第10話 ネタバレ
『ユス、私を殺さないで』
「ユス?アカデミーで何かあった?」
「・・・いいえ帰って来たんです」
「どういうこと?」
「アカデミーには早期卒業制度があります。姉上が首席で卒業を望まれたので・・・」
首席!?
「単位は取り終えたし試験も受けました」
「・・・」
「私の他に満点が出なければ首席で卒業です」
「スゴい!」
(満点で早期卒業だなんて!)
「頑張ったねユスタフ!スゴいじゃない!本当に嬉しい!」
「仕事中に倒れる姉上ほどではありません」
******
「やはり過労です。しっかり食事を取って数日は安静にしてください」
「それはできません」
「・・・・・・疲労回復に効く薬を出しておきます」
「ハーイ!」
バタン
治療師が出ていくとランがベッドから立ち上がる。
「安静だと言われませんでしたか?」
「でも大事なのはこれからだし。大変な時でしょ」
「ユス?」
ユスタフがランの肩を掴んでベッドに戻す。
「休んでください。仕事が大変そうだから帰って来たんです」
「そうだったの?」
「すでに卒業資格は満たしてますし」
「そうなんだ・・・手紙に書いた通り仕事は進めてるし詳しい資料はエリザベートに聞いて」
「昨日、目を通しました」
「そう・・・」
ランが慌ててベッドから起き上がる。
(待って昨日?)
「あの・・・ユス?」
「はい」
「えっと・・・その・・・だから・・・昨日の夜もここに?」
「はい」
(そんな!夢じゃなかった?それじゃあアレも聞かれてたってこと!?)
「ごめん・・・変なこと言っちゃった忘れて・・・」
「指を褒められたのは初めてでした」
(うわあぁぁぁ!夢だと思ったの!)
「休んでください」
ユスタフが部屋から出ていった。
(【殺さないで】ってユスにどう説明すればいいの!でも、これで・・・よかったのかもしれない)
不安な気持ちが伝わったからもう少し寛容になってくれるかも
******
『私を殺さないで』か・・・
ラチア公爵家は年が明けると扉で儀式を執り行う。
あの年は継母とランが初めて儀式に参加した年だった。
「ねぇ、あっち行ってみない?」
ランがユスタフに声をかけた。
儀式の途中で抜け出して戻って来たがランの姿はなかった。
(初めて父上に殴られたっけ・・・)
「あの時見つけたのか・・・」
殺す・・・彼女を殺そうと深く考えたことはなかったが・・・
『ユス・・・私を殺さないで・・・』
馬車の事故で怒りの矛先が自分に向けられたと思っているのか。
(当時、感じた羞恥心や怒り苦痛や悔しさ・・・そして100万ベラト)
いや、それ以上の価値を持つ鉱物。悪くない取引だな
「これで進めてくれ。新しい会計官の件はどうなっている?」
「何名か候補を絞って当主様に報告しました」
「そうか」
「あの・・・当主様の様子はいかがでしょうか」
「姉上は大丈夫。過労だそうだ。当分の間、書類は私が確認する」
「承知しました」
******
(うっ・・・薬草のニオイ)
「これ・・・全部飲むの?」
「はい、全部です」
薬を飲んだ後、リンは眠ろうとしたが
「はあ・・・」
(眠れない・・・そういえば2日も経ってるんだっけ)
図書館にでも行こうかな
******
「あっ、エリザベート!」
「!」
「当主様?」
「図書館へ向かう途中で見かけたの。ユスが書類を見てくれているようね?」
「はい、他に追記する内容はありませんか?」
「ユスだからきっと大丈夫。あっ!ユス、早期卒業して帰って来たの!スゴくない?」
「はい・・・」
「隠れてコソコソしないで書斎へどうぞ」
「それに行政官」
第10話 感想
首席&早期卒業って凄いですね。ユスタフとランが協力すれば怖いものなしですね。