第29話 ネタバレ
「落ち着いてゆっくり深呼吸をしなさい」
神殿に初めて入ったエレニカはものすごい神聖力に息苦しくなってしまった。エウレディアンに支えられ何度か深呼吸をするエレニカだったが何故か急に治まった。「あれ?治った・・・」と不思議に思うエレニカ。
「天然な神聖力は初めてだから身体が過敏に反応しただけだ歩けるか?」
「はい」
「苦しかっただろ?」
エウレディアンはエレニカが着ているローブの首元の紐を緩めてくれた。
「はい、ちょっと・・・」
視線をそらすエレニカだったが「でももう大丈夫——です」と言いエウレディアンを見上げる。深刻そうな顔でじーっとエレニカを見つめてくるエウレディアンにそんな目で見つめられたら恥ずかしいよぉとドキドキするエレニカ。
「な・・・何ですか?」と尋ねるエレニカ。エウレディアンは「手」と言いエレニカの手をスッと掴んで手のひらを見る。
「あっ、さっきのはもう治りました」とエレニカが言うが、聞いてないし・・・まぁ いいや好きなだけ見ちゃってください
「ふぅ・・・」とため息をついたエウレディアンは「むやみに何でも触ってはいけないと言っておくべきだったな」と言う。
「むやみに触ってませんから!」と言い返すエレニカ。
「さっきのはあのビー玉に引き寄せられたんです!まるで・・・触ってくれって引っ張られるような感覚でした」
エレニカの言葉を聞き何かに気づいた様子のエウレディアンだったが、ふっと笑い「そういうこともあるかも知れないな」と言う。
「本当ですってば!」
「分かっている」
いや どう見てもそういうことにしてやるって表情してるし・・・完全に子ども扱いされてる気がすると思うエレニカ。
「引き寄せられた・・・か」
(・・・?お父様の反応がいつもと少し違う・・・)
エウレディアンのローブを掴みエレニカはエウレディアンに呼びかけるが「神殿に入っていなさい。この時間帯ならディエリゴもいるはずだし一人で大丈夫だろう」と話す。
「え?陛下は?」
「私は確認したいことがある」
「人質のくせにどこ行く気ですか!」とローブをギュッと握るエレニカ。
「何だと?」
「・・・何を確認しに行かれるんですか!?今日ずっと陛下の様子が変でした。ずっと何かを確認している様子でした。いきなり『ここを離れた方が良さそうだ』っておっしゃった時もそうでしたし目も・・・表情も!」
(きっとお父様は皇城を出た瞬間からずっと何かを警戒してたんだ。確かにわたしが拉致宣言をした時まではこんなに敏感じゃなかった——ってことは・・・)
不安からか心臓の音がドクンドクンと響かせるエレニカ。
「陛下ひょっとして確認したいことって・・・」
ソルレア・エルラドのことですか?
「こんな深刻な表情は初めてだな」ふっと笑うエウレディアン。
「え?」
「普段は鈍感なのにこういう時に限って無駄に勘がいい・・・」
なによ・・・こっちは真剣だってのに!ギロッと睨み不満が表情にでるエレニカ。
「街にあってはならないものをいくつか目にしたから取り締まりに行こうとしているだけだ。たとえばさっき姫が触ろうとした魔鉱石のような——そういうものが街に転がっていると姫が怪我をするかも知れないからな
それに私がいない皇城に一人で戻るよりは神殿にいた方が安全だろう」
(お父様もソルレア・エルラドを疑ってるんじゃなかったのかな?はぁ・・・ソルレアの仕業に間違いないんだけど肝心な証拠がない
証拠を探しに街に行ってみるわけにもいかないし、そもそもソルレアが暗黒の魔法士であることを暴く能力なんてわたしにはない。だからといって彼女の正体をお父様に教えてあげるわけにもいかないから。
ここはやっぱり大人しく待ってた方がいいかも。わたしに出来ることが何もないなんて・・・悔しいな・・・)
「いつ戻られるんですか?」
「今日中には必ず戻る」
ローブを離し「分かりました遅れないでくださいね」とエレニカが言う。
「ああ約束しよう」
「絶対ですよ?陛下はまだ知らないから平気でしょうけどわたし・・・不安なんです」
「私がまだ何を知らないと言うんだ?」
(さあ・・・原作とか?
人生には予測できないことがいっぱい起こるからもしソルレアが息子を産むのを諦めてお父様に攻撃を仕掛けたら・・・?)
「・・・とにかく怪我しないように気を付けてちゃんと今日中に帰ってきてくださいね」
「思ったより心配症のようだな」とエウレディアンはエレニカの髪に手を伸ばして触れる。
泣きそうな様子のエレニカは無理に微笑んだ。
(お父様がわたしの心の半分の半分でも分かってくれたらいいのに・・・)
エウレディアンは馬に乗って神殿を出て行ってしまった。一人ぽつんと残されたエレニカは「行っちゃった・・・」と寂しげに言う。
(ディエリゴがいる時間帯だって言ってたし一人よりは一緒の方がいいからとりあえず探してみよ
それより・・・あそこまでどうやって上ればいいの?しかもよりによってハイヒール・・・)
ディエリゴを探すことにしたエレニカの前にはドドーンと階段があった。上りきる前にお父様が帰ってくるかもと思うエレニカ。
上り始めたエレニカに「姫様?」と下の方から声がかかる。クルッと振り向くエレニカ。
「いきなり陛下に呼ばれて急いで来てみたのですが・・・そこで一体何をしているのですか?」
(ディエリゴ~!!)
第29話 感想
エウレディアンは行ってしまいましたね。ソルレアとの対決?はまだ先だと思いますが・・・
エレニカは階段を上りきる前にディエリゴと遭遇できて良かった感じですね。上りきった後にディエリゴが下で迎えに来てたなんて知ったらやるせないですしwwww