第42話 ネタバレ
(暗くて何も見えない・・・)
「ここで待ってて」
「はい」
イザナが塔のカーテンを開けた。
(ふ~ん・・・外観とは違って室内は結構普通。小説にはもっと薄暗い感じに書かれてたのに・・・)
(!!)
「うわっ!これ全部本ですか?」
(こんなにも読めるもんなの?まあ・・・何年間も閉じ込められてたら退屈するよね?退屈どころじゃないか・・・精神的にも辛かったはず。黙々と本を読みながら耐えてきたなんて強い人なんだな・・・)
「久しぶりに来てみたけど思ったよりきれいだ座って」
「はい陛下!」
「正直・・・生姜令嬢が来ようって言わなかったら俺はもうここには来なかったかもしれない。それほど辛い思い出のある場所だから。それなのにいざ来てみたらなんだか心が落ち着くよ。まさか生姜令嬢がいるからなのか?」
「間違いありませんね」
「そういうところが君の魅力だよ」
「・・・陛下一つお聞きしていいですか?」
「なんだ?」
「この塔このままにしておくんですか?辛い思い出があるなら潰してしまった方がいいのでは・・・」
「う~ん・・・僕は大人だからそんな感情的なことはしない。それにこの塔は初代国王が造らせた由緒ある建築物なんだ・・・歴史的価値のある建物を撤去するわけにはいかないだろう」
「そうでしたか・・・だからこんなに年季が入ってるんですね」
(私だったら真っ先に潰すのに・・・)
「それよりそのバスケットに入っているのは食べ物か?」
「あっはい!私が陛下のために早起きして作ったサンドイッチです。どうぞ召し上がってみてください。陛下あ~ん♡」
(早く食べて!そのきれいな口で吸い込んじゃって!)
ビクッとするイザナはチラッとジンジャーを見ながらも食べた。
「うわっ、この味か」
「どうですか?」
「本当に何をさせても独特な結果を産むんだな・・・わざと生姜を入れたんじゃないだろうな?生姜味のサンドイッチなんてはじめてだ」
「・・・初体験のご感想ありがとうございます」
「なんだか噛めば噛むほど辛くなる・・・飲み物ある?」
(ついにこのときが!)
「はい、ここに・・・」
あったのに?ない!
バスケットの中に入っていたワインをイザナがいつの間にか飲んでいた。
「どうした?」
「・・・いえどんどんお飲みください」
(わぁ・・・大変だ・・・でもまあ・・・どうにかなるよね?)
ピタッとイザナは飲むのを止め尋ねる。
「・・・・・・生姜令嬢・・・まさかこのジュースに何か入れたんじゃないだろうな?」
ギクッ
「い・・・入れるわけ!陛下のお飲み物に余計なものを入れたりしませんよ!!」
目が泳ぎまくりのジンジャーだった。
(ジュースじゃないのに・・・あんなキツいのを一気飲みして大丈夫なの・・・?)
「・・・えっ!?まさかこれ・・・!」
「はい?えっ・・・私何か変なこと言いました?」
「はぁ・・・油断も隙もない」
「それ・・・どういう意味ですか陛下?」
「フゥ・・・なんだか暑くなってきた。サンドイッチは辛いし顔がほてる」
「か・・・辛ければジュースをもう一杯・・・あ・・・いや・・・もうやめといた方がいいかも・・・?」
「・・・それを飲めばもっと暑くなりそうだ。なんだか酒を飲んだときのように体が熱い・・・」
(どうしよう・・・お酒に弱いのかも。そういえば小説にもお酒はあんまり飲めないって書いてたような・・・それならここでもう一杯飲ませると・・・)
「はぁ・・・だけど喉が渇く」
結局イザナは飲んでしまった。
「あ・・・待っ・・・て・・・」
(嘘でしょ寝ちゃった。飲んだら寝るタイプなのね。イチャイチャできないじゃん。というか・・・寝顔が子供みたい)
(私の知らない子供の頃のイザナ・・・この塔でひとりぼっちでどれほど寂しかったことだろう過ぎた時間はもうどうすることもできないけど・・・
これからはずっとこうして私の目の前に私の手が届くところにいてくれたらいいな。寂しい思いなんて絶対にさせないから・・・)
その時イザナが突然、手首を掴んで引き寄せる。
「!」
「・・・陛・・・下?」
第42話 感想
酒を飲ますことに成功したジンジャーでしたがイザナは酔うと眠るタイプだったようですね。