺を渡す。
「お礼ならすでに充分いただきましたわ」
「もっとお礼をさせていただきたい気持ちももちろんありますが・・・夫人はとても美しい心の持ち主だと思ったのです。どうかお友達になっていただけませんか?」
「ええハリメもちろん喜んで」
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【シュリーside】
(神秘的な人だったなぁ)
「奥様、馬車を呼んで参りました」
「今行くわ」
(どれどれ・・・『ハリメ・ファシャ』・・・ファシャ・・・ファシャ・・・何だろう?確かどこかで聞いたことがあるような・・・)
「!」
シュリーは[サファヴィー王族の系譜]を思い出す。
王:バヤズィト・ファシャ
王子:アリ・ファシャ
「・・・・・・・・・え、えええっ!?」
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【ハメリside】
「・・・結局 正体を明かされたのですか?姫様」
「さあね帝国民が属国の姫の名前なんて知るわけがないでしょう?でもシュリーなら今頃とても驚いてくれているかもしれないわね。本当に可愛い少女だったわぁ~」
「心配しないで。この地に足を踏み入れたのが私の弟アリだったら帝国はこれを口実にサファヴィーへより大きな圧力を行使しようとするでしょう。でも私はまだ大丈夫。それに今回の旅ではっきりと分かったわ。戦争が帝国を強大にするだけではないという事実を。
カイザーライヒは衰退した。帝国が再び戦いを仕掛けてきたら勝算はサファヴィーにある」
「・・・でも戦場で命を懸けて戦うのは私たちではないわ。帝国の皇帝もお父様も正しい判断を下してくだされば良いのだけれど」
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【ノイヴァンシュタイン家】
ダダダダッ
「聖誕祭だぁ~」
「聖誕祭~!!」
「贈り物!贈り物~!!」
バタバタ
「おい!!俺が先だ!!」
「エリアス邪魔!!どいて!!」
「ふん!贈り物は先に開けた奴のものだって決まってんだよ!!」
「うわぁ!ジェレミー兄様これ見て!!クララ聖女様は僕が良い子だって知っててくださったんだ!贈り物がたくさん~」
「お前はまだそんな子供騙しを信じてるのか?」
「うっうっ、止められませんでした奥様」
「早く開けてみよう!!」
「あなたたち!!まずはお祈りをしてからでしょう!?さあ集まって!贈り物は元の場所に置いてくるのよ!」とシュリーが止める。
「ええ~」
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「さあ・・・それじゃあ一度に飛びつくとあまりにも騒々しくなりそうだから順番を守って贈り物を開けてみましょう」
「なんでジェレミー兄様からなの?」
「そりゃ もちろんうちの母上が僕を一番大切に思ってくれてるってことだろう?」
「何言ってるのよ贈り物は聖女様がくださるものなのよ~ジェレミー兄様のバカ!」
「ただ集まってるだけで充分騒々しかったわね」
「聖女様聖女様って騒いでる双子にこの僕が現実ってものを教えて——!」
「うわあ~」
「どうジェレミー?気に入った?ランゲネスのロングソードよ」
「現実を見せてやるんじゃなかったのかよ~?これでも聖女様はいないって言えんのか?」
「・・・シュリー」
「うん?」
「・・・ありがとう」
ボソッとジェレミーが言う。
「どういたしまして」
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【ノラside】
「坊ちゃん、こちらノイヴァンシュタイン家から届いたものでございます」
「・・・ノイヴァンシュタイン家から?何なんだ?」
「侯爵夫人より坊ちゃんへ聖誕祭の贈り物だそうです」
(ツヴァイヘンダー)
(俺が使う剣を覚えていてくださったんだな)
第37話
ハメリは属国の姫だったようですね。そして、シュリーはなんとノラの分のプレゼントも用意してました。さすがですね!