第12話 ネタバレ
社交界で「ブレッテンからいらっしゃたのですか?」と聞かれたシュリーは故郷について語った。
「ええ風景がとてもきれいな場所ですよ牧羊の野で一日中駆け回って山脊脊を超えて沈む夕日を眺めながら頬張る乾いたパンは信じられないほど美味しかったです
ここヴィッテルスバッハに比べればずっと田舎ではありますが・・・」
シュリーたちが話していると「ニュルンベル公爵だわ おひとりでいらっしゃるということは今日もハイデ夫人は体調を崩されていらっしゃるようですね」と公爵に気付いた婦人が言う。シュリーは「ニュルンベル公爵に今回の招宴の挨拶をして参りますわ」と席をたった。
婦人たちは「それは良いお考えですわ!私たちはここでお待ちしていますね」と話した。
ニュルンベル公爵に挨拶をしたシュリーは「今日のこの追悼招宴も本来ならば私が準備を行うべきでしたのに」と申し訳なさそうに話すと、ニュルンベル公爵は「急な葬儀だけでも大変だったでしょうから ヨハネスのことですきっと夫人にできる限り多くのものを遺していったでしょうがこのような不慣れなことを全ておひとりで行われるのは無理がありますよ」と言う。うつむくシュリー。
「焦らずに少しずつ学んでいかれてください」
ニュルンベル公爵の言葉を聞き考え込んだシュリーは言う。
「公爵様には聴聞会の時も・・・皇帝陛下と共に私を助けてくださいました」
「あの時も申し上げましたが当たり前のことをしただけですよ私とヨハンは誰よりも情熱を傾けて姉上・・・女王陛下と皇室の存続に力を注いできました
皇帝陛下もそのことをよくご存知なのであのように仰ったのだと思いますよ」
話の途中でニュルンベル公爵が呼ばれたのでシュリーはその場を立ち去った。
(少しずつ学んでいく・・・か・・・)
確かに聴聞会裁判当日の経験は絶望だったと思うシュリー。ヨハンあなたが最後の瞬間まで私と子供たちのことを心配していた理由が分かる気がしますノイヴァンシュタイン侯爵夫人として『たった一人で』家門を率いるのはそれほど難しいということ
でも親切な人たちが多いから・・・!
傍系の人たちは皆追い出してしまったけれど、ヨハンもそうするようにと強く言ってたし・・・
シュリーが戻ると笑い声が聞こえた。「じぶんの口で田舎だと言っていたわよ?」「羊たちが遊び相手だって」「ノイヴァンシュタイン侯爵は一体どういうつもりであんな世間知らずな子供を迎え入れたのかしら」「まさかそこまで耄碌した人間じゃないだろう とにかく長男のジェレミーが他の権門勢家と婚約して立場を固める前まではあの小娘がノイヴァンシュタイン家の権利人・・・」
こんなチャンスを逃すわけにはいかない!誰が先に手に入れるかの戦い
「3ケ月かけるわ!」「・・・2年!」「2年?甘いわねぇ」「ひどいなぁさっきまで一緒に談笑してたじゃないか?」「そういう殿方たちは何か建設的な論議でも?」
「・・・・・・遺言状がでっちあげられたものだという証拠を持つ奴がいたんだけど——」
「もうすでに聴聞会で終わった話でしょう?」
「とにかく!こうなったら俺も混ぜてもらおう!」
「うーん・・・5週!!」「それは短すぎるわよ」「ほっときなさいよ私たちは得するんだから 掛け金ふえるし~」
みんな好き好きに語りシュリーのことで賭け事を始めていた。
「荷物を動かさなきゃいけなかったから奥様が外出されてちょうど良かったわ」とメイドたちが部屋を片付けていると、シュリーが予定よりもずっと早く戻ってきた。
「前に話した通りにやってくれてるのね」
「はい 傷が多い家具は捨てて問題のないものだけを3階の空き部屋へ移します」
「前ノイヴァンシュタイン夫人が亡くなってからもヨハンはずっとこの部屋をそのままにしておいたと聞いて私もそうしたかったのだけれど」
「2年も使われたのですから整理が必要な時期でしょう」
シュリーは以前の記憶を引き出す。
ここは母様の部屋なんだ!お前なんかがいる場所じゃない!と言いエリアスが前ノイヴァンシュタイン夫人の肖像画を抱えシュリーに叫んでいた記憶にうつむくシュリー。
窓から風が入り布で隠れていたその肖像画が目に入った。
「グウェン 前侯爵夫人はどんな方だったの?」
シュリーが尋ねると寡黙で気品のある方でお嬢様と坊ちゃん方には厳しく接しておられましたが侯爵様を心から愛しておられた方でしたとグウェンは語る。
シュリーはグウェンの話を聞いて「分かる気がするわ」と話した。
真っ暗な部屋でシュリーは膝を抱えて座り込み、社交界であったことを思い出す。普通に話をして親切な方だと思っていた人たちの思わぬ言葉
「誰が先に手に入れるかの戦い——」
「あんな世間知らずな子供が——」
その人たちが自分のことで賭け事をしている事実を知ったシュリーは怖いこのまま逃げてしまおうか・・・と考える。冷静さ厳格さそれだけでは不十分だ。前ノイヴァンシュタイン夫人はできるだけ社交界とは関わらないようにしていたと聞いた。でも一人ぼっちの私は・・・そんな風にはできない
(私のままじゃ通用しないのに——
あった通用する方法私が最もよく知っていてもっとも近くで見てきた人)
シュリーは自分を育てた母を思い出す。ずる賢く卑怯だった母を。
「ふふ裏切られたことも知らないのよでもあいつが思ったより馬鹿だったおかげで今日の夕食はごちそうにありつけそうね」
「何よシュリー私がずる賢くて卑怯だとでも言いたいの?よく見ておきなさいこれは全て生き抜くための術なのよ」
公爵様が仰ったように少しずつ学んでいけたら、どれほど良かったでしょうか?そうすることができたなら本当に良かったのに
第12話 感想
第12話のストーリーは過去に戻る前の話なのか気になりますね。現在で無理に変わろうとするとせっかく子供たちとの関係が少し修復できたのにまた溝ができそうです・・・