第31話 ネタバレ
「わたしにとってこれは命に関わる重要な問題だってこと・・・ディエリゴが一番よく知ってるじゃないですか」
(もちろんわたしの命だけじゃなく陛下のもね・・・)
「あ・・・えっと・・・」
「お願い!」
「特にお助けする必要はないようのに思われますがそこまでおっしゃるなら協力させていただきます」
「じゃあ同盟を結んだ記念に握手しましょう!」
(今日からディエリゴは愛の使者!わたしの恋のキューピット!)
「しかし本当に私の出番がないとは思います。陛下はすでに姫様のことを大切に思っていらっしゃるので」
「まあ・・・人質ではあるけど一応王族だから・・・」
「そのような理由だけではないと思いますが」
(・・・お父様がわたしのことを大切に思ってる?一体何を根拠に?)
「そうですか?別の理由があるとは思えませんが・・・」
「・・・以前、陛下はバウンダリーがはっきりしているとお話ししたのを覚えていますか?」
「はい・・・わたしも何となく分かるような気がします」
(普段は優しいけど肝心な時にいきなりガード固くなるからね)
「君主として申し分ないお方なので皆陛下を慕っているのですが人との関係において常に警戒を緩めないお方です。10年近く陛下に仕えている私にすら距離を置かれるくらいですので・・・」
「え!?そうなんですか?」
「陛下は残された唯一の王族であられるので常に様々な問題がついて回ります。陛下が寛大に見えるのはおそらくそれらの問題に慣れてしまわれたせいでしょう」
「へえ・・・そうだったんだ・・・」
「だから陛下には姫様のようなお方が必要なのかもしれません。神経を尖らせて警戒する必要がなく安らぎと解放感を与えられるお方が・・・
だからあまり心配なさらないでください。姫様は今のままで十分ですので!」
(陛下にとってわたしがそんなすごい存在だとは思えないんだけどな~)
「とにかく楽しい一日を過ごされたようで何よりです」
「あっはい皇城の外は初めてだったので楽しかったです!」
「ユゲ―ル広場には行かれましたか?」
「もちろん!とっても広くて活気が溢れてました」
エレニカがぺちゃくちゃ話しているとだんだん日が落ちてきた。
「私はそろそろ午後のお祈りに行かなければなりません。姫様もお誘いしたいところですがお疲れのようですね」
「あっはい・・・じゃあお祈りの時間が終わるまでここで休んでてもいいですか?」
「もちろんです。2時間ほどかかるのでそれまでゆっくりお休みください」
「はい いってらっしゃい」
「後で退屈でしたら一般の方向けの祈祷室にいらしてください。ラウルス様にお祈りを捧げるところも興味深いはずです。ではまた後で」
(身体中が心地よい温かさに包まれていてもどこか物足りない感じがする。お父様と離れてまだ数時間しか経ってないのに・・・一日中繋いでたお父様の手のぬくもりが恋しいのかな?
それより警戒する必要がない人・・・か・・・お父様は本当にわたしを警戒していないのだろうか?正直わたしには分かんない毎回強力なガードに跳ね返されてる気がするから・・・
てゆーか今はどっちでもいいから・・・早く帰ってきてほしいな。いくら神殿が過ごしやすい環境だとしてもやっぱりわたしは・・・そばにいるだけで癒してくれるお父様がいる皇城がもっといいから・・・)
色々なことがあり疲れていたエレニカは、長椅子に横になって眠る。
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【『ユーデタ』地上と空の境界】
『・・・おや?あれは何だ?なぜ地上に・・・それも私の神殿に非常に小さくて弱い異質な存在が入り込んでいるんだ?ほお・・・なかなか面白そうだな』
エウレディアンに似た赤い瞳に銀色の長髪の者が水鏡から地上を見ていた。
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「うーん・・・今何時・・・?」
(いつの間に日が暮れてる。ディエリゴが出て行って1時間半くらい経つからまだお祈りの途中かも。ディエリゴが戻るまで30分くらい残ってるけどどうしようかな~?)
目が覚めたエレニカはせっかく神殿まで来たからと思い、祈祷室に行くことにした。
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信徒たちがたくさんいた広場は誰もいなかった。
(なんだかこの空間を独り占めしてるみたい!)
『ぴーッ』
(え・・・?今の・・・何の音?)
キョロキョロと周りを見るがシーンとしている。
「誰もいないのにおかしいなぁ・・・」
(ま・・・まさかお化け!?)
「いやっきっとただの空耳よ!」
(・・・早くディエリゴがいる祈祷室に行って)
祈祷室に向かう通路を通るとまた音が聞こえた。
『ピーッ』
『おい』
(なななな何!?誰かがわたしの頭に話しかけてる??)
『そこの君こっちに来なさい』
(嘘でしょぉぉ!?)
第31話 感想
やはり、勘違いして司祭専用の祈祷室に向かってしまったようですね。エレニカは神聖力を持っていないはずですが、この頭に話しかける声がディエリゴが言っていた神聖力を持つ者同士の疎通なのかなと思いました。