第10話 ネタバレ
ビクトールとセレニアは2人で歩いていた。
「今日もこれといった収穫はなかったんですか?」
「ええあんなにたくさんの本があるのに次元移動に関するものは見当たりません」
「さっきは珍しく驚いてましたね集中していたのに私が邪魔をしてしまったようで・・・」
「ふふそんなことありません。少しくらい薄着したって風邪を引くことなどないのでこんなふうに扱われるのは初めてなんです。」
「?」
「男性が上着をかけてくれることです。だから少しびっくりしたんです。だけどたまにはこういうのも悪くありませんね」
セレニアの言葉にビクトールはくすっと笑った。
「ところで、その本はビクトールの趣味ですか?」とセレニアは尋ねる。ビクトールは恋愛小説『彼はケダモノ』『公爵様こんなところで』『二人の秘密』『皇子とともに』を抱えていた。
「あっこれは私のではありませんよ。婚約者ができた殿下にお渡ししようと・・・やっとのことで条件が合う令嬢を見つけたのですから。そのせいかこの婚約を破談にしたくないようです」
「ふふ・・・そんな理由だけかしら?」
「え?まさか殿下が令嬢に一目ぼれでもしたとおしゃるんですか?」
「だって・・・昨日と今日は特に日差しが美しく見えませんか?ラブストーリーにはよくこんなシーンがあります」
日差しが美しく差し込む窓際に寄り添う二人。日差しを受けて淡い光に包まれたヒロインと彼女にどうしようもなく引かれる男。セレニア話す頃——
カイロスは眠るバレリーを間近で見つめていた。
バレリーはその頃、現実逃避のための昼寝だったせいかここから逃げ出して遠くから家族を見つめる夢を見ていた。
お父様!助けて何とか頑張ってみたけど私どうしても・・・!
目が覚めるバレリー。目の前にはカイロスがいる。
「目が覚めたか?」
(私の潜在意識ってこういう感じなのか?その眼差しは止めて・・・私を元気づけようとその美しい顔を見せてくれてるわけ?だけど私はこの人を避けなきゃいけないんじゃなかった?もしかしてただ単にイケメンっていう理由だけで幻が現れたの?もしかして私って思ったより面食いなのか?)
「目が赤いな氷を持ってきた方がよさそうだ」とバレリーの顔に触れるカイロス。バレリーはなんで手の感触がこんなリアルなの?と思った。
「それよりその前に」とカイロスはバレリーの方へ手を伸ばしてきた。
まさかと思うバレリー。
「話を・・・したいんだが・・・」と話すカイロスの腕をガシっと掴んだバレリーは現実だと気づき驚く。
「こ・・・!ここは私の部屋のベッドです。ここでこんなことをしてはいけませんわ公爵殿下」
どよーんと本を見るカイロスに「寝ていたならそのまま戻ってくればよかったのにどうしてそんなことをなさったんですか?」とビクトールが尋ねた。
「起きた瞬間目の前に親しくもない男がいたらどんな女性だって驚くに決まってますよ。私がお渡しした本を読んで考えてみてください。何が問題だったかもうお分かりになりましたか?」
「・・・・・・この本に出てくる公爵はどうしてこんなに暇なんだ?」
「はい?」
「一国の公爵が恋愛しかしてないなんてその国はいったいどうやって動いているんだ?」
「そこは流しましょう大事なのはそこではありません」カイロスの話を聞きビクトールは頭が痛いと思った。
「この本の中で男が女の心を奪う瞬間はいつだと思いますか?」
公爵が野良猫に自らエサをあげるなんて公爵様、血も涙もない人だと聞いていたのに・・・以外にも優しいところがあったのね・・・
「まさにそのときです!殿下の温かい心がこもったプレゼントを渡して今日のことを謝るのです。そして殿下にもそのような優しい一面があることをアピールするのです!」
「温かい一面を見せられるプレゼント・・・」
「令嬢のことを思い出してみてください。何がお好きだと思いますか?」
「・・・家族をとても恋しがっているようだったなボルシェイク家の人々の瞳は紫色だと聞いている。だから紫水晶がついてるイヤリングを用意しよう」
「あのー気持ちはどこにこめられているのでしょう?」
「以外に温かい一面のアピールはどこに行ったんですか?」
「僕を誰だと思ってるんだ?もちろんそれも念頭においてある。僕はいつも周到な準備をする男だ」とニッパーを持ち出しカイロスは言う。
「僕が自分で作ってみる」
「・・・ついさっき本の中に出てくる公爵たちは暇すぎるとおっしゃってませんでしたか?」
第10話 感想
ビクトールから参考に渡された本にカイロスもさぞかし驚いたことでしょうねwwwバレリーにとってはどんな贈り物も恐怖でしかないと思いますが・・・