第8話 ネタバレ
「俺を殴った女は君が初めてだな」
皇太子の言葉で真っ青になるバレリー。
「あのそれは・・・」
「謝らなくてもいいよ俺の自業自得だからな。ちょっと待ってとりあえず脱いで・・・」
「何をですか??」とドキッとするバレリーに皇太子は「靴」と言いニヤッと笑う。「はいこれ持ってて」と騎士のイズリアルに脱いだ自分の靴を渡した。
「お出かけになるご予定はないんですか?靴を脱ぐなんて・・・」イズリアルの言葉に「出かけるから脱いだんだ裸足がいいんだよ。残念だけどそろそろ行かないと。またねボルシェイク令嬢」と皇太子は言う。
「嫌です・・・じゃなくてではまた」とつい本音がもれてしまったバレリーだったが皇太子は気にせず部屋を出て行った。
「・・・なんだあいつ?」
カイロスとセレニアは朝になっても木刀で打ち合いをしていた。
「いい攻めだったけどまだ隙があるわね。もう少し視野を広げたらどう?練習じゃなくて実際に戦うときみたいに後ろに敵がもう一人いると想像すればもっとラクに剣を捌くことができるわ」とセレニアがカイロスに教えている。
カイロスとセレニアに気づかれないよう近づく皇太子。
「例えば——こんな感じでね」と見本を見せるセレニア。隠れていた皇太子に当たりそうなすれすれのところで木刀を止めた。「・・・息を楽にしてエドウィン」とセレニアは言う。
「おぉ俺ずっと息を止めてたんだ!!音を立てないように裸足で来たのにどうやって気づいたんだ?この間は靴の音がうるさいから分かったって言ってただろ?」
「あなたの服が擦れる音も心臓の音も全部聞こえるのよ」
「やっぱりたいしたもんだな帝国最強騎士団の団長をあんな姿にしちまうんだから!」とカイロスを指差して言う。
カチンときたカイロスは「・・・そういうお前こそその恰好は何なんだ?気持ちよくスカッと一発食らった顔してるな」と言い返す。
「あ・・・」
「そうね私たち以外にエドウィンをこんなふうにできる人なんていたかしら?」
「俺は皇太子なんだぞ!なんだその扱いは?もうちょっと敬えよ!」
「上下関係なく対等でいいって言ったじゃないですか殿下」とセレニアは言う。
「俺がバカだったなんであんなこと言っちまったんだろう!」
(この年代の子たちのノリに付いていくのはしんどいわ)
「とにかく皇太子は気が触れたと誤解されるから靴は履いていたほうがいいわ」
「そうか?だからさっきカイロスの婚約者も俺のこと誤解したのかな?だから顔も青ざめちゃって・・・」
「彼女に会ったのか?彼女に何をしたんだ?」
カイロスに胸ぐらを掴まれる皇太子。「なっなんでそんな過剰に反応するんだ?落ち着けよ・・・!」と冷や汗をかき話す。
「・・・僕が過剰に反応しただと?」
「すげー怒ってるじゃん!」
「確かにいい気分ではないが・・・」カイロスは皇太子から手を離す。「それと俺はな・・・何にもしてねぇよ!」とエドウィンが目をそらして言うと「その目はウソを言ってるな」と問い詰めるカイロス。
「エドウィンはウソをつくと視線が左上に泳ぐのよね」
「なんだよお前ら超能力者か何かか?」
「彼女に何をした?正直に言えよ」
険悪な様子のカイロスに「さっ先に言っておくけどこれは本当に偶然だったんだ!だから・・・何があったかというと・・・」焦るエドウィンは言う。
屋敷の窓の側で叫び声が聞こえるけど・・・幻聴かしらと?と思うバレリー。小説ではたいていこういうのが不吉な暗示になるんだけど・・・・
「お嬢様大丈夫ですか?」
「一晩で4回も危機に晒されたんだから大丈夫じゃないわよ」
・・・このまま逃げちゃう?雑草の根っこでも食べて暮らしてあの素敵な二人の結婚の知らせを聞いたら家に帰ろうか?
『もう戻って来ないんじゃないかと思うと怖いんだ』『言ったら戻って来ないんでしょう?』と話していた弟と妹を思い出す。
(・・・ゆっくり休みながら考えよう)
「倒れたついでに少し療養するわ。今日は誰も部屋に入らないように伝えて」
「あ・・・でもお嬢様・・・もうすでに騎士の方たちがこの部屋の前にうじゃうじゃ集まって来てますけど?」
「今度はいったい何なの!!!」
「ライハーツ第3騎士団 別館の警備を担当しているにも関わらず事故を防ぐことができず大変申し訳ございませんでした」
騎士たちがバレリーに跪き皇太子の件を謝罪する。
「申し訳ございませんでした」
ストレスがたまり始めるバレリー。
「皇太子殿下がなさったことは誰も止められないでしょう。あなたたちの責任ではありません。もう大丈夫ですから」とバレリーは騎士たちに話す。
「そうだとしても弁明の余地はありません。私たちの責任です。如何なる処罰も受ける覚悟です!!」
「いえ大丈・・・」
「処罰を下してください!」
「もういいから・・・」
「どうか罰を!」
ストレスがMaxになったバレリーは「この中で一番力が強いのはどなたかしら?」と尋ねた。顔に出るタイプのイズリアルはバレリーの言葉に反応する。
「イズリアル卿のようですね前に出てきてください」
「はいあのぅ・・・こいつは力だけはかなり強いんですが・・・でも処罰は団長である私が・・・」
「そうねではイズリアル卿 団長を力一杯ギューッと抱きしめてください」
「・・・え?」
「『え?』じゃなくて」
「抱きしめてっていってるんです。隙間もないくらいにギューッと息もできないくらいにね」
第8話 感想
エドウィンは変態じゃなくて変わり者だったみたいですね。セレニアは何者なのだろうか・・・また、騎士2人にとってはかなり厳しい罰になりそうです。